第3話バレたらやばいな


「なぁ、悠真。なんか俺に秘密にしてることねぇか?」


 昨日と同じように三人で登校してホームルームが始まるまでの時間に俺は悠真に聞いてみた。


「どうしたんだい?いきなり。秘密にすることなんてないよ?」


 小さい頃からずっと一緒にいる俺にはわかる。悠真は何か悩み、もしくは隠しておきたい事がある時はほんの少しだけ視線を左に逸らす。この反応をした時は少なくとも何かがある。


「正直に話そうぜ?ずっと一緒に過ごしてきてるからお前の癖ぐらいわかるぞ」


「……陽輝にはバレるか。秘密でもなんでもないんだけどちょっと問題?的な事があってね」


 そう言って悠真は話始めた。









「———つまり、れんさんがそろそろ海外で仕事をしなければいけないから、それにともなって優衣さんもついて行くため一人暮らしをするはずだったのに、錬さんの親友の娘と二人で同居しないといけなくなってったわけか」


 錬さんというのは悠真のお父さんで、優衣さんがお母さんだ。二人めちゃくちゃ仲良いから離れたくないんだろうな……


「僕たちの同級生で同じ高校に通ってるってお父さんは言うんだけどあとは教えてくれないんだよね。」


「もちろんその件は佐藤さんには?」


「言ってないよ。もっと情報がわかってから説明するつもりだったからね」


 佐藤さん心配症だったよな……彼氏が自分以外の女子と同じ屋根の下で暮らすことになったって言われたらどうなってしまうのだろう。


「その話いつ聞いたんだ?」

「入学式があった日にお父さんが言ってきたんだよね。家に帰ったらいきなり「悠真!一人暮らしの件なんだけど俺の親友の娘と一緒に暮らせよ!」って言ってきてさ……何言ってるかわからなかったから詳しく聞いたらお父さんの親友が入学式にいて、その人もだいたい同じ時期から海外出張らしくて二、三ヶ月の間は二人でいいんじゃね?って話になったんだってさ」


 その錬さんの親友、娘を男子と同じ屋根の下に軽々しく一緒にするもんじゃないだろ。


「ちなみにいつからその相手の子が来るんだ?」


「今週の土曜日から来るって話になったよ」


「あと四日か……」


 悠真が何かするとかはないだろうが相手のことが女子としかわかってないのは不安だろうな。ラノベとかに出てくるギャルとかだったら怖いし。


「とりあえず先生来たからまた後でね」

 そう言って悠真は席に戻っていく。







 悠真達のことを考えながら一時間目の授業を受けていたら、


「ねぇねぇ紅島くん?ここ、わからないんだけどわかる?」

 と、谷口さんに声をかけられた。


「あぁ、ここはこれをここに代入してな……」

「ほんとだ!ありがと!……ついでになんだけどさ、ここもわかる?」

「ここはちょっと難しいな……この公式とこの公式を使ってこうやって解けば……多分こんな感じだと思うぞ」

「勉強できるんだね!ありがとね!」


 二時間目にも

「紅島くん、また聞いて悪いんだけどさここってわかる?」

「あぁ、これは主人公の心情を文章中から探せばいいんだよ。結構わかりやすいから探してみ?」

「ありがとね!……もしかしたらこの後の授業と何回か聞くかもしれないんだけどいい?」

「おう。俺でよければ気軽に聞いてくれ」





「今日は助かったよー!ほんとにありがとね!」


 六時間目終了のチャイムが鳴り今日の授業は終わった。彼女は毎時間俺に聞いてきた。最初は気づかなかったが、俺と谷口さんが話すたびにクラスメイトの一部から殺気が飛んで来ていた。


「気にしないでくれ。俺でよければいつでも聞いてくれ」

「そうするね!じゃ、私部活あるからまたね!」


 手に持ったバッグとともに彼女は教室を出て行った。もう部活決めてるのか……早いな。俺も久し振りにバレーボールでもしてみようかな……そんなことを考えながらドアを開けようとした時だった。


 シュッ!と音がなり目の前をシャーペンが通り過ぎていった。シャーペンの出所を見ると、恐ろしい顔をしてクラスメイトがたっていた。


「ちっ、外したか」

「「「次は外すな!奴に制裁を!」」」


 そういってクラスメイト達は次々に凶器を取り出した。


「ふざけんなぁぁぁぁ!」


 ドアを急いで開け、クラスメイトから逃げる俺に、平穏な日々は訪れないのかもしれないと思った。














 読んで頂きありがとうございます!




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る