第10話翠のことを少し知った


「なぁ、今何時か分かってるのか?」


「分かってるよ?だから今いるんだけど」


「翠、集合時刻言ってみろ」


「七時でしょ?」


「誰から聞いたんだ?」


「今日来るうちの友達だけど?」


騙されてんじゃねえか。俺は十五分前に着くように家を出たつもりだったが思ったより早く着いてしまったから早く着いたんだけどな。


「俺は七時半って聞いてるんだが?」


「え?嘘でしょ?うち騙されたのかな?ちょっと聞いてみる」


翠は電話をかけ始めた。時折何かを携帯に向かって大声で言っていたりするが気にしたら負けだ。

今気づいたが、翠も私服で来ていた。ちょっと淡い茶色のスカートに、肌色の長めのシャツ。それが黒に近い焦げ茶色のボブカットに抜群にあっていた。ゆったりしているらしく、普段制服で隠れている胸部が目立っていて、良く見れば通行人の一部がチラチラとこちらをみていた。

客観的に見ても可愛い。クラスで一番人気と言われている理由がわかった気がする。


「なんかね、うち、よく遊ぶ時とか遅刻したりするのね?だから早めの時刻を伝えたんだって。酷くない?いくらなんでも三十分前は早すぎると思わない?」


「俺は翠に時間を教えた子を物凄く褒めたいが?どう考えてもお前が悪いじゃねぇか」


「そうやって陽輝くんまでいじめるんだ!……今思ったけど、いつもと違うよね?」


「変わらねぇと思うぞ。むしろお前の方がいつもと違いすぎて驚いたわ」


「頑張ったんだけど……どう?」


「まぁ可愛いんじゃないか?時々こっちを見てくる人がいるくらいだからな」


「えへへ〜ありがと!でも、多分だよ?陽輝くんのことを見てる人もいると思うけどな〜」


「そんなことあるわけ無いだろ。何言ってんだよ」


「そんなことないんだけどな……普通にカッコイイのに……」


笑いながら翠に言うが、本人は何か呟いていた。どうしたんだろうか。顔も少し赤くなっているし。


「おい。大丈夫か?」


「な、なんでもないから!とりあえず、先に中入らない?」


「まぁそうだな。少し肌寒くなるだろうしこのまま三十分待つのはよくないだろ」


二人で中へ入る。本来来るはずだった小川が予め予約していたらしく席が一箇所だけ空いていた。店員に後から何人か来ます、と一言伝えて先に席に着く。


「なぁ、翠は誘われてきたのか?」


単純に何故いるのか気になった。


「うちは代役だよ。来る予定の子が来れなくなったらしいから、その代わりって事で頼まれたんだ。陽輝くんこそ、誘われたの?」


「いや、俺も似たようなものだ」


「本当に〜?実は可愛い子とか期待してたんじゃないの?」


ニヤニヤと笑いながらこちらを見てくる翠。なんかムカつく。


「仮に可愛い子が来たとしても狙うつもりなんかない」


「なんで?彼女欲しいとか思わないの?」


「俺は好きな人がいるからな。その人以外は興味ないな」


「うちらの学校にいたりする?」


「さぁな。今じゃ名前もわからねぇ子だ。幼馴染って訳じゃないが幼稚園の同級生だった子だ。向こうが引っ越して今何してるかわからない」


「そっか……なんで今も好きなの?」


何故……か。なんでだろうな。あの子にこだわる理由はないが、言うならば


「あいつの笑顔が頭から離れないからだ。それより、俺だけじゃ不公平だろ。翠の好きな人教えてくれよ」


ちょっと恥ずかしかったので翠に聞いてみる。


「その前に、なんでうちに好きな人がいるって知ってるの?」


「この前、岡野ってやつがお前に告白してるところは見てないけど声が聞こえててな。その時言ってただろ?」


「あの時かぁ〜まぁ教えてあげるけど、うちの好きな人と君と同じような感じだよ。ひろ君って子でカッコよかったんだよね。幼稚園の時に同じクラスでね。私が引っ越すまでずっと一緒だったんだけどね〜」


「やっぱり、翠も……」


「うん。ずっと好きだよ。何回か諦めようとしたけど、ダメだったな」


「そうか。似たようなことってあるもんだな」


「そうだね!お互い会えるといいよね!」


「会えたところで分かるもんなのか?」


なにせお互い最後に会ってるのは十年近く前。それからお互い成長しているから全くわからない可能性がある。


「たぶんこの人好きだな〜って思ったらその人が昔の初恋の子だと思うな」


「どんなに変わっていてもか?」


「きっとね」


「お互い会えることを願うか」


「うん!」


ちょうど話が区切りのいいところで終わった時だった。男女三人ずつのグループが入ってきて、こちらに歩いてきた。


「何抜けがけしてんだよ陽輝ー」


「本当だよー翠ー」


「遅ぇよ。待ちくたびれたわ」


「本当だよ!何も三十分前に着かせないでよ!」


「陽輝が早すぎんだよ!」


「いつも翠遅刻するでしょ!」


俺たち二人と新たにきたメンバーで文句の言い合いが始まろうとした時だった。


「とりあえず、席に着いてから始めようぜ?」


と、山崎が言ったので着いたばかりの六人がそれぞれ座った。


「じゃあ、とりあえず注文してから自己紹介でもしようぜ?」


やっと合コンが始まりそうだ。




















読んでいただきありがとうございます。ふざけようとしたのですが、まさか合コンすら始まらないとは思ってませんでした笑

昨日は、間違いをご指摘頂いたので、修正をしました。もしこんがらがった人がいたら申し訳ありません。

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