第40話 質問責め
「悪い、待たせた」
「ごめんねー!」
本来の集合時間から遅れること十分。もう少し遅れるかと思っていたが急いだおかげで遅れたことに変わりはないが、早く着いた。
俺たちの様子を見てニコニコとしている二人。……なんかおかしいのか?
「よかったですね、翠ちゃん!」
「谷口さんは凄いね。おめでとう」
「えへへー、ありがと?なのかな?まぁ見て分かるよね!」
見てって……あぁ、そういうことか。
「見てわかる通りだけどちゃんと伝えとくわ。翠と付き合い始めた」
「陽輝、頑張ってね(笑)、それとどんな気持ち?」
学校に着いたらどうなるか予想がついているので苦笑いを返しつつ、答える。
「どんな……って言われてもな、まだ実感はないけど愛想つかれないように頑張るつもりだな」
「「「そーゆうことじゃないん(だよ、ですよ、だから……)」」」
何が違うのかさっぱりわからない。どんな気持ちって言われたから答えただけだろ?やれやれって顔して言われても知らねぇよ。
◇ ◇ ◇
「「「陽輝くぅーん?僕たちと遊んでよぉー?」」」
教室に入れば待ち構えているクラスメイト。釘バットにスタンガン、シャーペンを構えているやつもいる。
もちろん分かっていたことだ。クラス人気一番(非公式)の翠と付き合いはじめた、なんて噂が流れればこうなるし、ましてや噂でないのだから。
登校してる時からチラチラとこちらを見てくる生徒も大勢いたし、何人かは連絡とってるような感じだったから情報は伝わっててもおかしくはないのだ。
ただ……
「流石にそれは死ぬからやめないか?せめてシャーペンまでに……」
「「「お前は殺すって決めたんだよ!!!」」」
襲いかかってくるクラスメイト。流石にあの武装は予想までは出来なかった。というかマジであれは死ぬだろ。
教師たちが来るまで何とか逃げ切ろうと廊下に出たのだが、他クラスからの襲撃者も現れた。
「死ね死ね死ね死ねぇーーー!」
「僕のものになるはずだったのに……僕のものだったんだぞぉーーー!!」
「ファンクラブの会員として、粛清してやる!」
叫び声がどんどん増えていく。おい、僕のものとか言ったやつ、どんな根拠があってお前のものになるのか知らねぇけど、後で……な?
そんなことを考えつつ、飛んでくるシャーペンなどを避けつつ今日も朝の時間は過ごした。
追記だが、今回は何故か俺も反省文を書かされた。本当に意味がわからない。ただ僕のものって言ったやつを問い詰めてボコボコにして晒しただけなのにな。
襲いかかってきたクラスメイトから逃げていく陽輝。学校に着いた時に、手を繋ぐのはやめた。
「翠に危険が及ばないようにするためだ」とか言われて、最初は意味がわからなかったけど、今ならわかる。うちのクラスメイトって馬鹿が多いな……。
陽輝と一緒にクラスの男子はほぼいなくなり、いるのは黒木君だけになった。一人黙々と勉強を始めていた。
その光景を見てうちは焦った。テスト期間中だと言うことを。付き合えたことが嬉しすぎてすっかり忘れていたが、今週の木曜からテストがある。
昨日勉強会を開いてもらったおかげでそれなりにはできるようになった教科はあるけれど、出来ない教科もある。
今日もお願いできるか聞いてみよう。
「黒木くん、今日も勉強見てくれないかな?」
「うん?あぁ……分かったよ。帰ったらすぐでいいかな?場所は……次は僕達の家でいいかな?小珀には了承とっておくから」
「ありがとね!陽輝にも聞いてくる!」
「今はやめておいたらいいよ?谷口さんが今行くと、もっと荒れるからね」
「あはは……」
苦笑いしか出てこない。早く確認したいのに……。
「まぁ一時間目か、二時間目には戻ってくると思うから教室で待ってるといいと思うよ。まぁ……谷口さんの方も色々聞かれたりするんじゃないかな?」
「そんなことないと思うけどな……」
「とりあえず、本当におめでとう。あと、ありがとう」
「うん!」
とりあえず黒木くんのほうは大丈夫そうだから、陽輝が来るまで勉強でもしようと思っていたけれど、始めてちょっとしたら
「ねぇねぇ谷口さん!紅島くんと付き合ったんだって?!」
「私朝みたよ!二人が手を繋いでいるところ!」
「噂って本当なの?!」
と、クラスメイトや、他クラスの人からも質問して責めにあい、勉強は全く出来なかった。
中には陽輝のことを狙っていた人もいて、付き合えたことが本当に良かったと実感した。
ちなみにだけど、陽輝が戻ってきたのは三時間目の途中で、その他クラスメイトはお昼休みだった。
妙にやつれてた顔してたけど……大丈夫かな?
読んでいただきありがとうございます。
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