第82話 男子会②
「言いたくないんだけど陽輝も言ったし、まぁ言うけどさ……まじで進展なんかないから。気軽に触ることすら出来てないです。はい」
「「……………え?」」
山崎の口から出た情報に一瞬フリーズした二名。陽輝は何となく予想はついていたようだったが、それでも少し驚いていた。
「まぁ菊池さんの性格的に進展なんかそんなにしてないとは思ってたが……まさか触れてすらいないとは。デートとかは行ってるんだよな?」
「まぁ何回かは行ったよ。ベタなところに二人で行ったけれどさ、なんも起きねぇよ。本当にこの前初めて手を繋いだだけだわ!」
「いや可愛いよ?そりゃあのスタイルで笑顔でいれば誰だって思うことだろう。けれどさ、ずっとそばに居る俺の気持ちわかるか?まさか手を繋いだだけで顔を真っ赤にきて、『直樹君の手、大っきくてあったかいね……』って言われてさ、ズッキュンって来たけどまじかとも思ったさ!まさかここまで純情とはと思ったわ!」
惚気話が入りつつも文句を言う山崎。それに男子三名は共感を得ていた。
健全な男子高校生ならある程度のスキンシップをしたいと思って当然のこと。岡本はともかく、陽輝と悠真に至っては結構スキンシップを取るようにはしている。それを相手側も望んでいるからだ。
しかし山崎は違う。さりげなく手を繋いだだけで相手は顔を真っ赤にして、照れ臭そうにしているからこれ以上のことはできない、まだしてはいけないと察してしまう。その結果もどかしさが残ってしまうのだ。
だから三人は憐れんだ目で山崎を見ていた。
「お前らそんな目で俺を見るな!俺はちゃんと我慢してんだよ!というかお前らが進展しすぎなんだろ?!」
「いや、俺は向こうからだし……」
「僕もどちらかと言えば相手からだね……」
「……は?」
山崎は絶句した。聞かれたから答えたけど何か?と言いたそうな顔をしている二人を見ながら、意識はどこかへ行ったかのように放心した。
そして何処かへ行ったはずの意識を取り戻し、全力で叫んだ。
「羨ましいんだよてめぇらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
◇
その後、山崎は怒りをぶつけるためか、再び大◯闘をやるぞ!と言い、怒りによる補正で悠真と陽輝を倒し(岡本はとにかく逃げていた)最後に自爆して行った岡本を見ながら一位を取るたびに煽り散らかした。ただ流石に煽り散らかせることが多すぎたので、陽輝は翠経由で今日の山崎の発言を菊池さんに流すように伝え、そのことを山崎に言ったら
「……終わった。こんなん嫌われるだろ……もう帰るわ……」
と言い残して先に帰ってしまった。三人になってからは岡本の話が中心となり、好きなタイプから気になる子、とりあえずなんでも聞き岡本も
「そろそろ帰らないといけないから帰るわ、今日は楽しかった!また呼んでくれ!」
と帰って行った。
「二人なったけどどうする?何かする?」
「じゃあ軽くパスしようぜ。ボールは触っておきたい」
二人になったので陽輝達は完全に暗くなるまでボールを使ってパスなどをして、お泊まりに行っていた陽奈が帰ってきたところで悠真も帰って行った。
「ただいま……ねぇ、お兄ちゃん。なんか臭い。男臭が半端ない」
「あー遊んでたからだな……すまん。すぐに消臭をしておく。それより夕飯は?」
「食べてないから作って?」
「冷蔵庫になんかあったらな……見といてくれ。で、なんもなかったら今日はデリバリーでもなんでもいいから頼もうぜ」
「はーい」
陽輝は片付けをし、陽奈は冷蔵庫を物色。夜ご飯を作れるほどの材料はないと判断し、注文を勝手にする。
「お兄ちゃん、冷蔵庫何もなかったから寿司頼んだけど良いよね?」
「あぁ、いいぞ。もうすぐお風呂の用意できるから入ってこいー」
「はーい」
夜はゆっくり過ごした陽輝だった。
……余談だが、山崎は後日積極的になった菊池さんに狼狽えることになる。そしてそれを知った陽輝達はからかい、また山崎が怒ってゲーム祭りとなるのだが……これは別の機会に。
読んでいただきありがとうございます。
進展具合って人それぞれですからね……
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