蘇る古代の神

第118話 蘇る六頭龍

 激しく戦い続く白銀軍団と闇龍軍団の戦いは、数時間が経っていた。

 アイネの指示は的確で、十倍を越える闇の軍団と互角に戦ってはいるが、押し込むことはできず、アーシラトの赤龍王の復活の目的を知りながらも、二人がいる本陣へは近づけないでいた。


 圧倒的な大軍を、犠牲を無視して本陣を守らせるアーシラトが、愛しそうに、本陣に横たわる赤龍王を見つめていた。


「もう少しだけ待っててね、モート。あなたを世界の王にするエナジィが集まりだしたわ」

 アーシラトが赤龍王にかけた言葉に、別の麗しき声が答える。

「世界が選んだ者。それがモートだとは限らない」


「なに!?」


 驚いて振り返ったアーシラトの瞳に、アイネの姿が映った。

 胸を張る麗しき騎士の両脇には、暗黒騎士アガレスと、獣王アスタルトの二人の猛者がつきそう。


「アイネ……どうやって、ここまで来れたの? 十万の闇龍軍団を突破した? いくらあなたでも、それは出来ないはずよ」


 ゆっくりとアーシラトに歩を進めながら、アイネが答えた。

「お前は赤き王を蘇らせる為に、この戦場で死んだ者のエナジィを導く回路を開いておく必要がある」

 アイネが剣で地面を指す。

「その回路、光のラインが集まる場所がここだ……アーシラト私は失いたくない。一万もの命をエナジィをな。例えそれが敵だとしても」


 アーシラトが笑いはじめた。


「フフ、なるほどね。エンジェルナイトに戦場を上空から監視させたわけか。私が引いたエナジィを集めるラインをたどり、本陣の位置を正確に定めた。あとはここにテレポートする為に、小さな入る隙間を空ける。白銀軍団を使ってね」


 赤龍王が寝かされた石棺から離れ、アイネへと進むアーシラトが言葉を続ける。


「位置を特定したあなたは、テレポートの魔法で一気にここへ飛んだ。でも、おかしいわ。テレポートは自分で見た場所へしか飛べないはずよね?」

 アイネとの距離を縮めるアーシラトは、ある事に気が付き自分の指で赤い唇に触れた。

「そっか、なるほど。エンジェルナイトの視界をプラグインして、ここをイメージしたのね。アイネさすがだわ」


 アイネがアーシラトを諭すように話し始めた。

「もうやめないかアーシラト。お前は操られている。闇の王は、お前の赤龍王への想いを利用している」


 アイネの目の前に立ち、暗き瞳を向けるアーシラト。

「何を言っているのか分からないよアイネ。でも、ここまでは見事だったわね。ただ、少しだけ遅かった。今ちょうど一万と十二人が死んだの」


 目を閉じたアイネ。

「しかたがない。終わらせる。ここでおまえを倒して……なに?」


 アイネは異様な気配に気が付いた。

「このエナジィは赤龍王か!? この信じられない巨大なエナジィは……。アガレス!」

 アイネの言葉より早く、アガレスが赤龍王へ向い、ソウルイータを振り下ろす。

 ガッシン。赤き王の首へ打ち込まれた大剣。しかしそれ以上はアガレスの腕に力が入らない。


「……クク。どうしたアガレス? 俺の首を切り落とすのだろう?」

 カッと目を見開いた赤龍王。

「クッ!」

 アガレスが剣を引いた。その時に獣王が叫ぶ。

『獣王百烈拳』

 数百のアスタルトの拳が、赤き王の身体を捉え粉々に吹き飛ぶ石棺。


 しかし、空中にゆらりと六頭龍の影が映る。

 その大きさ伝わる波動は、以前の赤龍王とは違う、神の戦う意思、壮大なエナジィをたたえていた。


「クッソ……ダメだ。アーシラトは、この世界の正当な神である六頭龍を蘇らせた」

 アガレスが呟く中で、アイネの右手に力の循環が始まった。

『ウォータファイブスピリット!』


 アイネの五本の指から放たれた、高圧の濁流はその場を破壊し洗い流す。

 全てが洗い流されて水蒸気が辺りを包む中で、水煙の中に六頭龍が立った。

 そのエナジィは戦いへの意思は、まさに無限の力を湛えていた。


「六頭龍の力がここまでとは思わなかった……命をかけた戦いが始まる」

 六頭龍へと変化した赤龍王モートを見たアイネは、思わず不安を口にする。

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