第146話 黄金のドラゴンウォーリア
もう……まったく力が入らない、だが、バアルは勇者は立った。
「ここでラシャプに負けたら、世界はどうなる……立ち向かえ強敵でも」
バアルの言葉を聞いて、ラシャプが少しだけ感心してみせる。
「ほう、さすが勇者。主人公って事かい? 最後まで立っていた事は覚えていてあげるよ」
ラシャプの誉め言葉も、バアルには聞こえていない、指一本も動かせない程、負傷とエナジィが枯渇、だが、立つしかない、向かっていくしかない、バアルは勇者なのだから。
「くそ……負けたくない……でも、どうやって」
バアルの呟きに、身体のうちから、答える者がいた。
(小僧。力が欲しいか)
「誰だ?……俺の中から聞こえてくる声……アスタルト? でも、全然違う感じがする」
頭の中に響く声。
(アスタルトとマスティマの要望だ。おまえに力をやろう、例え数万、数十万、いや数億の敵と戦える力を。ただし、お前の身体は砕けるかもしれん、それでも力が所しいか?)
体の中から聞こえる声に、きっぱりと答えるバアル。
「欲しい……俺の事はかまわない!」
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十二次元上の大宇宙を航行する、十二翼の光の艦隊。その数百万を越える艦艇の中の大型の輸送船。それは非常に強固なセキュリティを備えていた。
輸送船の中心部分には、宇宙船の鋼板であるジーノ粒子で出来た、厚さ500メートルの牢獄が置かれていた。
突如鳴り響くアラーム音。
「ロック中」と表示されているディスプレイが「リリース」赤い文字の表示に変わった。
巨大な強固な牢獄の扉が空きはじめ、輸送船の乗員全体に緊急情報が流され、全員がテレポートして別の船に移動するのを待って、完全に金庫は開け放たれた。
そこに現れわれたのは、獣王アスタルトにそっくりの姿。だがの毛一本にもすさまじいエナジィが満ちている、輝くエネジィは黄金色。
アスタルト同一位相、つまり、アスタルトと実態を一緒にするが、二つの個体の一人、金狼は呟いた。
「五万年ぶりに起こされたと思ったら、ディレクトリの端も端、十二次元も下のリクエストか。まあ、マスティマの要求だし、俺の分身アスタルトも希望しているからな。それにしても耐えられるのか? 俺の力は数万分の一だとしても身体も精神も破壊されるが。ふぁああ、まあどうでもいいか」
大あくびをした金狼は、無人の輸送船の底から、遥か下層の世界を見つめた。
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闇の王ラシャプは信じられないものを見て思案していた。
目の前に立ち上がったバアルが、エナジィを増しているからだ。
しかもそのエナジィの色が問題だった。
「金色のエナジィなんて聞いたことがない……ラバーズ、データベースを確認して、この現象の原因を教えろ」
数秒の間をおいて、ラシャプが騎乗する機神のOSラバーズが返答する。
「今まで金色のエナジィが確認されたのは、一度だけです。個体としてZZ-RR99ファイナルと名付けられた個体、俗称は金狼。他の銀河の二万を越える国家を滅亡させ、天の神子の軍隊と接触、数千年の戦いの中でマスティマと、フッラがシルバーナイトとなり抑え込み、今はマスティマの艦隊に封印されている……とあります」
ラシャプがいい加減にしてほしいと、呟く。
「まだ光の獣がいるというのか。しかもこんな低次元の、一つの星に、こんなにも多く現れるとは……もしかして、僕がラグナロクを始めたから、ノーチラスを動かしたからか。そうか、予定調和の破壊を世界が拒んでいるのなら、僕はこの光の獣である、ブルーノヴァで、神の思惑さえ砕いてやる」
ラシャプの騎乗する超大型、魔道騎士、意思のある鎧の前に立ちふさがったバアルの表情が変わった。
鋭い眼光と不敵な笑みを浮かべて、インフェルノソードを肩に乗せて、まるでラシャプを挑発するように、ゆっくりと前に進む。
「何が起こったかしらないけど、面倒だな。この武器で消えてくれ。バスタードレールガン」
20メートルの巨体が動き出した、大きな城の地下室は壊れ、外が見える。
ブルーノヴァの右手が数回回転して、複数の銃身に変わった、その瞬間にガトリング方式で、複数の金属の破片が光速で、数十発打ち出された。
短い間隔で、部屋どころか、グリモア城自体が、大きく破壊されていく。
消炎と土埃が全面に立ち、城を完全に破壊した。
「素晴らしいよ。この青き機神は。基本武器だけでも世界を消せる。しかも敵の技を学習できるラーニング機能。そして自分の意思をラバーズ経由で伝えてくる」
世界を制したと闇の王が思った時、異変が起こった。
瓦礫と化したグリモア城から、立ち上がる者、バアルのドラゴンウォーリア。
纏うエネジィは金色だった。バアルが剣を高く掲げて宣言する。
「俺は黄金龍。世界を守る勇者!」
攻撃が全然、バアルに利いておらず、自分を黄金龍と名乗った事に、急ぎ情報を整理するラシャプ。
「あの攻撃で消し飛ばない? それに黄金のエネジィは金狼だけではなかったのか。そいつは今封印されて……さっきのマスティマの解除したというのは、金狼か……だが、この世界には驚異の力は持ち込めないはず……くそ、そうか依り代か! バアルのドラゴンウォーリアの体を使って、上位からの神卸を行ったのか」
ラシャプの前に立ったバアルは、金色のエナジィに包まれて、インフェルノソードは猛き燃え、六種類のエナジィを三十メートルまで、金色の炎にして巨大化する。
さっと、バアルに、横に振られたインフェルノソードは美しき、金粉のような輝きを周りに飛び散らした。
不敵な表情のバアルはいつもと違う口調で、ラシャプを評した。
「まったく、こんな小僧が光の獣ブルーノヴァを使うとは。しかも何もわかっちゃいない、その機神の力はそんなものではない……ラシャプって言ったか? まあ、俺の方も何もわかっちゃいない、小僧の身体を使うわけだから、同じようなものかな、クク」
声はバアルだったが、口調や佇まいは、十二次元上からの金狼が、ドラゴンウォーリアに憑依した神卸の状態だった。
ブルーノヴァのOSラバーズから、バアルの報告がラシャプに入る。
「……信じられません。現在、バアルが出しているエネジィの量は、この世界が許容できる最大なもので、この機神ブルーノヴァさえ越えています」
表情を固めたラシャプが頷く。
「やはり本物の金狼……黄金龍。情報をくれラバーズ」
即座に青い機神のOSが答える。
「B117恒星系銀河に突如生まれた生物であり、あくまでも個で、生殖などの分離増殖は行わず、その力と何物を破壊できないとあります。身体と黄金のエナジィにより、二つの銀河の二万を越える国と戦い、すべてを滅ぼしました。破壊は不可能と記載されており、光の獣の一つに数えられてます」
ラバーズの回答に、薄笑いを浮かべたシャヘル。
「やはり、僕が起こしたラグナロクは、十二次元も上のを旅する神にも問題があるんだな。グレンのダークナイト、イルのイザナミ、アナトのシルバーナイト、そして黄金のドラゴンウォーリア……いいだろう、邪魔できるならやってみろ!」
動き出した体長二十メートルの巨体に、この世界の最高の勇者スキルをラーニングした機神が動き始める。
「相手が黄金のドラゴンウォーリアなら、全力でいく、ラバーズ、フレームバーストをオン」
それまでゆっくりと動いていた、ブルーノヴァの姿が一瞬揺らぐと、光速へと速度を速めた。そのスピードはシルバーナイトに匹敵するもの。
通常60フレームで処理される人間の感知速度を1000倍にする、フレームバーストと呼ばれる、ブルーノヴァが内蔵の加速システム起動した。
光速で動きながら、腕のガトリングレールガンを打ち込む。
瞬きをする間に、グリモア城の大きな部屋は、四方の壁も天井も床も、砂塵とかした。
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