第2話
「おはようございます。」
そういって入った事務所はあちこちがざわざわとしていて、中には泣き声のようなものも聞こえていた。
「ああ、高田さんニュース見た?」
普段から汗かきで女性社員から敬遠されている副部長は普段の倍以上の汗をかいて。急いでいる風で話しかけてきた。
「いえ、今朝は病院で」
「昨日ニュースでやってた事件、殺害されたのがうちの部長だったらしくて、今警察から連絡が入ってね、何人か事情聴取に呼び出されてて、君たちも順番に呼ばれるだろうから、よろしくね。急で混乱するだろうけど、ちょっと今忙しくて」
一息で言うと、警察に出かけるらしくジャケットを羽織るとバタバタと出て行った。
「部長はよく喋る人でもなかったですし、家族のこともあまり話されなかったので...」
実際、人生の中で事情聴取というものを受けるとは思わなかった。若い警察官とおそらく記録をしているであろう警察官だけがいる狭い部屋。机一つを挟んで話す。テレビドラマで見るよりも実際入ってみると、思っていたより部屋は広く感じた。
「そうですか...。お気を悪くなさらないで欲しいんですが、皆さんに聞くことになっているので答えていただきたいです。昨日夜の12時から3時の間は何をされてましたか?」
義務といった程で言われた言葉は、本当にみんなに聞いているようですらすらと練習したセリフのようにでてきたため、なんの感情も抱かせなかった。
「皆さんそうだと思いますが...、もうその時間には寝ていました。夜起きることもなかったので。」
「なるほど、ありがとうございます。そういえば今朝は遅い出社だったらしいですが何か?」
「今朝は病院へ定期検診に行っていて、今日は昼からの出社だったんです。」
「ああ。ありがとうございます。すみませんね、お時間取らせてしまって。君、彼女案内して。」
驚くほどあっさりした事情聴取だった。おそらく犯人像がまだ絞れていなく、今は手広くやっているのだろう。
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