第43話 予選


 テストから約一週間が経ち、今日は基本的には三年生にとって最後となるインターハイの地区予選会だ。対戦相手は事前に判明しており、今のところスタメンを出さなくても勝てそうな相手だったが、油断は禁物だ。そのため、スタメンもしっかりアップをしつつ、Bチームを中心として試合に臨んでいた。




「……なぁ悠真。暇じゃね?」


「試合に出ないとこんなに暇なんだね」


 試合は順調に進んでいき、気づけば準決勝。危ない場面も訪れることなく、俺たちは


「あいつら、いつもこんな思いしてたのかって考えると、ちょっと罪悪感があるよな」


「……でも、スタメンに選ばれない以上文句は言えないからね。僕たちはみんなの分まで背負って戦っていくんだよ」


「まぁ今は俺らは上で応援だけどな」


 本来なら俺たちはレギュラーなので試合に出ているはずなのだが、地区大会ということでBチームを現在出している。だが、Bチームが危なくなった時の控えとしてベンチには居させると最初は聞いていたのだが、監督が俺たちだけ上で応援して欲しいと言ってきたのだ。


「まぁ……一応隠しておきたいんだってさ。噂によると他地区の選手が情報収集に来てたりするからだって」


「確かにな。有名どころのチームの選手がいたりするな」


 これは結構あることである。地区大会は土日で行われていて、日曜日まで残っているチームで、地区の一位や二位を取るチームを警戒し、対策を練るために動画を撮っていたりするチームもある。


 昨日は見かけなかった生徒がいたりするので、今日はあまり情報を知られないためにも俺たちは応援している。意外とベンチメンバーまで調べ上げられたりすることがあるので、それを避けるためでもある。


「このまま準決勝も勝てそうだな。ただ、決勝は微妙……ってところか?」


「そうだね……僕の予想だと佐々木先輩と吉野くんあたりが、でてギリギリ勝てる……って感じかな?」


「結構味方の評価が高くないか?言うのもあれだけど、ミドルだけで勝てるのか?」


 今言った二人はレギュラーだ。俺らとは違いベンチで待機している。佐々木先輩は二年生でミドルブロッカーであり、吉野は前と同じでミドル。つまり、サイドプレイヤーは一人も入れないで勝てると悠真は言ったのだ。


「多分だけど勝てるはずだよ?ブロックが揃えば拾えるはずだし、ちょこっと隣の試合見たけど、両チーム素直に打つ選手が多すぎるから」


 隣のコートでは反対ブロックの準決勝が行われており、こちらのコートとは違いかなり接戦になっている。こちらのコートはもう二セット目に入っているのだが、まだ隣のコートは一セット目の中盤であった。


「そういうことに加えて、接戦による情報の漏洩、スタミナ切れって感じか?」


「まぁ僕の考えはそうだね。……僕たちみたいな隠し球がなければ、の話だけど」


「それはねぇよ……応援しようぜ。普段のお礼も入れて」


「そうだね」





 ◇ ◇ ◇



「「「ありがとうございました!!!」」」


「よっしゃぁ!地区大会一位だぞ!」


「俺たちだけで勝てるもんだな!」


「「「うぇーーーーーい!!」」」


 たった今決勝戦が終わった。準決勝はあのあとすんなり勝ったが、決勝戦はかなり苦戦していた。


 しかし、悠真の予想も外れ、Bチームだけで決勝に挑み無事にストレートで勝利した。二セット目は三十対三十二の接戦だったが。


「レギュラーが出る幕もなかったな」


「思ったより相手の疲労が激しかったぽい。まぁいいんじゃない?レギュラーが一人も出ないで一位突破はかなり有利だよ」


「そうだな……決勝戦はかなり動画撮られてたからな」


 ぱっと見だが、決勝戦の動画を撮っていたのは俺たちと相手チーム、それに加えて他地区の選手が三.四人いた。俺たちを警戒しているチームだろう。


 ただ今回撮った動画は全て無駄になるのだが。


「とりあえず荷物まとめよっか。いかにも控えです!って感じで」


「それいいな。面白そうだ」


 この後、雑用の仕事をせっせとやったら監督に笑われ、上級生には引かれ、同級生には変わる変わる!とせがまれた。今日ぐらい仕事させてくれても良いのでは?と思った。














 読んでいただきありがとうございます。

 雑用は下級生一同ってイメージが強いので……笑

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