第15話 久しぶりの部活





 翌朝、筋肉痛になることもなく(これは正直驚いた)俺は悠真と佐藤さんと登校していた。


「今日から部活だな、悠真は動かそうか?」


 正直、あの子の事を聞きたいが、母さんが聞いても教えてくれないと思うと言っていたので聞かない。

悠真の言う通り、自分で思い出さなければならない。


「んー僕は当分は昔みたいに動けないかもねー。ただ、ハンドリングは相変わらずだったから安心してね?」


「まじかよ。俺のほうがやばいかもな」


 二人でそんな話ばかりしていたからか、佐藤さんがちょっと拗ね始めた。ちょっぴり可愛い。

 そして———


「マネージャーって募集しているのでしょうか?よく部活には必要って聞きますし」


 と、聞いてきた。


「え?マネージャーをやるのかい?意外と大変だよ?」


「ドリンクの用意に、タオルの準備。それに、用具の管理にルールとか覚えないといけないからな。かなりきついぞ?」


 マネージャーって意外と簡単そうに見えるけどそのスポーツの経験者じゃない限り結構大変なんだよな。

 まずルール覚えないといけないし、必要なものとかを毎回揃えるのも結構きつい。人数があれば違うが、多分マネージャーはいないだろう。


「ルールは悠真君に聞けばすぐ覚えられます。こう見えても私、頭いいので!それに……私の知らない悠真くんを見てみたいんです。私が悠真君と付き合い始めた頃にはもう引退してましたし……」


「小珀は陽輝の知らない僕をいっぱい知ってるんだけどなー……でも、僕は正直やってほしいかな。マネージャーって必要になると思うし、一緒に頑張りたいからね」


「まぁ、大変だと思うが俺もやって欲しいと思う。言い方悪くなるが、選手が雑用もやるのは無駄な時間だからな。やるからには勝ちたいし」


「本当ですか?じゃあ、私も今日一緒に体育館に行きますね!」


 微笑んでそう言った佐藤さんを見て


「なぁ悠真。お前、絶対佐藤さんから目を離すなよ」


「当たり前じゃないか。こんな可愛い小珀を他人に見られたら嫌だからね」


 と本人には聞こえないように話した。いや、だってさ、マジでさっきの佐藤さん可愛かったぜ?流石学校一の美少女と噂がたつわけだ。


余談だが、佐藤さんは現在学校で二番目の美少女と言われているのだとか。翠はクラス内では、一番で、学年で見ると三番だとか。だからクラスメイトたちは俺に殺気を向けるのか……と理解したのは六月の中旬だった。



◇ ◇ ◇



 その後、学校に着くと山崎がクラスメイトに追われていたがさりげなくスルーし教室に入る。

「おい、陽輝!助けてくれよぉぉぉ」と聞こえた気もするが無視。お前、助け求めたが俺はお前にも追いかけられていたんだからな?助ける理由がない。せっかく俺以外のネタに反応して馬鹿たちが俺以外を追いかけてんだから。



 先週と変わらず、毎時間翠に何かしらを聞かれながら授業を受け、周りの男子からは睨みつけられ、気づけば放課後。

 悠真と佐藤さんと三人で体育館に行こうと、約束していたので先に教室を悠真と出て、佐藤さんを待っていた。



「ごめんなさい、少し遅れてしまいました」


「気にしなくていいよ、じゃ、行こっか」


 三人揃ったので体育館へ向かおうとし———


「おーい!陽輝ー!今から部活行くんでしょー?私も混ざっていいー?」


 後ろから聞こえた翠の声を聞いて止まり、周りからは殺意の籠もった視線を浴びた。……明日は生きていられっかなぁ。


「俺は構わないが……すぐそこだぞ?」


「いいのいいのー!小珀と小珀の彼氏もいるしねー!」


「四人で行こっか」


「そうですね」




 俺たちが通っている東桜とうおう高校は最近から勉強にも少しずつ力を入れ始めたが、もともとはスポーツに力を全力で注いでいたスポーツ校であった。そのため、体育館が三つあり、第ニ体育館が女バレ、男バレの専用体育館となっているのでそこに四人で向かい、翠と別れた。


 ちょうど新入生の紹介が行われていて、俺たちは急いだ。


「遅れてすいません!入部希望者です」


「おぉー!そうか!じゃとりあえず自己紹介をよろしく!」


 見た目はひょろひょろに見えるが声は太く低い声で少し驚いた。また、背がかなり大きい。悠真より少し大きいくらいか?


「言い忘れてたけど、名前と身長、経験者ならポジションもよろしくな!あと、そこの君。女バレは向こうだぞ?」


「いえ、あの、マネージャーってダメですか?」


 その一言を聞いた瞬間に目の前の先輩は泣き出した。え、なんで?ていうか、新入生っぽい生徒以外泣いてるんだが……


「大歓迎だぁぁぁ!!」


「我らにもやっとマネージャーがぁぁぁぁ!」


「「「馬鹿にされなくて済むぅぅぅぅぅ!!!!」」」


 なんでも、今まで女マネがいない運動部は男バレだけで、そのせいでよく馬鹿にされてたらしい。なんでも、つまらないスポーツだから人が来ないやらなんやら……実際にやれば面白いのに。


「とりあえず、自己紹介しますが……」


「あぁ、頼む……」


 まだ泣いてるんだけど……まぁ、いいか。


「一年二組の紅島陽輝です。身長は百七十五センチ、ポジションは中学時代はレフトです。ただ、どこでもできる自信はあります。これから、よろしくおねがいします」


「同じく一年二組の黒木悠真です。身長は百八十二センチで、ポジションはセッターやってました。陽輝ほどではないですが、一応どこでもできると思います。よろしくおねがいします」


 こんな感じで挨拶をして行った。そして最後に、


「一年四組の佐藤小珀です!えっと、身長は百五十八センチで、中学校の時は吹奏楽をやってました!バレーボールのことは全然知らないんですけど、興味があってマネージャーをやりたいと思いました!これからよろしくおねがいします!」


 と、佐藤さんが挨拶を(いや、別に身長はいらなかったよな)終え、


「今年の部員は新入生七人に、マネージャーが一人か!……嬉しすぎて泣きそうだ!」


 いや、先輩泣いてるんだが?きづかないものなのか?


「今のうちに新入生に質問あるやついるか?あ、あと、俺の名前は小沢だ!一応部長をやってはいるからな!」


 目の前のひょろひょろの先輩は部長の小沢さんか。頼りなさそうだが、しっかり者なんだろう。


「すいません!佐藤さんに質問です!」

 と、先輩達の一人が叫んだ。


「なんだ!大久保!」


「佐藤さん!彼氏っていますか?」


「あのなぁ……そんなことは今聞くことじゃないだろ。もっとほかのこと聞けよ。新入生に」


「でも、どうしても気になって!」


「はぁ……すまん、佐藤さん。あの馬鹿がどうしてもなんだ。教えたもらえるか?」


「別に隠すつもりはないですし平気ですよ?彼氏はいます!」


 その発言を聞いた大久保先輩はもちろん、その他先輩も目に見えて落ち込んでいた。マネージャーが彼氏持ちでもいいだろ。


「誰なんですか!教えてください!」


「だから他のことを聞けって———悠真君です!自慢の彼氏ですよ!———そうなのか……黒木なのか……」


 大久保先輩は悠真を睨み、小沢さんは大久保を憐れんでいるようにも見えた。悠真は、「仕方がないよね」と苦笑しながら俺に言ってきた。まぁ、佐藤さん人気だし。


「大久保と佐藤さんじゃ釣り合わねぇから諦めろ!」


「黒木の方がイケメンだぞ!」


 先輩達から飛んでくる大久保先輩への野次。可哀想に。


「お前らいい加減にしろ!質問あるやつは後で本人に聞きにいけ!練習始めんぞ!一年生も混ざっていいからな!」


 やっと練習が始まりそうだ。

正直、まだ怖いといえば怖い。けれど、それ以上に楽しみでもあった。

















 読んでいただきありがとうございます。タイトル詐欺ですね……笑

 本当は内容も書き終えるはずだったのですが……ついつい笑

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