第3話 涙水晶

(なんか、むずむずする)

 真っ白なページを膝の上に広げて、小鳥は墓地の東屋あずまやでぼうっと空を見上げていた。巨大な入道雲の背後から、太陽が放射線を放つ。雲の流れに沿って揺らめく日光のように、小鳥の心もざわめいて、絵に集中できない。

(描かなきゃ。描きたい。でも、いつもの絵じゃ駄目なの。空想のお話でも、この街の風景でもなくて…何を描きたいんだっけ)

 土の下で種が芽吹く瞬間をもとめて蠢くようなこの感じを知っていると、小鳥は思う。既視感デジャヴ。以前は何を描いたのだろう。それは、いつのことだったろう。どんな気持ちだったろう。いっぺんに様々なことを考えようとすると、すぐに頭がぼうっとして、パズルのピースのように思考がばらばらにほどけ散った。

 と、白い入道雲が人の形のシルエットに切り抜かれ、からかうような声がした。

「また腑抜けた顔してる。『お願い、私の大好きなロザリンド、陽気になって!』」

「蒼くん…」

 制服のシャツの前を軽くはだけ、ブレザーを腕にかけた蒼が太陽のように笑っている。小鳥がとっさに表情を取り繕うことができなくても気にせず、鞄をベンチの上に投げて「暑い」とぼやいた。

「今日も、練習だったの?」

「毎日だよ。夏休みも後半に入ったからな、週六日で稽古をつけてる。台詞はとっくに全部覚えたけれど、細かい所を山ほど詰めなきゃいけないんだ」

「高校生って忙しいのね。ソフィアも、ほとんど毎日学校へ行っているわ」

 小鳥の向かいのベンチにごろりと寝転がった蒼が、視線だけ小鳥に向けた。

「そういや小鳥は、ソフィアと同学年なのか?今、高一だっけ、あいつ」

「私の方が一つ歳上…だけど、来年の四月から一年生に入学することになってるわ」

「へえ。じゃ、今年はサボり?」

 蒼らしい、率直な言い方だった。小鳥は反射的に肩をすぼめたが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。

(蒼くんは、少し意地悪だし言い方もきついけど、人を故意に傷つけたりしない)

 忘れ去られた花園で二人がしょっちゅう顔を合わせるようになって、一週間以上が経っていた。その中で、小鳥はそう確信していた。毎日小鳥は、朝ご飯を食べ終わってから足の向くままに街を彷徨い歩き、思う存分スケッチをした後、外国人墓地を訪れる。東屋で絵を描く時もあれば、ただぼんやりと座っている時もあった。夕方になると、蒼が姿を現す。始めに宣言した通り、蒼は大抵ぶつぶつ台詞を暗唱したり、歌をうたって過ごしていた。小鳥はその横で、やっぱり絵を描いたりぼんやりしている。けれど時折、二人はぽつぽつと言葉を交わした。蒼に台本を押しつけられた小鳥が、仕方なしに稽古の相手をつとめることもあった。

 蒼に対する警戒心は、すっかり解けていた。炎天下にずっと外にいる小鳥の体調をさりげなく気遣ってくれるいい人だと思うし、役柄の影響なのか大仰な口ぶりや、皮肉交じりの話し方が面白いと思う。ただ、蒼が活き活きと演じる姿を見るともなしに見つめ、澄んだ歌声に耳を傾けていると、小鳥の心はざわめくのだ。

 蒼はじっと質問の答えを待っている。小鳥は小さく身じろぎして、とりとめない考えを振り払った。

「この春まで、北海道の病院に入院していたから。あと少しだけ元気になったら、また学校に通ってもいいって、お医者さまに言われてるの。だから、来年の四月から、ソフィアと同じ学校の一年に編入する予定。翠さんが私の叔母の友達で、身元引受人だから」

 思いつくままに答えて、小鳥はペットボトルから水を飲んだ。へえ、と呟いて、蒼は目を閉じた。それ以上突っ込んだことは聞いてこない。そんな蒼の距離の取り方が、小鳥には心地いい。

 ふっと日が陰り、東屋に木漏れ日がちらちらと踊った。目元に腕をかざし、眠ってしまったかのようにじっとしている蒼のしなやかな痩躯が、光と影の斑模様に染まる。

 小鳥の右手が、開いたスケッチブックの上でぴくりと動いた。

(…ん?なに、今の)

 小鳥は手を見下ろして瞠目した。けれどその時、蒼がはずみをつけて起き上がり、「よし、やるかっ」と言って大きく伸びをした。

「小鳥、悪いけどシーリアの台詞やってくれない?今日の稽古をつけた分を復習したいんだ」

「こないだは、ひどい棒読みだって笑ったじゃない」

「いつの話をしてるんだよ。相手がいないと調子でないの。ゆっくりはっきり読み上げてくれればそれでいいから、ほら、早く。9ページからね」

 小鳥はしぶしぶ台本を受け取った。手ずれがして書き込みだらけの台本だった。蒼は一つ咳ばらいをし、すっと表情を引き締めた。

「……お願い、私の大好きなロザリンド、陽気になって」

「シーリア、これでも私、精いっぱい陽気に見せているのに、それをあなたはもっと陽気になれと言うの?追放されたお父様の事をどうしたら忘れていられるのか、それを教えて下さらなければ、何か素晴らしい歓びを想い出せと言っても、それこそ無理というものよ」

「それでわかった、あなたは私があなたを愛している程、心から私を愛していてはくれないのね」

 長い台詞だなあと思いながら、小鳥はたどたどしく読む。それに対し、蒼は一度もつかえることなく、流れるような早口で、しかも情感たっぷりに応じる。既に台詞は完璧にそらんじているらしい。

 演じている時の蒼は、まさしく別人だった。しとやかに伏せた睫毛、すぼめたまま揺れる肩、甘やかな声色は気品に溢れている。細い指が、ドレスの裾をさばくように宙をひっかく。遥か昔の言葉が、彼によって命を吹き込まれ、甦る。

(この人は、本当に演じることが好きなんだなあ…)

 小鳥は思わず彼に見とれ、そう考えた。

 しばらく台詞のやりとりが続いた。つっかえて邪魔にならないよう、一生懸命に台本に目を落としていた小鳥は、ふいに自分の右手が激しく動いているのに気づいた。白いページの上で、手が踊っている。見えない色鉛筆を握っているかのように指が曲がり、目の前の少年の輪郭をなぞるように動いている。

(私…人間を、描こうとしている?あの人以外は描かないと決めたのに?)

 小鳥の背筋を、氷のような戦慄が貫いた。激しい動揺と共に吐き気が込み上げ、喉が押し潰される。

「ああ、どうしてこの世はこれ程にも茨に満ちているのでしょう、来る日も来る日も!」

 両腕を大きく広げ、よよと蒼が嘆く。けれど、それに対する応答はない。訝しげに相手の少女を見やった蒼は、次の瞬間弾かれたように飛び出した。

「小鳥?!どうした、しっかりしろ」

 くの字に折れ曲がり、ベンチから崩れ落ちようとする小鳥の身体を、蒼は抱きとめる。力を失くした少女の手から台本が落ち、地面にあたって乾いた音を立てた。

 小鳥の顔はきつく強張り、血の気が全くなかった。か細い息が異常な速さで繰り返され、全身が小刻みに震えている。真夏だというのに氷のように冷たい身体を、庇うように抱え直した蒼は、その細さと軽さに改めて息を飲んだ。

(まるで人形みたいだ)

 だが、身体に触れている薄い胸の奥で、一つの小さな心臓が破れそうな強さと速さで確かに脈打っているのを蒼は感じていた。まるで何かに必死に抗うかのようだった。

 蒼はしっかりと彼女を支えながら、深く歌うような声音で囁いた。

「小鳥、息をしろ。ゆっくりでいい、吸って、吐いて…吸って、吐いて。そう、いい子だ」

 幼子をなだめるように背中を軽く叩いてやる。乱れきった小鳥の呼吸が、少しずつ静かになってゆく。

 小鳥の震えが完全に止まり、氷のようだった身体にわずかながら温もりが戻るまで、蒼はそうしていた。ゆっくりと小鳥が身体を起こし、小さな声で謝罪を述べると、蒼はまだ歌うような声音のまま訊ねた。

「しょっちゅうこうなるのか?」

「時々…。でも、あかね野に来てからは、一度もなかったのに」

 小鳥は呟き、自分の身体を両手で抱きしめた。コントロールの効かない自分が悔しくて、惨めだと思った。

 蒼は台本を拾い上げ、汚れを払い落す。そうしてから、ベンチの上に置きっぱなしになっていた麦藁帽子をぽん、と小鳥の頭に乗せた。小鳥が見上げると、意外なほど優しい目と目が合った。

「あんたのせいじゃない。こんな炎天下に、ずっと外にいて根詰めてりゃ、具合も悪くなるさ。俺も気づけなくて悪かった…あんたがあまり丈夫じゃなさそうだって、分かってたのにな」

「そんな、蒼くんは悪くないよ。私はあなたに見とれてたんだから…本当のお姫様みたいって、思ってたの。それだけだから」

 小鳥は必死に言いつのる。それだけは、誤解されたくなかった。蒼は居心地悪そうに頬をかいた。

「ストレートな誉め言葉をどうも…だけど、しんどくなったら、次からはちゃんと言えよ。俺が無理させて練習につき合わせてるみたいじゃんか。そんな顔で我慢ばかりしてないで、泣きたい時には泣いて、嫌なものにははっきり嫌と言えばいい」

「蒼くん…」

 小鳥は、自分の頬にそっと指を滑らせてみる。じっとりと汗をまとい、固く強張っているのが分かる。

「私は、泣けないの」

 ぽつりと落とされた呟きに、蒼がゆっくりと瞬きした。どこかでのどかに、鳥が鳴いていた。

「入院してた時もしょっちゅう、泣いていいんだよって言われたわ。でももう、泣くってどうやってたのか、思い出せない。たまにこの辺が、痛くてひどい感じになるけど、外へ出て行ってはくれない」

 この辺、と言いながら、小鳥は胸をおさえる。ついさっき、彼女のそこが自分の同じ場所にもたれかかり、強く脈打っていたことを、蒼は反射的に思い出した。小鳥の言う『ひどい感じ』が、乗り移ってくるような気持ちになる。

 蒼は黙って立ち上がり、小鳥に背を向けて自分の荷物の方へ歩いて行った。そのままごそごそと鞄を探る様子を、小鳥は地面にへたりこんだまま、情けない気持ちで見つめていた。

(こんな話、きかされても困るよね。愛想つかされちゃったかな)

 あ、あった、と蒼が明るい声を上げ、笑顔で振り返った。その手に握られている物が、小鳥に差し出される。

「ほら。これ、やるよ」

「なあに?…ビー玉?とても、綺麗ね」

 思わず両手で受け取り、小鳥はそれに見入る。拳より二回りほど小さい、透明な球体は、ひんやりと冷たく固かった。日の光にかざすと、内部に虹色の光がきらめいた。

「去年『マクベス』を演じた時、魔女の水晶玉の候補になってたんだ。小さすぎるから、結局ボツになったんだけど。鞄に入れたままになってたの、今思い出した。…今日からそれが、あんたの涙だ」

「え…?」

 両手でガラス球を包みながら、小鳥は蒼を見上げた。膝を折って彼女の前にしゃがみ込み、子供に御伽噺を話して聞かせるような口調で蒼は言った。

「泣きたくても泣けない時は、それを握って色。そうしたら、胸の中の涙をそいつが吸いとって楽にしてくれる。涙を吸えば吸うほど、その水晶は美しくなる。俺からの、とっておきのおまじない」

「涙…おまじない…」

 小鳥は俯き、ガラス球をぎゅっと握りしめた。蒼の優しさが伝わってきて、どうしようもなく嬉しくて、けれど同じくらい申し訳なくて、全てが溢れだしそうになる。「…ありがとう。大切にするね」

 やっとのことで小鳥が呟くと、蒼が笑った気配がした。

「さ、落ち着いたなら、そろそろ帰ろうぜ」

「もう?まだこんなに明るいのに?」

「あれだけ具合が悪くなったんだ、今日は大人しく家で休んでた方がいいだろ。送ってくよ。久しぶりに翠さんのパンが食いたい」

 そう言いながら、蒼はさっさと自分と小鳥の鞄をまとめて肩に担いでしまった。小鳥は慌ててちいさな水晶玉をスカートのポケットにしまい、彼の後に続く。少しだけ足元がふらついたが、気分はだいぶ良くなっていた。

(不思議…本当におまじない、効いたみたい)




 ソフィアは店の裏庭で、トランペットを吹いていた。明るく伸びやかな音色が夏空へと広がってゆき、ああこれは『この素晴らしき世界』だと、小鳥はぼんやり思った。ぴんと伸びた背に豊かに流れる金髪は、ソフィアの奏でる楽器と同じ色にきらきらと輝く。

 人の気配を感じとったのか、ソフィアが吹き口に唇をあてたまま頭を動かした。色素の薄い目が、くっきりと見開かれ、小鳥と蒼を映す。

 次の瞬間、ソフィアは大事な楽器をとり落として小鳥に駆け寄り、抱きついた。

「小鳥?!一体どうしたの。何でこのスケコマシと一緒なの?」

「おい待てソフィア。半年ぶりに再会した幼馴染に、なんだその言い方は」

「半年も連絡よこさないしパンも買いに来ない幼馴染は黙ってて。小鳥、顔色が朝より悪いわ。大丈夫?何があったの?」

「えっと、ソフィア、とりあえず落ち着いて…」

 口ではそう言いながら、内心で小鳥はとても嬉しかった。痛いほどの力で小鳥の腕をつかむソフィアの手からは、本気で心配していることが伝わってきた。ため息をついて、蒼がさらりと説明した。

「過呼吸の発作を起こしたんだよ。心配だから、念のためついてきた。こいつの絵を描く場所と俺の練習場所が、最近よく被るから。信用できないなら、こいつにも聞いてくれ」

「そういう訳じゃないけど…なに、そんなに仲良しなの?あんたたち」

 蒼は黙ってひょいと肩をすくめた。ソフィアは不審そうな顔をしていたが、すぐに小鳥の方へ向き直ると、その目をじっと覗き込んだ。

「小鳥…発作が起きたの?どのくらいひどかった?今の気分はどう?」

「大したことないわ」

 小鳥は小さな声で答え、ソフィアの目をちゃんと見返した。二人にしか分からない秘密の言葉が、その瞬間交わされたようだった。

 ややあって、ソフィアはようやく肩の力を抜き、笑った。

「まあいっか。とにかく、無事に帰ってきてくれてよかったわ。蒼、ありがとうね」

「驚き桃の木山椒の木。お前が素直に礼を言うなんて、明日は槍が降るんじゃないのか」

 二人の少女の間に流れた何かを敏感に悟りつつも、蒼は茶化さずにはいられなかった。ソフィアはすっかりいつもの彼女の調子に戻り、きっと蒼をにらむ。

「あんたはちっとも変わらないわね、その減らず口。相変わらず花形女優やってるわけ?」

「まあね。俺より美しい女役も、歌が上手いやつも、残念ながらいないんで」

「こんなやつにアビキョウカンのファンが男女問わずぞろぞろくっついてるなんて、信じられないわ…」

「阿鼻叫喚って漢字で言ってみろ」

 活字を読むと頭が痛くなると日頃から豪語しているソフィアが、うっと黙り込む。蒼はふふんと得意げに笑う。遠慮も屈託もないそのやりとりに、小鳥はとうとうこらえきれず笑いだした。

 子供のように楽しげに声を上げて笑う小鳥を、ソフィアは奇跡を目の当たりにしたかのように凝視し、呟いた。

「小鳥が、笑ってる…」

「え。ちょっと、何でお前泣いてんの」

「どうしよう。すごく可愛い。うん、私、今ものすごく幸せかも」

 涙ぐんだソフィアが、小鳥を優しく抱きしめる。小鳥はひどくはにかみ、それからそっとソフィアに身体を預けて目を閉じた。

 目のやり場に困っている蒼に、ソフィアはまだ涙の滲む目で笑いかけた。

「なんかもう、色々どうでもよくなっちゃった。あんたんち、おじさんとおばさんはまだ帰ってないんでしょ。今夜は久しぶりにうちでご飯食べてきなさいよ。…母さん、母さん!蒼が来たわよ!」

 小鳥を抱えたまま、よく通る声でソフィアが呼びかけると、すぐにぱたぱたと足音がして、頬をりんごのように紅くした翠さんが姿を現した。

「あらまあ、本当だわ。蒼くん、元気だった?少し背が伸びたんじゃない」

「翠さん、ご無沙汰してます」

「よく来てくれたわね。ごめんなさい、まだ手が離せないんだけど、今夜は夕食を食べていってね。その時に、お話を聞かせて頂戴」

 照れくさそうに挨拶する蒼に顔中で笑いかけると、翠さんはまた忙しそうに店へ戻っていった。

 小鳥がトランペットを拾い上げ、ハンカチで丁寧に拭ってソフィアに渡す。ソフィアは微笑んでお礼を言い、目を細めて空を見上げた。

「暑いわね~。台所で冷たいものでも飲みましょ。あんた達がどこで何をしてたのか、もう少し詳しく聞きたいしね」

「お前は本当に俺を信用してないのな。事情聴取されるくらいなら、俺の『お気に召すまま』の朗誦をご披露してやるよ」

「またシェイクスピアを上演するの?私、『お気に召すまま』が一番好きよ!」

「私は、ソフィアのトランペットがもっと聴きたいな」

 遠慮がちに言う小鳥に、もちろん、と元気よく頷き、ソフィアは小鳥の手を引いて母屋へと歩きだす。ソフィアの手は温かく強かった。小鳥がそっと振り向くと、楽しそうにソフィアをからかう蒼が視界に入る。

(ああ、なんて賑やかで、眩しいんだろう)

 小鳥の顔に、知らず知らずのうちに笑みが浮かぶ。

 今年の夏は、暑いけれど眩しくて美しいと、そう思えた。

 

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