第44話 体育祭準備
予選が終わり、今日からまた変わらない日常が始まる……とはいかず、六月の頭に行われる体育祭への話し合いが今行われていた。
あと一週間ほどで体育祭が行われるのだが、俺が通う高校は三日前から体育祭の準備で授業は潰れ、ひたすら練習する時間が設けられる。
そのため、体育祭のクオリティは高く大いに盛り上がり、地域の人たちもよく見にくる名物となっている。この学校の魅力の一つとも言える。
その体育祭に向けて、今日の六時間目は話し合い……ということになっていたのだが、気がつけば勝手に決められていた。いや俺がちょっと寝てる間なんだけどさ。
「じゃあ、こんな感じでいいかな?競技の変更とか何か変えたいっていう人いたら言ってー?」
「わたしその競技苦手だから変えて欲しい」「俺にあの競技やらして欲しい!」「勝ちに行くんだよな?なら俺にあれやらせろ」「わたしその競技多分得意だと思うからやらして?」などなど……
目が覚めた頃には、話し合いが終わる寸前だった。ぱっと黒板に書かれているのを見た限り、俺が出る種目は四つか五つある。団体含めてならまだわかるが、個人に選抜だけで四つあるのを確認できた。明らかにおかしい。もちろん団体の方にも名前が記載されていたのはいうまでもない。
「なぁ、俺が出る競技が多いんだが———『『『寝てたやつは大人しく参加しろ』』』すみませんでした」
なんか女子からの圧が凄いんだが……。
と、隣に座る翠を見るとげっそりしていた。
「翠、どうかしたか?」
「……体育祭で優勝すると豪華景品があるんだって。それでやるからには優勝するぞ!って言うから協力するね?って言ったら……」
黒板を指差しながら言うので、目で追うと
「あぁ……似たようなもんだな。俺と」
「いくらなんでもね……」
様々な競技に名前が書かれていた。翠は優しいので断れなかったのだろう。ただそれにしては多すぎる気もするが……
「でも豪華景品も気になるじゃん?だから断らなかったんだよね。陽輝もたくさん出るみたいだったし」
「俺は出たくねぇんだけどな……」
「まぁ頑張ろうよ!このクラスなら優勝狙えるって!」
「確かにな……男子はハイスペックだし、女子のやる気はやばいし」
先程話し合いが終わりそうな雰囲気になったのに関わらず、またクラス内はざわつき始めた。ちょっと集中して聞いてみると、男子の出場種目を変えた方がいい!た誰かが言って、一人一人の運動神経を聞いて女子たちが割り振りを考えているらしい。
で、その割り振りが女子の中で意見の相違が発生してまた話し合いが開始され……といった感じだ。
「翠はなんでそんなにやる気に満ち溢れてんだ?」
純粋に疑問だったので聞いてみる。
「もともと学校行事はうち、好きな方だからね。それに……陽輝と最初で最後の同じクラスでの体育祭になっちゃうかもしれないでしょ?だから精一杯やって良い思い出に!って……」
「そうか……なら俺も力を入れるか。可愛い彼女さんのために」
「……!ありがとね!」
ちょっとだけ体育祭に、力を入れようと決意した。
……だったんだが、いざ練習をやる日になると、後悔した。
「紅島くん!その練習終わったら次こっちきて!」
と、何かの練習が終わるたびに呼ばれて、休む暇を貰えなかった。「ちょっと待ってくれ、少し休憩を———『まだ余裕残ってるの知ってるんだからね!早くして!』……わかったから引っ張るな!」と、こんな感じで練習する時は休みなし。部活をやっている時の方が楽だと、正直思った。
そして、体育祭には部活対抗リレーもあるので、部活内から選抜して4人選ばれるのだが……そのメンバーにも選ばれた。というか、選ばれたメンバーは全て一年。二、三年は長距離に強い人が多い分短距離がそんなに早くない……とのことだった。
もちろんその練習もあったが、こちらはスムーズに行われた。メンバーが俺、悠真、吉野、服部で、適度に休憩しつつバトンパスの練習を行えたからだ。部活動の時間の最初三十分は俺らだけバトンパスの練習を外でしてるのはなんとも言えない気持ちだったが。
そんなこんなで、体育祭の日がやってきた。
翠のために、本気をだすか。
読んだいただきありがとうございます。
何かありましたら報告お願いします。
ちなみに……陽輝も翠も悠真も足は速いですが、佐藤さんはそんなに……って感じです。
次回、陽輝のクラスが無双します笑
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