第7話 平和な朝をくれ

「おひっこしするの?」


「うん……はなればなれになっちゃうの」


「そんなのいやだ!ぼく、◯◯ちゃんとはなれたくない!」


「わたしもいやなの!でも、しょう

 がないんだって……」


 あぁ、これは幼い時だな。

 自分の体を見るとぼんやりしている。きっと俺は今の夢を見ている。何度かあいつが出てくる夢は見ている。

 俺の話し相手はあいつか。……やっぱり名前が出てこねぇ。ただ、顔の部分は今まではもやがかかったように見えなかったが、今回は見えた。


「また会えるよね?ぼくたちおともだちだもんね?」


「きっと会えるよ!わたしたちはおともだちだからかならず会えるよ!」


「ちょっとまってて!……これ!ぼくの大切なものあげるね!」


 あの時、当時大切にしてたバレーボールをあげたんだ。こんな小さい時から俺はバレーをやっていたのにやめようと……情けない。


「わたしもなにかわたしたいけど、なにもないよ……」


「じゃあ、つぎあえたときにそのボールをぼくにちょうだい!ぼくの大切なものだから!」


 笑えるな。あげたボールを次会えたら返してなんて言うなんて。

 本当に懐かしい。


「わかった!じゃあ、もういかないと」


 車に乗る彼女を見て俺は……そうだ、泣いたんだよな。

 泣きなぎら、何とか最後にまたあおうね!って言えて、彼女が泣きながら絶対だよ!って。

 彼女は今なにをしているのだろう。俺があげたボールでバレーをやっているのか。それとも、他のスポーツをやっているのか。彼氏なんか作っていたりするのだろうか。



 どっちにしろ、彼女が幸せならなんだっていいか。









「昨日はすまなかった。気づいてたら寝てた」


 夕飯を食べ終えたあとお風呂を済ませベットの上でだらけていたらいつのまにか眠ってしまい、悠真からの連絡に気づくことができなかった。


 悠真にとっては運命の土曜日。俺達が通う学校は私立で土曜授業は普通にある。部活に精を出す生徒が多く、勉強を疎かにするのではないかと危惧きぐしている学校側が設けているせいで今日も登校しているというわけだ。いつもと違うのは佐藤さんがいないという事だが、日直だから早く行かなければならないから居ないそうだ。

 今日は平和な朝が過ごせるな!


「気にしなくていいよ。それより、ちゃんと話せたのかい?」


「話せたよ。……なぁ悠真。部活はどうするんだ?」


「もしかして、やるの?陽輝」


「昨日谷口さんに言われてな……また、やろうかと」


「最強コンビ、復活させるかい?」


 にっと笑って言った彼の表情は嬉しそうだった。


「いいのか?お前は佐藤さんと一緒にいるために入らないって」


「そこはちゃんと話すから安心して。それより、入るつもりなんだね?バレー部に」


「あぁ。今日からとは言わないが来週の月曜から参加してみようかと」


なまってるだろうね。でも、また頑張ろうね」


「っ!あぁ!」


 一度やめかけた俺にまた付き合ってくれるのか……やっぱり持つべきものは良き友だな。


「部活をやるのはいいとして、うまくいったんだね?昨日は」


「何がだよ」


「聞いたんだよね〜。昨日、二人で帰ってるって」


 情報ってすぐ出回るもんだな。


「あぁ。遅くまで話してたから暗くなってな。一人にさせるのは危ないだろ?だから送ってやったんだが……何か不味まずかったのか?」


「陽輝はクラスのグループラインに入ってないんだよね。噂になってたよ。あの二人、出来てるんじゃないかって」


「んな訳あるか!だいたい、一緒に帰ったぐらいで何でそうなる?」


「普段から授業中よく話してるでしょ?ああいう所を皆見てるわけだし、そう思われても普通じゃない?それに、二人はお似合いだと思うけどな?」


 普段あいつが聞いてくるのを全部教えてて、それで昨日の出来事か……しょうがないだろ。だけど、


「お前、俺の好きな人知っててよくそんなこと言えるな」


「まぁねー。でも、僕としても早く新しい人見つけて欲しいけどね。まだ好きなんでしょ?あの子」


悠真はあいつの事を知っている。何度か三人で遊んだ事があったためだ。


「当たり前だ。これからもずっと好きでいる自信はあるからな」


「僕としては新しい人を見つけて幸せになってほしいんだけどな……」


 きっと夢を見たのは、谷口さんが一瞬だけ彼女に見えたからだろう。だから彼女と離れ離れになる夢を見たんだ。……ボール大切に持っていてくれてるといいな。

 そういえば、夢で見た彼女の顔ははっきりとは見えなかったが、目元とか谷口さんにそっくりだったな。



「話少しそれたけど、昨日は谷口さん部活出てなかったらしいよ?それもあるんじゃないかなぁ」


「は?あいつ、俺に何も言わなかったぞ」


「まぁそんなわけで噂になってる訳だから、クラスメイトから気をつけてね?あと、僕の件だけど、お父さんが日付間違えてたらしいからまだ時間はあるよ」


 その台詞と同時に背中の方から殺気が飛んでくる。いや、殺気だけじゃないようだ。シャーペンが地面に刺さっていた。

 これ、物理的に刺さらないものだよな???


「あれぇ?珍しいねぇ、陽輝くぅん。どうかしたかぁい?」

「ごめぇーん。手が滑っちゃったぁー、テヘペロ」

「おはよう陽輝くん。さぁ、遊ぼっかぁ!」


「俺はいつになったら平和な朝を迎えられるんだよぉぉぉぉぉぉ!」


「「「今日こそは許さねぇ!死ねやぁ!」」」


 俺に平和はなさそうだ。

















 また修正をしました。

すみません……


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