われんばかりの拍手はくしゅの中、

そう紹介されながら行進するのは、

低学年の生徒達。


そう実験的に生徒は高学年と低学年、

二組に分けられていた。


宇宙における適応力てきおうりょくは、

まだ成長途上せいちょうとじょうの子供達のほうが、

あるのではないかと言う実験的なこころみだった。



「ご覧下らんください。

 これから3年間、

 宇宙でのきびしい訓練くんれんに立ち向かう、

 総勢そうぜい42名の小さき勇者達です。


宇宙での滞在期間たいざいきかんは低学年、高学年をわず

3年間とさだめられています。


これは大気のない宇宙では、

直接宇宙線(放射線ほうしゃせん)の被爆ひばくにさらされるため、

厳密げんみつさだめられた規則きそくです。


コロニー内は、被爆ひばくを、

最小限におさえる設備せつびがなされていますが、

それでも地球の2倍程度の被爆はまのがれません。


それでも過去の宇宙飛行士がさらされていた、

10倍ほどの放射線の被爆量ひばくりょうくらべれば、

格段かくだんにかいぜんされています。


これまで宇宙飛行士が、

生涯宇宙しょうがいうちゅうで活動できる期間は2~3年でした。


それ以上は被爆によるガンなどの、

健康被害のリスクが格段に上がるためです。


これは今まで宇宙での研修けんしゅう前例ぜんれいがなく、

また行われなかった理由でもあります。


授業を卒業したと同時に、

宇宙に出られなくなれば意味がないからです。


これまで宇宙衛星学園うちゅうえいせいがくえんが実現しなかったのには

そう言った理由もあります。


ですがこのたび、コロニーの完成にともない、

それが可能となりました。


これが人類史初のこころみになるのは、

そう言った要因よういんからです。


人類の足は今地球の重力を離れ、

未来にむかい進み始めました。


なんにせよ今この瞬間が、

人類史じんるいしに残る分岐点ぶんきてんなのは間違まちがいありません。


我々われわれは今、

歴史の転換点てんかんてんの目撃者となったのです。


もう一度拍手で生徒達を、

送り出そうではないでしょうか」


その声と同時に鳴り止まない拍手の嵐が

無音の宇宙の中で、この区切られた空間だけに

いつまでも響き渡っていた。



真空の宇宙で、それをながめる一人の生徒、

時輪ときわ 彼方かなた感慨かんがいを覚えていた。


 

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