第16話 頭を下げないでくれ


 待ちに待った部活は、アップから始まりパス、基礎練の流れで進んでいった。

 パスの相手は誰でもいいとのことだったので、すぐに悠真を捕まえて念入りにパスをした。


 俺の方は筋トレは毎日欠かさず行っていたがボールは触っておらず、以前に比べて精度がかけていた。しかし悠真の方はパスの質、精度が以前よりも上がっているようにも思えた。


「なぁ、お前さ、もしかして引退してから毎日ボール触ってた?前より上手いんだが」


 パスをしながらでも充分に話せるので聞いてみる。


「週六で、最低でも三十分はね。受験勉強の息抜きに直上パスやってたから下手ではないと思うんだけど、大丈夫だよね?」


「お前、以前より精度が上がってる気がするぞ。ボールの質も上がってると思う。これで下手だったら世の中みんな下手になるだろ」


「陽輝にそう言って貰えるなら安心するよ。それより、陽輝も全然下手じゃないよね。練習してた?」


「いや、俺はボールに触るのは引退してからは初めてだ。筋トレは欠かさずやっていたけどな」


「久しぶりでこのレベルかぁ……陽輝には敵わなそうだね」


「そんなことねぇよ、悠真にはトスの精度に質。それにトス回しは絶対敵わねぇよ」


 何気ないパスをしながら話すのは、楽しい。ただ、だんだん身体があったまるのと同時にヒートアップしていって、


「とってみろやぁ!」


「上等だね!」


 と全力に近い対人パスをいつの間にかしていた。悠真相手にしかできないが、悠真だけは普通についてくる。


 強打を拾われ、相手の打ちやすいトスを上げ今度は自分が強打を拾う。

 たまに正面からずらしたり、フェイントを入れるがお互いが落とさない。

 五分ぐらいそれを続けていただろう。俺がフェイントに引っかかりボールを落としたところで周りの様子に気づいた。

 新入生からはキラキラした目で見られ、先輩達からはとんでもないものを見たような目を向けられた。……何かおかしなことだっただろうな?


「なぁ、なんであんなボールにも反応できるんだ?」


 そう聞いてきたのは大久保先輩だった。どうやら先輩を代表して聞いているように思えた。


「なんでって……俺は悠真の視線にフォーム、手の動きを見て予想がつくから普通に反応ができる感じですかね。たまにフェイントに引っかかりますけど」


「僕は、半分くらいは反射的に上がってるだけですよ。レシーブはそんなに自信がないので……」


「悠真の異常な反射神経には何度も助けられたな。上がらないと思ったボールを何回も上げてくるからなぁ」


「陽輝だって目が良すぎるんだよ。それに視野の広さも。なんで手首の捻りまで見極めて動けるのか知りたいぐらいだからね?」


「お互い様だろ!」


「昔からそうだったね」


 二人で笑っていると、周りからはありえない物を見た視線を向けられ続けていた。俺達の説明何かおかしかったのだろうか?


「なぁ、今度から色々教えてくれないか?後輩に頼むのもなんだが……」


 頭を下げる大久保先輩。は?なんでこうなった?


「俺からも頼む。バレー部の顧問は練習は見にくるがアドバイスなどは全くしないんだ。生徒達で調べ、お互いで共有しあって練習方法を決めろ。っていうモットーがあるらしい。だから、頼む!」


 大久保先輩に続いて小沢さんも頭を下げ、他の先輩達も頭を下げ始めた。

 何が起こっている?


「とりあえず頭を上げてください。俺たちでよければ教えますから!な?いいよな?悠真」


「教えるんで、頭を上げてもらえませんか?」


「ありがとうな!お前達みたいな経験者が来てくれて本当に嬉しいよ!とりあえず今日は他のプレーも見たいから明日から教えてくれるか?」


「わかりました」


 中学の時と同じことしてただけなんだけどなぁ……


 あ、佐藤さんは何してるんだろうか?とふと思ったので探してみるとどこから持ってきたかわからないが端っこの方でバレーボールの入門書?みたいなものを読んでいた。俺たちの会話には目もくれず、ただひたすらに読んでた。

 後でわからないところでも悠真と聞くか……。




 その後はレシーブ練習、スパイクを行い、その度に先輩達からは驚いてる目を向けられ、同期達からはキラキラした目を向けられ続けた。

 一番酷かった時は、スパイクを叩きつけた時だった。


 今までの筋トレのおかげで、バレーはやっていなかったが、以前より跳躍力に、力が備わっていた。全力で叩きつけたらどうなるのか?という好奇心に負け普段は打たないような叩きつけるスパイクを打ったら、ギャラリーにボールがあがった。正直俺ギャラリーにボールがワンバンで上がると思ってなかった。

 その時は隣でやっていた女バレも全員見ていて騒ぎになっていた。

 そんなに騒がなくても良くないか……と思っていたら翠が


「かっこいいよー!陽輝ー!全然下手じゃないじゃんー!」


 なんて言うから悠真以外からの視線に殺気が籠るようになってそのあとのスパイク練習がかなり良くなっていた。

 俺が言う事じゃないかもしれないが、怒りの感情って凄ぇ。


 まぁそんなこんなで時間は経ち、最後に親睦を深めるという目的で一年対二.三年の試合をすることになった。














 読んでいただきありがとうございます

 部活の話は、本当は今日ので終わらすつもりが……次で終わらせます笑

 誤字脱字等ありましたら報告してもらえると助かります。

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