第4話

 人はいろんなものを食べる。鹿、犬、猫、猪、馬。なんでそのラインナップに人間は並んでないんでしょう。私が好きなのは子供の肉。でも子供は捕まえるのは難しいのよね。

 こんなに人間が溢れている世の中で、なんで人間を食べないんだろう。捕まえるのにリスクが高いからかな。でもとってもおいしいから。きっと皆んな一口食べたら病み付きになる。


「高田くん。」

「部長、お会いしたかったです。」

胸が高鳴る。


 部長に狙いを定めたのは、捕まえやすかったから。もともと部長が私に言いよってきたのが始まり。なにがいいって奥さんにバレないために皆んなから隠すこと。会ってることは秘密。私との接点も一見ない。

 部位が取りやすように、何が目的かわからないようにバラバラにした。手早く捌くのは大変だった。大人をさらに男性を捌くというのは体力も時間もかかる。少し荒くなるし、時間を気にしてもったいないけど肉は綺麗には取れない。めったに手に入らないせっかくの肉だけど仕方ない。

 家に帰ると私はまず血抜きを行なった。

食欲と愛情は似ている。


「部長。もっと。こっちに。」

 私が微笑むと部長はこちらへ手を伸ばしてくる。

 そういう時、いつも思い浮かべる。養豚場の飼育員さんもきっと同じ気持ちなんだろう。愛おしい。おいしそう。かわいそう。おいしく食べてあげるからね。

 だから。部長も、今まで食べてきた人も、豚も、牛も、全部私の血肉になって生き続ける。だから。安心してください。

 条件反射でよだれが分泌され、口内を満たす。



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