第119話 現れた男

 ドライグ隠された神殿からジャンプにより、次々と人員が追加される白銀軍団。

 その中から、銀色のインペリアルアーマを着た男が外に出てきた。


「ふーむ、眩しいなあ。ドライグって砂漠かよ」

 攻撃の姿勢をとり、集まってくる闇龍軍団を見ながら男は呟いた。


 聖槍グングニルを右手に構え、左手にはイージスの盾。

 兜はインペリアルヘルム。

 超重装備で固めた銀色に輝くその姿から、シルバーナイトと呼ばる鉄壁の戦。


 ゴース最高の放浪の騎士、赤髪のダゴンが敵に向かって走り始めた。

 周り全ての方向を埋め尽くす闇龍軍団。そのど真ん中へ、猛然とダゴンは突っ込んでいく。


「ウオ、ォオ オ オ オ オ オ オ オ!!」


 ダゴンの雄叫びで足が止まる兵士達。

 ビュンビュンビュン。高速で廻される聖槍グングニルが、音を立て前に立ちはだかる敵兵に振り下ろされる。

 周りの兵士達の首が一斉に空中へ飛んだ。


 驚く敵の兵士達のど真ん中を悠然と進むダゴン。

(アイネ待っていろ)

 大軍の一番奥の敵本陣へ、アイネの元へ向かって爆走を開始した。


・ 


 闇龍軍団の本陣で戦いは続いていたが、アイネたち三人は立っているだけで精一杯だった。

 赤龍王が前世の力を完全に取り戻し、六龍王となった今の力は強大すぎた。


 しかもアーシラトが闇龍軍団を再編して、アイネ達を集中的に攻撃し始めた。

 数万の敵兵と六龍王とアーシラトとの戦いは過酷を極めた。

 

 六龍王の拳をかわして横に飛んだアスタルトを、闇龍軍団の槍が襲う。

 ザク、ザク、ザク。十数本の槍がアスタルトを貫く。

 強引に振り払い、後ろに逃げるアスタルトの戦いで受けた傷が広がる。

 痛みで動きが落ちたアスタルトへ、六龍王の右拳がねじり込まれる。

 グシャ。嫌な音を立てて、アスタルトの身体が歪む。


「獣王!」

 思わず声を発したアガレス。

 そこへ盾を持った数百もの闇龍ナイトが押し寄せる。


「むん!」

 魂を喰らう大剣ソウルイータで、数十人の首を跳ね飛ばすアガレス。

 ザシ、ザシ、ザシ。数百の弓矢がアガレスに撃ち込まれ、剣で払えなかった矢がアガレスの身体を貫く。


「アスタルト! アガレス!」

 アイネは叫び、右手に力の循環を始めた。右手の指一本一本に炎の龍が宿る。

 アスタルトを襲う軍勢へ右手を伸ばして、アイネが叫ぶ。


『我が手に宿れ炎の龍 ファイヤファイブボム』


 アイネの手から五頭の炎龍が現れ、アスタルトを狙う敵を焼き尽くす。

 アイネの左手の指の一本ずつに、土の龍が宿る。


『我が手に宿れ土の龍 アースクラッシャー』


 アイネの五本の指が発した五頭の龍は、大地を伝わって敵へ襲いかかり、アガレスを狙う弓隊を次々と飲み込んでいく。


「ふぅ、ふぅ」

 数千の敵を相手にしたアイネが息を乱し、両手を膝に付いた。

 赤龍王。いや六龍王となった者がアイネに近づく。


「ククク。エールの麒麟児よ、そろそろ終わりかな?」

 悠然と歩いてくる六龍王に、満身創痍の姿で答えるアイネ。


「フッ。そうね……この技が最後」

 アイネの右手に光が集まる。魔法の詠唱が始まった。


「光の魔法を使うの?」

 後方にいたアーシラトが驚いて声を出す。

 アイネは火風水土の精霊魔法を使うことが多く、光闇の魔法は使った事を見た者はいなかった。

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