第12話 幼き頃の俺と悠真とあいつ
再度修正です。
家まで翠を送った後、家に帰るともう陽奈は寝ていた。それもそうだろう。一人で家事を全部やって疲れているのもあるだろうし、俺が家に着いたのは十時半に近かったのだから。
寝てる陽奈を起こさないようにしてお風呂に入り、歯磨きをしてすぐに布団に飛び込んだ。
いつのまにか眠りにつき、目が覚めたと思ったら俺の身体はぼんやりとしていた。辺りを見ると、三人の子供が遊んでいるのが見えた。
近づいていくと、男の子が二人に女の子が一人いた。俺とあいつと悠真だ。
「ねぇねぇ、ひろくんと〇〇ちゃんはなんでそんなに仲良しなの?」
やはり、名前の部分は聞き取れない。雑音に近い音となって聞こえてくる。
「えーっとね、わたしは、ひろくんといるとポカポカしてくるの!だからかなぁ?」
「ぼく?ぼくは、すきだからだな!」
「そっかぁ……両思いなんだね。いいなぁ……」
「なにいってるの?わたしはゆうくんと一緒にいてもポカポカするよ?」
「ぼくもゆうまはすきだぞ!」
「ぼくも二人のことすきだけど、わかっちゃうんだ。ひろくんが〇〇ちゃんをすきで〇〇ちゃんはひろくんのことがすきなんだって」
「そうなの?わたしにはふたりともポカポカするからわかんない」
「ぼくもわからないぜ!だって、二人とも大切だからな!」
「いつかわかるとおもうよ?でも、ありがとうね!」
もしかして悠真はあいつの名前を知っているのではないだろうか?俺の前では名前は言わないが、この光景を見る限りじゃ知っていてもおかしくない。
何より悠真は幼い頃から頭が良かった。何をしても覚えるのは早いし忘れない。
夢が覚めたら聞いてみるか……そう思いつつも夢の続きを見ようとした時にはもう昔の三人は消えていた。
三人に変わるようにして新たに出てきたのは成長した俺と悠真の二人だった。……多分、小学三、四年のときか?
「なぁ悠真。俺って変なのか?」
「どうしたの?いきなり」
「だってさ、好きな人聞かれたから答えたらありえないだろー!って言われたんだよ。クラスに可愛い子がいるから本当はそいつなんだろって言われてさ、それでも〇〇の名前をだしたら変なやつー!って言われたんだよ。おかしいことなのかなぁ」
この時はまだ覚えていた。まぁ聞き取れないんだがな……。いつからあいつの名前を思い出せなくなったのだろう?
「ぼくはそうは思わないよ。可愛いから好きになるわけじゃないしね。可愛いから好きになるって決めつけるあいつらよりよっぽどおかしくないよ」
こんなこともあったな。男子と女子がお互いを気にし始めてクラスの男子の奴らに好きな女子の名前を聞かれたから答え、馬鹿にされて。ずっと会ってないのに好きなのはおかしいだろ!って言われ、俺があいつのこと好きなのはおかしいのかと不安になっていた時だな。
この時に悠真に言ってもらえてなかったら俺は想い続けることもなかっただろう。周りに変な目で見られる事は当時は嫌だったからな。
「そうか!俺はおかしくないよな!ありがとう!」
「想い続けてる方が凄いのにね」
「なんか言ったか?」
「なんでもないよ。それより、あの子からてが———」
「お兄ちゃーーーーーん!いいかげん、起きなさぁーーーーい!」
「うおっ!……なんだよ陽奈」
中途半端なところで目が覚めた、というより起こされて目が覚めた。なんで起こしたんだよ……あの時の悠真が何を言っていたのかがきになるじゃねぇか。何故か俺は思い出せないし。
「今何時だと思ってるの?!早く起きて家事やってよね!」
部屋に掛かっている時計を見ると短針と長針がぴったりと十二時を指していた。やっべぇ!
「すまねぇ陽奈!今から昼飯作るし家事やる!」
「早くしてね!」
急いで顔を洗って身支度を整え、昼食の準備を始める。
「むぅ……お兄ちゃんなんでそんなに料理上手いの?」
とりあえず冷蔵庫にあった鳥の胸肉を使って照り焼きを作った。時間がなかったため近くのコンビニまで走ってサラダなどは用意したが、なにやら不満そうな顔をされてるのだが?
「父さん死んでから俺がずっと料理してきてるんだよ。陽奈が料理できるようになるまでずっとだぜ?そりゃ上手くなるに決まってんだろ」
「それでも悔しい〜!パリッとした皮に程よい甘さのタレ。一口噛んだらジュワッと出てくる肉汁!おいしぃ……」
十分陽奈も上手いんだけだな……料理歴まだ一年も経ってないのにクオリティなら俺とほぼ同じなのに。
「ごちそう様ー!」
「おう。陽奈さ、今日用事あるのか?」
「ないけど、どうしたの?」
「明日から俺部活だから、ちょっと走っておきたいんだよ。だから明日からほぼ毎日家に一人になるんだけど平気か聞きたくてな」
「平気だよ!それより、部活に行くんだね?」
「あぁ、行くよ。けれど家事当番はいつも通りでいいからな。ただ少しだけ俺が当番の日はいろいろ遅くなると思うけれど、大丈夫だよな?」
「わかった!じゃあ走っておいで!」
天使みたいな笑顔で見送られ玄関を出る。もちろんもう家事は済ませてるから大丈夫だ。
家の近くに土手があるのでまずはそこまでアップがてら走る。
身体も程よく温まったところで、走り出そうとした時だった。
「お?陽輝か!何してんの?」
俺の背中の方から声をかけてきたのは山崎だった。いかにもこれから走りますよ!って感じのウェアを着て、私服とは違った印象を受けた。……この写真を菊池さんあたりに送れば好印象だと思うんだが……。
「明日から部活だろ?中学のときに引退してからまともに運動してこなかったから身体動かそうと思ってな」
「俺も付き合っていいか?似たような理由だからよ。一人で走るより二人の方が楽しいと思うし」
「別に大丈夫だぞ」
こうして俺は山崎と走る事になった。
読んでいただきありがとうございます。
次回の主人公は多分山崎くんになります笑笑ご了承ください。
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