第4話
「失礼します」
がらがら、と扉が開く音がした。
「こんにちは、お母さん。どうぞおかけになってください」
音榴は指示された通りに、丸いプラスチックと金属でできた3本の脚から成るパイプ椅子に腰掛けた。
「今日は少し、お聞きしたいことがあってですね。巡回の看護師が聞いたらしいんですがね。由芽さんが時々、りあっていう名前を仕切に呟いているらしいんです。『りあ、ありがとう。』とか『りあ、帰ろう』などと、眠りながら言っているらしいんです。お母さん、そのような名前に心当たりはないですか?」
「りあ、さんですか?さぁ、聞いたことないですね。そもそも、あの子に友達がいたなんて話も聞かないもんですから」
「そうですか。いやね、仕切に呟くもんですから、目が覚めた際にその子に会えば、体の回復が速いんじゃないかなって思ったんですが。思い当たらないですかね?」
音榴は指を顎に当て、少し考えてみたが
「りあさん…。いや、ちょっとわからないです。ごめんなさい」
思い当たらない名前に、困惑していた。
「いえいえ、大丈夫です。引き続き、由芽さんの様態は注意して観察しておくので、ご要望などあったら、なんでも言ってくださいね」
「ありがとうございます。いつも助かります」
「今から由芽さんの状態、見にいかれますか?」
「はい、少し顔だけでも見ておこうかと思います」
「分かりました」
頭を下げ部屋を出ると、病室に向かい、由芽の顔を悲しそうな表情で見つめた。由芽はまるで白雪姫のような美しい顔で深々と眠っていた。
「由芽、りあさんってどなた?お友達なの?どんな子なの?
目が覚めたらでいいから、聞かせてくれないかしら…?」
同じ間隔で鳴り続ける心電図を背に、由芽の手を握り締めながら音瑠(ねる)は質問していた。
その目からは、涙が溢れていた。
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