第150話 思い出の中の現代

 闇の王が新たに騎乗したブルーノヴァは強力だった、完全リサイクルシステムにより、無限のパワーを持つ。


 しかし、大魔王「世界に何も望まなかった者」は、まったくひるむことなく、闇の王へと向かう。


「私は……現代ではDNQで毒親だった。他人の事は気にせずに、子供には手をあげた事はないけど、無関心で否定的だった。それを敏感に感じた二人。特にアーシラトは同じ女であるために、断絶は大きくなってしまった」


 まるで独り言のように話すツクヨミは、いつもの軽さや不安定さがなく、無表情に、まるで法廷で陳述書を読むように、平坦な話し方だった。


「多少マシなバアルも高校生になって話す機会が減った。私には理解できない世間というもの。ママ友、町内会、PTA、何のために存在するかもわからない。だから私は望まなかった。いや諦めた、自分が生きのびていくこと以外は」


 大魔王の独り言にラシャプが答えた。


「なんだ……あなたも十分孤独だったのかい。そうさ世界は他人の重力で支配されている、そこでうまく動かないと、くだらない重力に絡まれて動けなくなり孤独になるのさ」


 機神と変化したブルーノヴァは巨大なエナジィ、だがそれに対する大魔王の魔力も比類なきもの。


 数分の間にらみ合う巨大な力……闇の王が動いた。

 

 ラシャプがラバーズへ全力での攻撃を指示、機神ブルーノヴァが力を発揮する。


「スキル発動! シャイン、フリーズバイト、ソニックブレード、ゲイ・ボルグ、ヘキサグラムフォース……ファニックス、鳳凰、ラーニングしたスキルを全て発動します。エナジィパワーを最大出力へ移行します」


 ラバーズがラシャプの攻撃指示を実行した直後に、ブルーノヴァの装甲が回転し、現れた主砲にエネルギーが集まる。


『超破壊兵器 シャイニングブラスト発動』


 ラシャプが光のトリガーを引くと、ブルーノヴァが真っ白に輝いた。空中から光の弾丸が降り注ぐ。床に命中した光の弾丸は爆発を繰り返していく。


「大魔王よ、どうだ。おまえの関心がない者たちの力、今は親子関係さえ転生で失いそうなおまえが、受けてみた感想はどうだ!」


 ラシャプの勝ち誇った言葉はすぐに消えた……破壊された大地に悠然と立つ者。


「馬鹿な無傷だと……こうなれば……ラバーズ、先ほどラーニングした大魔王のスキルを発動しろ!」


 ブルーノヴァは目にもとまらぬ速度で、パンチを大魔王へ打ち出したが、威力はまったくなかった。


「おかしいだろう!? ブルーノヴァが粉々に破壊された攻撃だぞ」

 粉塵が巻き上がる中で、ラシャプへ歩を進める大魔王。

「あたりまえでしょ。私の最大の必殺技はね、悪い事をした餓鬼をぶちのめす、ただの強く握られた拳なんだから……聞き分けの悪いガキは嫌いだよ!」


 底知らぬ恐怖に身を駆られた闇の王に、さらにラバーズから、絶望的な分析が伝えられた。


「戦力分析が終わりました。敵の名称……大魔王ツクヨミ。全能力オールS。戦力分析、勝率0%。即時撤退を推奨します」


「ばかなこれは機神だぞ!? 撤退? だめだ! 攻撃しろ! 最大火力。全スキルを発動しろ!」


「警告。ダメージ予想0.02%。ダメージは与えられません。攻撃を実行しますか?」

「実行しろ!」


 シャヘルの叫び声で攻撃命令が実行された。


「了解。攻撃を開始します。全ウェポンをオープン。エナジィパワーを臨界点へ。フルパワー攻撃を開始します」


 ブルーノヴァの全装甲が開いて、全てのウェポンが白い光を発した。しかし発射された光の弾は、大魔王の前で全てロストした。


「ブルーノヴァの攻撃、全弾消滅しました」

「ばかな。続けて攻撃せよ!」

「警告。エナジィパワーのダウンの為、現バージョンを維持できません。五分後にブルーノヴァはシャットダウンします」


「なに? なぜだ? どうして?」

「機体のエナジィレベルがダウンしています」

「なんでだ……最高出力でスキルを使い過ぎたか……それか旧型のバージョンアップには無理があったか」


 焦るシャヘルに、静かに話しだす大魔王ツクヨミ……現代、母を捨て世間を捨て、大きく深い「アキラメ」により、この世界で最強となった者。


「うざいと思っていた現代が少しだけ恋しい。だからテレビやマスコミやロケットなんかも作り出して気を紛らわしていたの。でもね、やっとわかった気がする。どのように思おうが、本質的には何も変わらない「私はワタシでしかない」だからね、あなたの敵ではないの。恐れないで、心に深き闇を持つ者よ」

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