第46話 体育祭②


「お疲れさまー!二人とも一位おめでと!」


 案の定余裕で一位を取れた俺たちは、二組の集まる場所へ戻り、クラスメイト達から褒められた。


「二人ともお疲れ様!さぁ、次の競技の一人も一位とってきてね!」


「「任せとけ!((てね!))」」


 そして入れ替わるようにして次の次の競技の生徒達が向かっていく。ちなみに今は女子の100メートル走をやっており、実行委員ともう一人が参加している。


「なんか……あっけなかったよね?」


「そうだな。思ったより遅かったよな」


 俺たちのレーンは共に陸上部が混ざっていたはずなのだが、そこまで早くなかった。普段追いかけてくるクラスメイトの方が早いと感じるぐらいには。


「たぶんね……普段追いかけてるあの子達が早いから、自然と早くなってたんじゃないの?」


「そしたらこの後のリレーとか余裕で勝てるぞ?あいつら異常だからな」


「あはは……あ!紗奈ちゃん一位とったよ!」


「誰?俺知らないんだけど」


「実行委員の……確か花川さんだっけ?」


「そうだよ!なんで陽輝は他人に興味がないのかなぁ……」


 そう言われてもな……必要最低限の友達と大事な彼女がいればあとはいらないと思うんだが……。


「てか、翠さんや、貴方の出番はまだですかね?」


 悠真はあと二つぐらいしか競技はないが、翠は俺と同じくらいの種目数があったはずだ。もうそろそろ一つ目があってもおかしくないのだが……。


「最初の競技は陽輝と同じ中距離走だよ?で、そのあと休みで、また出て、休んで……って感じだから今やってる競技が終わったら行く感じかな?」


「そうか……何位を取ってくるつもりですかね?」


「もちろん一位!……なんで口調が変なの?」


「気分だ」


 たまにはふざけたって良いだろうに……。それより、女子の100メートル走が終わって二人が帰ってきたみたいだった。


「あの二人も一位を取ってきたらしいよ。二人とも楽しそうにお話ししてたから気づかなかっただろうけどね」


 そう言われて顔を赤くする翠。え?俺はってか?俺はちゃんと放送を聞いていたからな。僅差で一位を取ってきたことぐらいわかっている。


「俺は気付いていたからな?……じゃ、中距離の招集かかったから行ってくるわ。いくぞ、翠」


「あっ、ちょっと待ってよ!」


 今更靴紐を結んでいた翠に声をかけて、置いていく。ちゃんと時間は守らないとな。



 ………このあと、走って追いついてきた翠に手を繋がれ、他クラスの生徒たちに睨まれながら招集場所へ向かった。やっぱ殺意のこもった視線は怖いな。









「女子1500メートル、一位は二組の谷口さん!二位と圧倒的な差をつけつつゴール!」


「「「おぉーーーーー!」」」


 ふぅ……やっぱ疲れるなぁ。もうちょっと力を抜いて走れたような気もするな。みんなの応援も凄かったな!


 最初の競技だったから無駄に緊張しちゃったな……でも一位だから大丈夫か!それより……次は陽輝の番だ。


 1500メートル走は各学年一人が選抜されて行う競技である。うちのクラスはうちと陽輝が選出されて、先に女子から行われている。うちが走ったのが女子最後のグループで、体育祭新記録は出なかったけれど無事一位は取れた。


 次は男子のグループで、陽輝が出る。次こそはちゃんと応援しないとね!



 ……と思っていたのにみんなのところへ戻って応援しようと思ったら、もう他の競技の準備をしないといけないと言われ、また応援できずに準備をすることとなった……。


 たくさん競技に出れるのは楽しいけれど、少しは応援させて欲しいな!と強く思った。








「男子1500メートル、第一グループが今始まりました!」


 今俺の参加するグループが始まり、出だしは好調だった。俺が走る前に翠が走っていて、綺麗なフォームと他を許さない圧倒的な速さの走りを見て、負けたくないと不意にも思ってしまった。


「陽輝ー!頑張ってー!」


「紅島くん!彼女が一位なんだから一位とりなさいよ!」


「一位取らなかったらぼこすぞ!」


 先頭グループに混ざって他の選手の様子を伺いながら走っていたらクラスメイトからの応援が聞こえてくる。一部物騒な応援も聞こえたが、つい本気を出してしまう。


「おっと?!今先頭グループから一人頭ひとつ……いや、三つ分ぐらい早いぞ?!」


 飛ばしているわけでもなく、本来のペースで走る。

 出来れば最終場面で接戦を繰り広げ、よくがんばった!と言われながら勝ちたかったが、クラスメイトからの圧と、可愛い彼女からの応援があるから全力を出す。


 もちろん俺が全力で走れば、後ろには誰もいない。


 ゴールする寸前、余裕があったので翠の方を見て笑う。そしてカッコつけてゴールする。



「一位は圧倒的速さで二組の紅島くん!後続選手が誰もいないという異例のゴールです!」


「彼はこれでバレーボール部ですからね……陸上部より多分早かったんじゃないんでしょうか」


「タイムは……四分五秒?!」


 タイムの発表と同時に全体がざわめく。俺としては少しタイムが落ちていることに納得がいかなかったが、一位を取るという目的は達成したので気にせずに戻る。


「お疲れ様ー!早かったね!」


「ナイスラン!マジ早かったな!」


みんなのところへ戻るとまだ少しざわついていた。


「おう、これくらいは当然だろ。それより、次の競技、一位持ってこいよ」


「「任せとけや!蹴散らしてくるからな!」」


 まだまだ体育祭は盛り上がりそうだ。












読んでいただきありがとうございます

誤字脱字ありましたら連絡を。


陽輝くんは、陸上の大会とか出ても余裕で全国レベルです。

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