第133話 フッラの元へ

 アナトとアーシラトが目覚めた後も、アイネはエール寺院の診療所にいた。


 失った右腕の再生は終わっていたが、限界を越えて酷使した身体とエナジィ。

 バアルとイル、そして意外な事にアーシラトも治療に訪れて、アイネも徐々に快方へ向っていた。


 回復へ進むそんな日遅く、アイネは高熱を出した。

 心配するバアル、イル、アナト。


「アイネは大丈夫かなあ……最近は随分良くなったと思ったのに」

 バアルの心配にアナトが呟いた。

「そうね、どうしたのかな。突然意識がなくなるなんて……心配だよ」

 イルがアナトに言葉を返した。


 バアルは黙って、心配そうにアイネを見守った。


 朝方になって「ううん」アイネが目を覚ました。


「……アイネ、気づいた?」アナトがアイネを心配そうに気気遣った。

「フッラ……いやアナトですか……夢を見ていました」

「どんな夢なの? アイネ」

 イルの無邪気な笑みにアイネが答えた。

「世界を……フッラと滅ぼしましたよ」

「え?」

 驚く三人、アナト、イル、バアル。


「夢で天の神子の遺産とは何かを教えてくれました。これはマスティマ女王の記憶です。たぶんアークランドのフッラが関係あると思います」


 窓の外を見つめるアイネ。

「これが六龍王言ったラグナロク。あんな恐ろしいものが今始まるのでしょうか……」



 数日後、先走りするアイネに後ろから呼びかける声があった。


「ねえ! どこへ行くのよ、アイネ!」

 イルがもうこれ以上歩くのは無理って感じで話す。

「アークランドへ。フッラに会いに行きます。必要なら女王と話します」

 イルが遅れ気味なのに先を急ぐアイネ。


「ちょっと、ちょっと。わたしはあんた達みたいな化け物じゃないのよ! 少しは休ませてよ……てか、置いてっていいわよ!」

「だめです。一緒に来てもらいます」

 アイネが振り返り強く断言する。


「あら、最近、パーティリーダーぽいね!」

 アナトが冷やかすが、アイネの表情は変わらない。

「急がないと……大変な事が起こる気がするのです。先日見た夢は想像を越えるものでした」

 焦るアイネはいつもと様子が違う。


「大丈夫でしょう? このメンバーを見てよ!?」

 アナトが両手を広げた。その後ろには新しき力、力の意思を持つ者達。


 ・勇者で翠の竜バアル 大竜のエナジィを持つ

 ・エールの天才アイネ 魔法と剣技の両方を使う

 ・ダークナイトのグレン 義理の父アガレスの暗黒騎士を継ぐ

 ・口の悪いエール神殿の巫女イル 最高レベルの回復、防御魔法の使い手

 ・勇者アナト 蒼いエナジィを放つ最強の女子高生


 アナトがパーティメンバーを見渡して続ける。

「これで勝てない相手なんていないわよ。だいたい、六龍王も、闇の王もぶっ飛ばしたし、他に強い奴なんているの? アイネは誰と戦おうとしているの? アークランドって事はカミビトとやる気?」


 アナトの言葉にアイネは首を振る。


「今は……わかりません、夢でアークランドのフッラが出てきました。そして六龍王と戦った時に、大魔王が言いました「これは死にゲーなの。一段、強くなったと思っても、絶望的な敵が現れる」と」


「ぜんぜん意味わかんない!」

 アナトがお手上げのポーズ。


「とにかく急ぎます! みんなついてきてください、遅れないで!」

 アイネの言葉に、今度は四人全員がお手上げのポーズをした。

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