第128話 無限の再生力
バアルを狙った六龍の剣をイージスの盾が防いだ。
「おいおい、偉大な龍の王様。ちょっと急ぎすぎじゃないか。少しは待ってやろうや、勇者の調子が上がってくるまでさ」
グングニルを右手に構えるシルバーナイト、鉄壁のダゴンの赤髪が目の前で炎を吹き上げる、インフェルノソードの剣圧で揺れている。
ついに最後の戦い。
バアルの参戦を待っていたダゴンが復帰し、六龍王の剣を見て呟く。
「これはまた時代かかった骨董品を持ち出しやがったな。押さえ込んでいるだけでも、風が巻き起こる。さすがは六頭竜の王が持っていた剣だぜ。ところで勇者バアル苦戦してるのかな?」
「そんな事あるかよ! 余裕だぜ!」
地上に立つすべての騎士の頂点、何物にも屈しない鉄壁の戦士に、バアルの顔がほころぶ。
転生勇者の男の顔に、安心した顔を見てダゴンが叫ぶ。
『弾け シールドバッシュ』
ダゴンは盾スキルで赤き王を後ろへ大きく弾き飛ばす。
「フッ、頑丈だけが取り柄のシルバーナイト。それとバアル、もっと大きくならないとな!」
大きなライオンの姿をした獣王アスタルトが、バアルの頭をポンと叩いてから空中へ飛ぶ。
ダゴンに弾かれた赤き王が背中の翼を羽ばたかせ、空中で制止して持っている大剣六頭の竜に命じる。
『六竜よ放て ヘキサグラムフォース』
アスタルトへ六つの光の筋が飛ぶ、アスタルトは胸を貫かれ空中でガクっと力を失う。
「獣王!?」
バアルが思わず叫んだが、赤き王に身体を貫かれたアスタルトは、落下しながらニヤリと笑う。
「なに? ちっ! 分身か!」
呟く六龍王の後ろに三体のアスタルトが近づいた。
「ふん!」
振り向き様にインフェルノソードを横に斬ると、高温の炎の衝撃波がアスタルトを襲う。
炎に焼かれるアスタルト。だが、二体のアスタルトが燃える獣王アスタルトを越えてくる。
「どうなっている!?」
赤き王が周りに目をやると、左と右からもアスタルトが迫ってくる。
十二の姿に分身したアスタルトが放射状に散り、赤き王を中心に円上に囲んだ。
「十二の分身とは。地上は闇の国とは違う、エナジィの維持に大きな力が必要だ。量だけではなく、その質も高くないと、ここまでの実体化は出来ん。さすがだと言っておこう、獣王アスタルト」
十二の獣王が、フッと鼻で笑い、奥義を唱える。
『霞十二将』
十二のアスタルトが飛ぶ。
その先はアスタルトが作った包囲網中心の六龍王。
『獣王百烈拳』
力を込めた十二のアスタルトから、無数の拳が打ち出される。
十二のアスタルトの拳は、単独で放つものと遜色のないパワーと速さを維持しており、赤き王に、千もの打撃を与えて遙か後方へ吹き飛ばす
ふわりと地上に降りたアスタルトの元に、バアル、アガレス、ダゴンが集まる。
そこへテレポートを終え、この地に大魔王と戻ったアイネが、四人へ最上級の範囲の回復魔法を使った。
『全ての者に癒しを ラ・シャイニングヒール』
光の回復の雨が降り始め、敵味方なく全員の体力と傷が癒されていく中で、
アーシラトが叫んだ。
「大魔王ツクヨミ! 母さんは、また私の邪魔をする気なの!?」
地上に降りたアイネと大魔王に、六龍王は死線をチラリと移した。
「まさかのツクヨミの参戦か? クク、面白い」
大魔王、絶対的なものは六龍王の言葉に返事はせずとも、腕を組みその場を動かないことで、自身は参加しない事を明示した。
大魔王の参加を望めぬ状態でも、優勢に見える戦いの中で、アガレスが思わず漏らした言葉。
「今のはいい連携だったが……やはり六頭龍の王を倒すのは無理のようだな。もう一人勇者が必要だ」
アガレスが視線を向ける先で、六龍王が立ちあがる。
受けたダメージは身体に宿る、一万を越えるエナジィが修復していた。
今回の戦いで死んでいった兵士のエナジィを集め、依り代にして高次元の霊体を償還した。それが今の大竜である六龍王。どんな攻撃でも回復する再生力とエナジィを見せていた。
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