第45話 体育祭①


 ついに体育祭当日がやってきた。開会式も終わり、ここまで地獄のような練習をしてきた成果が出せると良いが……。


「さぁ、優勝するぞ!準備はいいかぁーーー!」


「「「おーーー!」」」


「この学校初の一年生優勝狙うぞーーー!」


「「「おぉーーーー!!!」」」


「豪華景品……掻っ攫うぞ!」


「「「おーーーーーーー!!!」」」


 体育祭実行委員の呼び声に反応するクラスメイト。男子も女子もやる気に満ち溢れている。他のクラスより盛り上がっている。まだ体育祭の競技は何一つ始まっていないのだが。


 ……クラスの雰囲気は物凄くいいが、空回りしないだろうな……。まぁどこのクラスよりも熱心に取り組んできたし、大丈夫だと信じたい。噂では夜練までしていたらしいし。


「陽輝!悠真!今日は頑張ろうね!」


 悠真と準備運動をしていた俺に声をかけてきたのは彼女の翠だ。ついこの前から悠真を下の名前で呼ぶようにしたらしい。その方が昔らしいからだとか。


 今の翠は少し伸びた髪を結んで短めのポニーテールにしている。チラチラと見える首がやけにエロく感じた。あまり見ないようにしよう……。


「うん、がんばろうね。ここまでやったら優勝目指そっか」


「あれだけ練習させられたら狙うしかないだろ……てかありだったんだな。一人が複数の競技に出ることが」


 中学の時は、一人二つまでの競技にしか出られないのでよく考えてください!的なことがあったのだが、高校では一人1種目でもいいからでなさい。あとは好きにしていい、という方針なので運動能力が高い人を数多くの競技に出すことも可能である。ただし、いくつかの競技は時間が被っていたり、競技の間の時間が短かったりするので多く出るほど疲労とかが溜まるのであまりお勧めはされていなかったが、俺らのクラスはガンガン出させている。主な被害者は俺とか、翠とか……。


「ハイレベルの競技を見る方がみんなも楽しめるし、元々はスポーツ校だったからね、ここ。だからっていうのもあると思うよ?」


「グラウンドも広いし、同時進行の競技もあるしね。まぁとにかく楽しもうよ!」


「やれることはやったし、あとは楽しむか……っと、召集がかかったみたいだから行ってくるわ。行こうぜ、悠真」


「そうだね、じゃ、行ってくるね」


 アナウンスがかかったので集合場所に向かおうとした俺の手を翠が掴んで、耳元で一言。


「カッコいいところ、期待してるからね!」


 そう言って背中を軽く叩いて、「いってこーい!」と言った。


「おう、任せとけ。見逃すなよ?」


 少しかっこつけて言い、今度こそ競技場所へ向かった。途中で悠真に佐藤さんが何か言っていたが、きっと俺も同じようなことだろう。クラスが違うからみんなの前ではあんまり言えないだけであって、彼女の立場からしたら彼氏を応援したくなるのは当然なのだから。



 こうして、俺の体育祭は始まった。


















「一着!二組!続いて四組、六組とゴール!」


 体育祭最初の種目の100メートル走が始まった。各クラス二名が参加していて、うちのクラスからは陽輝と悠真が参加している。


 ……あの二人、基本的にクラスで一、二番を争う運動神経の持ち主だからなぁ。他の子も優秀だけど、ずば抜けてるんだよね。


 先に走ると言っていたのは悠真の方だと、陽輝から聞いているので今一位を取ったのは悠真だろう。


 悠真の方が早いと、陽輝は言っていたが、この二人はごく僅かな差しかなかった。


「二組の生徒が頭一つ早かったですね」


「さっきのレーンには陸上部の生徒が多かった中で一位は凄いです!」


 体育祭の実況を担当している先生たちからの放送が流れ、次第に陽輝の番がやってきた。



「このレーンには陸上部のエースと呼ばれる小林君がいますから、一位はきっと小林君がとるんじゃないでしょうか……女の子にキャーキャー言われてますね笑」


「まぁ実際彼は県大会上位常連者ですからね……女子からの人気も高いそうです。他の選手も頑張って欲しいですね。そろそろ始まります!」




 陽輝、頑張れ!と心の中で応援し、合図とともに銃声が鳴り響き、一斉にスタートした。遠目でしか確認できないけれど、スタートと同時に二人がぽっと前に出ているのは確認できた。


 そしてそのまま同時に行くかと思ったけれど、後半に一人加速してそのまま一位でゴールした。陽輝は、勝ったのかな?


「一位は……なんとニ組の紅島くん!二位に小林君と続きました!」


「「「よっしゃぁーーーー!」」」


「おぉ……まじか」


「えーー!小林君負けたの?!」


 その放送を聞いてクラスメイト達が叫び、所々から驚嘆の声が上がる。もちろんうちも混ざって叫んだ。最初の競技で二人が一位を取れたことの喜びもあるし、キャーキャー言われてた小林君?って子に勝った陽輝が凄いっていうのもある。


 陽輝は目立ちたくないと言っていたけれど、うちはもっと目立って欲しいと思っている。目立てば自慢できるからだ。うちの自慢の彼氏なんだぞー!って。


 さてと、一位を取ってきた二人をお祝いしないとね!




















 読んでいただきありがとうございます。

 まずは二人が荒らします笑

 こっから他の生徒も荒していきます。

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