第7話

「由芽さんとの、最後のお別れとなります。一同、合掌」

最後の大役を果たそうとする僧侶の言葉を前に、音榴は棺が専用の機械で火の中に投入されていく様子を、ただ黙って見ていた。

悲しみと無念さが入り混じった表情を込めた顔は、少し引きつっていた。私が由芽にしてあげられること全てを、由芽にしてやっただろうか?あの子が私に望んでいたことを、1つも無視することなく叶えてあげられただろうか?そんな疑問が頭の中をよぎった。それと同時に、視界がぼやけて歪んでいく。音榴はその場にひざまづき、体中の液体という液体を全てなくしてしまうのではないかと思うくらい、大粒の涙を流し泣いてしまった。

同席していた保は、そんな音榴の背中をさすり、非常に残念です、と小声で声をかけていた。

僧侶の念仏と音榴の啜り泣く声、それに比べて小さく聞こえる火葬の音だけが、その場に残っていた。

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Ria 月島蓮 @yuuki098

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