第22話 翠とデート③

 お昼を食べ終えて、翠が最初に向かった場所はアクセサリーなどが売ってるお店だった。


 店内を覗いて見ると女子が多く、所々にカップルがいたので、翠と一緒に入るのはあんまりよくない考えた俺は外で待っていようと思った。


「なぁ翠、俺外で待ってるから見てこいよ」


 手を離して送り出そうとするが、離せない。左手はがっちりと掴まれていた。


「何言ってんの?一緒に見るの!」


「いや、女子多いし———」


「今更気にするの?服を見てる時は気にしてなかったのに、それとも、カップルが目立つから、そう見られたくなかったってこと?」


 にやにやしながら聞いてくる翠。


「いや、俺はお前が俺と、カップルっていう風に見られたら嫌だろうと思って言っただけでな……」


「じゃあ、うちは平気だから一緒に見ようよ、いいよね!」


 先程とは全く違う表情で店の中へ向かう翠。もちろん手は繋がれているままなので俺も一緒に入っていく。


 店内へ入ると、女子御用達の店っぽさがあった。男子物も少ないがあるが、やはりメインは女子物のアクセサリーが多かった。


 何やら視線を感じた。視線を感じた方を見たら、同じくらいの年の男子と目があった。その目は、疲れているようにも思えた。


 心の中で、「頑張れよ」とエールを送り翠と一緒にアクセサリーを見る。


 ◇ ◇ ◇



「これなんか綺麗じゃない?」


 翠が持ってきたのは、ガラスで作られた花のストラップだった。緑色で透き通っていて、綺麗だと思った。


「あぁ、綺麗だな。それ、欲しいのか?」


「うーん……迷ってるかな。あっちにもいいのがあってね……」


「そうか、どういうやつなんだ?」


「えっとね、こっちにあるんだけど……これ!」


 先程のストラップと違って今翠が手に持っているのはパンダが付いているキーホルダーだった。まぁ可愛らしいと思う。


「どっちも買えばいいんじゃないのか?」


「お金の無駄遣いはできないから、どっちか一つにしたいんだよね。陽輝はどっちの方が良かったと思う?」


 この質問あんまり好きじゃないんだが……まぁ、答えるしかない。


「俺は、実用性を考えるならキーホルダーの方がいいと思った。ただ、個人的には花のストラップの方が綺麗でいいと思った」


「実用性はあんまり求めてないから、ストラップの方買ってくるね!……あのさ、お願いがあるんだけど、いい?」


 少し赤くなりながら上目遣いで俺を見てくる翠。赤く染まった頬に上目遣いは可愛すぎる。


「お、おう。なんだ?」


「あのさ、うちは緑の花のストラップを買うから、お揃いってわけじゃないけど色違いのストラップを渡したいんだけど……いい?」


 今、翠が言っていることの意味はなんとなく理解した。ただ、それをしたい理由がわからない。


「別にいいが……なぜだ?」


「せっかくデートに来てるんだから、早めにプレゼントでも渡そうかなって。うちが誘ったのもあるしね!」


 ———そういうことか。一種のお礼か。なら、俺も翠にプレゼントをするべきだろう。


「そうか。ならありがたく貰うよ。その代わり、その今手に持ってるストラップは俺が買って渡すよ」


「いや、別にいい———」


「せっかくのデートなんだろ?ならお互いにプレゼントし合うっていうのでもいいんじゃないのか?」


 少しだけ口角を上げて言う。貰いっぱなしなのは気が引けるからな。


「うん……そうだね!じゃあありがたく貰うよ!」


「じゃあ買ってくるから、それを渡してくれ。……俺が使っても良さげな色のストラップ頼んだぞ?」


「似合うやつしっかり選んでくる!」


 俺は翠からストラップを受け取りレジへ並び、翠は同じタイプのストラップを選びに行った。

 少しだけだが、翠が選んでくれるストラップが楽しみだった。



 ◇ ◇ ◇


「待たせてごめんね!選ぶのに時間かかっちゃって」


「気にすんな。それより、次はどこに行くんだ?」


 俺が会計を済ませてから十分弱経った頃に翠も会計を済ませて店を出てきた。どんなストラップを買ってくれたのか気になるが、聞くのは良くないだろう。渡された時までのお楽しみだ。


「次はゲームセンターで一緒に遊ぼう!二階にあるから、あっちにエレベーターがあるっぽいから早速行こうー!」



 ◇ ◇ ◇


「意外と広いな……」


「でしょ?調べた時に楽しそうだなーって思ったんだ!」


 歩いて五分ぐらいのところにあったゲームセンターは想像してたのより広かった。小さい子供たちが遊ぶ広場もあれば、アーケードゲームもあり、クレーンゲームも多かった。


「早速あれやろうよ!あれあれ!」


 翠が指を指す先にはホッケーの台があった。そして、そのホッケーの台で遊んでいたのは山崎っぽい人と菊池さんっぽい人だった。


「なぁ、翠。今遊んでる二人って、山崎と菊池さんじゃねぇか?」


「そんな偶然あるわけないよ……え?ほんとだ!あの様子見ると、上手くいってそうだよね!」


「二人とも楽しそうだしな」


 視線の先で二人が楽しそうにホッケーを行なっているのを見て、ちょっと安心した。


 遊び終えた二人は、こちらに気づくことなく自然に手を繋いで写真機の方へ歩いていった。……恋人繋ぎで。


「ねぇねぇ陽輝今のみた?!恋人繋ぎだよ!あの二人出来たのかな?!」


「もともとお試し期間だったんだから上手くいったんだろ。……学校始まったらクラスのやつが騒ぐだろうな」


「まぁうちらのクラスちょっとおかしいしね……それより、空いたから遊ぼっか!勝負でもしようよ?」


 翠もわかっていたのか……俺らのクラスだけ異常な事を。


「いいぞ?何か賭けるか?」


「負けた方は買った方の言うことなんでも一つ聞くっていうのは?」


 こういう勝負のときの罰ゲームとしては定番だな。まぁ悪くない。


「乗った。まぁ俺が勝つだろうから何かお願いすることでも考えておくわ」


「うちに負けて悔しがらないでね?後、絶対に聞いてね?」


 負けられない戦いがここにある。

















 読んで頂きありがとうございます。

 最近執筆速度が落ち、学校が始まったことで時間もあんまり取れずもしかしたら明日以降毎日投稿が難しくなるかもしれません。

 土日は必ず投稿します!

 後、もうちょっとだけデート回はあります!(今まで翠とあんまり関わってなかった分ここで……)


 誤字脱字等何かありましたら、報告していただけると幸いです。

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