第5話
冷蔵庫の冷凍室を開けると、捌かれた肉の塊がしっかりと冷やされている。
(少し減ってきたな。)
以前の肉で作ったシチューは今日温めた分で食べきり。今回獲った分と、豚のばら肉、鳥の胸肉のみが冷蔵庫に入っている。
(そうだ。今回の分はビール煮にしよう。)
そう考えるとお腹が空いてくるのを感じる。
今の今まで交尾していたオスを食べることに、カマキリのメスは何か考えただろうか。そんなわけがない。美味しい。それだけ。そこには感謝も申し訳なさも愛情すらない。生きるためには食べなくちゃいけない。だから美味しいと思う。栄養を、エネルギーを積極的に摂取するために。
私が人間の肉を美味しいと感じるのは、それが必要だから。
テレビをつけるとニュースがやっている。
「先日某所で殺害された被害者の身元は橋下茂雄さん53歳で事件の犯人については未だ捜査中です。職場でも特に問題もなく、橋下さんの部下によると」
ぴ。と電源を落とし、コンロの火を消す。シチューは程よく温まり、いい香りが鼻腔をくすぐる。
いつも通りフォークとナイフを定位置に置く。温まったシチューを真っ白な皿に盛る。ナイフとフォークの丁度真ん中に皿を置く。
美味しそうなものを前にするとつい笑顔になってしまう。手を合わせる。
いただきます。食べるものに感謝を。
いっぱい食べる君が好き 鮭B @syakeB
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