第11話 当然という名の優しさ

 全員が料理を注文し終え、各自飲み物を用意したところで俺を呼んだ山崎が自己紹介を始めた。


「軽く自己紹介するね?僕は山崎直樹やまざきなおき。よろしくね」


 うわぁ……猫被ってるだろ。口調とか、声とか俺を呼びにきた時と全く違うじゃねぇか。インターホン押された時ははっきりとは見えなかったがこうしてみると結構美形だな。


「俺は鈴木勇也すずきゆうやだ。よろしくな!」


 背が小さいけどまぁ顔は悪くはないな。ただうざそう(笑)。


「俺はぁ水間良昭みずまよしあきだ。今日は楽しく過ごそうぜ」


 こいつが一番ねぇか。話し方と服装が一致してなさすぎて笑えてくる笑えてくる。現に翠が笑い堪えてるじゃねぇか。なんでお前だけスーツで来てんだよ。


 さて、俺の番か。


「紅島陽輝だ。小川ってやつの代わりに来た。一応、よろしくな」


 完璧だろ。と、自己満足に浸っていたが男子からは鋭い目を向けられ、女子からは何故かうっとりしたような目を向けられている。……え、なんかおかしかったか?


「じゃあ次はうちが!谷口翠だよっ!陽輝と同じで代理人ってことになるね!でも、楽しむつもりだからよろしくね!」


 男子達がめちゃくちゃキラキラした目で翠を見てるんだが。他の女子いること忘れてないよね?


「私の番かな?私は田中優衣たなかゆいだよ。よろしくね?」


 綺麗な黒髪のポニーテールを下げていて、顔のパーツのバランスが良いな。普通に可愛い。


「えっと、私は、菊池結奈きくちゆなですっ!よろしくお願いしましゅ!」


 あぁ〜ドジっ子かぁ〜。噛んだもんなぁ〜。顔真っ赤にしてるじゃん。ショートヘアで、毛先がくるっとしていて佐藤さんに似た茶色の髪が可愛らしい。……おっと、山崎がなんか見つめてるなぁ。あとでからかってやろ。


「最後は私だね。初野莉子はつのりこだよ。楽しみにしてたんだよね。今日はよろしくぅ!」


 赤茶色のサイドポニーが揺れると同時にどことは言わないがふるんっと揺れた。その揺れた部分を俺を含めて凝視したので女子達からは蔑んだ目で見られた。本人は気づいてないが。


「と、とりあえず自己紹介も終わったしお互い色んなことを話していこうぜ?ちょうど料理も届いたし食べながらでもさ!」


 と、鈴木が言ったので届いた料理を食べながら盛り上がった。



「なぁ山崎。お前、菊池さんのこと狙ってるだろ?自己紹介のとき見惚れてただぽいしな」


 ドリンクバーでたまたま山崎と鉢合わせたので聞いてみたら、


「そ、そ、そんなことねぇよ!何言ってんだ!」


 と、慌てふためいたのでイタズラ心でからかってみる。


「じゃあさ、俺、菊池さんのこと気に入ったから俺が貰っていいよな?俺合コン終わったあとに告白するわ」


「ふ、ふざけんな!俺だって告白してやるからな!」


 すぐ釣れた。これで好意を持ってることが判明したので背中を押してやる。


「なら今日の帰りにでも告白しろよ。二人きりの状況にはしてやるから。俺は応援してるぞ」


「なっ!」


 こんな風にな。そうすればこいつは必ず帰りに告白でもするだろう。


「何話してたの〜?陽輝、すっごく悪い笑顔してたよ?」


 席に着くとそんなことを言われた。顔に出てたか。


「なんでもねぇよ。ちょっと面白いことがあっただけだ」


「そっか〜。あ、そうだそうだ、ねぇ聞いて!」


「聞くから肩を揺さぶらないでくれ。ったく」


「ごめんごめん。あのね、結奈ちゃんが山崎君のこと気になってるんだって!」


 おぉ、まさかの両思いか?くっついてくれたら俺への被害も減るんだが……。


「山崎の方は菊池さんのこと好きだって言ってたぞ。帰りに俺が二人きりにすると言ったら告白するんだってさ」


「本当〜?!明後日どうなってるのか楽しみだね!」


 嘘は言ってない。告白をするって言ってたし、俺は二人きりにさせるし何もおかしくない。








「今日は楽しかったよ!ありがとね!」


「来てくれてありがとうな。じゃあ気をつけて帰れよー!」


 二時間ほど滞在して、解散となった。ちなみに俺は翠を家まで送ることになっていた。山崎が何かをしたらしい。まぁその山崎は菊池さんと一緒に帰っているので月曜になればどうなったか分かることだろう。

 他の四人は家の方向がたまたま一緒とのことなので四人で帰るそうだ。



「楽しかったね!」


「あぁ、そうだな。思ったより楽しかったな」


「菊池さん達上手くいくといいよね〜!」


「山崎も顔は悪くないし性格は知らないが多分上手くいくだろうな」


「そうだね!」


 話題が途切れ、あたりに静寂が広がる。聞こえるのは二人のした足音のみだった。


「ねぇ、陽輝。もしかしてうちの歩くスピードに合わせてる?」


 今頃気づいたか。前回送った時も俺は彼女に合わせて歩いていたのだがな。


「あぁ。女子と歩くスピードを合わせるのは当然だろう。ちなみに前回も合わせてたからな」


「そっかぁ……ありがとね!」


「お礼を言われる事はしていないから気にしなくていい」


「気にするの!とにかく、ありがとう!」


 街灯の明かりしかないので暗かったが彼女が見せた笑顔は夢に出てきたあいつの笑顔にそっくりだった。

 何故俺は翠を見てあいつを思い浮かべるのだろう。なんの接点もないのに。


「どうかしたの?」


「あ、あぁ、なんでもない。ちょっと考えことを」


「気をつけてよね?暗いんだから」


「すまない」




 多分、二十分ぐらい歩いただろう。翠の家に着いた。見るのは二回目だが目立つなぁ。


「わざわざありがとね?」


「何はともあれ、俺がすると決めたことだから気にすんな。当然なんだよ」


「陽輝にとっては当然……かぁ」


「何か言ったか?」


「なんでもない!とにかく、今日はありがとね!また月曜日に!」


「あぁ。またな」





 こうして今日の合コンは終わった。

 ……山崎。上手くいってると信じるぞ。


























 読んでいただきありがとうございます。本来はもっと翠と陽輝を進展させようとしたのですが、まさかの山崎くん笑笑

 次どうなったのかはちゃんと書きますのでどうか期待を!(多分わかってるだろうなぁ笑笑)

 誤字脱字、その他なにかありましたら報告貰えると助かります。

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