第13話 母さんが帰ってきた
「なぁ、山崎。お前、上手くいったのか?」
二人で並びながら走っているのだが、ふと思い出したので聞いてみる。
「何のことだ?」
「とぼけるな。菊池さんだっけ?とだよ」
「あぁ……まぁ上手くいった方なのか?」
聞くと、山崎は菊池さんを家まで送って行って、家の前で告白したらしい。向こうも気になっていたこともあって断られてはいないが、オッケーを出されたわけでもないらしい。
「とりあえず、四月いっぱいはお試しでどうかな?って言われたからもちろんって言って、連絡先を交換して昨日は帰ったよ。でもまぁ、昨日は助かったよ。ありがとな!」
「気にすることはねぇよ。ペース少しあげてもいいか?」
思ったより俺の体力は落ちていなかったので、今のペースだと物足りない。
「全然構わねぇよ!もっと早く走ろうぜ!」
「あぁ、行くか!」
「一旦休もうぜ……」
「あぁ……流石に疲れたな」
ペースを上げてから一時間程走り続けた頃に山崎が競争しねぇか?と言ってさらにペースを上げたので負けじと追い越して、そしたら山崎もまたペースを上げ———そんなことをしたのでベンチがあるのを見かけて休むことにした。
「なぁ……陽輝って早くねぇか?俺……陸上部なんだけどよ……一年だけど一番……早いはずなんだが」
「だから早かったのか。……俺は体力落ちてると思ってたんだがな、思ったより……落ちてないからついつい全力をな……」
「落ちててその早さなら……バケモンだ」
「そんなことはねぇよ……」
休むこと五分。俺も山崎もすっかり元気になったのでインターバル走を始めた。
「この辺で俺は帰るわ」
「おう!じゃあまた明日な!」
空が明るいオレンジ色に染まり始めたので山崎に声をかけて帰る。山崎はまだ走るらしい。なんでも、
「陽輝に負けたくねぇからな」
とのことらしい。いや、俺は勝てないと思うんだがなぁ……。
いきなりはやり過ぎたか……と思いながら歩き、家に着く。そこで待っていたのは
「母さん!珍しいな」
そう、俺の母さんだ。名前は
「たまたま休みができてねぇ〜明日からは仕事なんだけどねぇ〜今日の夜までは居られることになったのよぉ〜ご飯作ったから手を洗ってから食べてねぇ〜」
母さんの仕事はIT関係の仕事をしていてかなり地位が高い(父さんが死んでから必死に働いたため高くなったらしい)ので休みもほぼとれなくなったが俺と妹を育てるために頑張ってくれている事は知っているので感謝しかない。ただ、陽奈はまだ幼いので寂しいと思っていたりしているかもしれない。
「あ、あぁ!今すぐ食べる!」
もちろん言われたことを守ってからご飯を食べる。夕飯は麻婆豆腐だった。
陽奈と一緒にいただきます!と言って食べ始める。空腹は料理の最高のスパイスというが、それを抜きでも絶対美味しいと思う。俺好みのそぼろたっぷりの麻婆豆腐は噛めば噛むほど肉の旨味がでできて美味しい。
「やっぱ美味ぇ!」
「お母さんが一番料理上手だよね!」
「そんなに褒めても何にもないからねぇ〜冷蔵庫に陽奈の好きなプリンと、陽輝の好きなエクレアがあるから、食べ終わったら食べていいからねぇ〜」
「はーい!」
「お腹いっぱいだね〜お兄ちゃん!」
「それだけ食べたらそうなるだろ……」
陽奈は俺と同じくらいの量を食べ、デザートのプリンも食べきった。小柄な身体のどこに入りきっているのか気になる。今はソファの上でごろんとしている。
母さんがいるからといって家のことをやらせるわけにもいかないので一通りのことは済ませた。
ソファを母さんと陽奈に占領されているので自分の部屋でゴロゴロしようと思ったのだが、
「陽輝〜お話したいことあるんだけどいいかしらぁ〜?」
とお呼び出しがあったので母さんの元へ行く。陽奈は母さんが俺を呼んだ時に自分の部屋に戻っていた。……別に居てもいいんだが。
「高校生活は楽しい〜?まだ始まったばかりだけどぉ〜」
「まぁ、それなりには楽しい。悠真とも同じクラスになったからな」
「それはなによりだね〜。そういえば、陽輝ってまだあの子の事、好きなの〜?」
「いきなりどうした?……まぁ、あいつの事は好きだけど何か?」
「そうなの〜!よかったわね〜、同じクラスにいて」
「は?なんつった?」
同じクラスにいるだって?
読んで頂きありがとうございます。
山崎くんは、きっと結ばれます笑笑
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