大陸大戦

連合軍結成

第109話 大陸の騎士団

 二人の大龍による、翠と赤、転生勇者バアルと赤龍王の戦いが行われた地に、エール騎士団が調査に向かったが、敗れた赤龍王とアーシラトの姿が消えており、その場は、ドラゴンウォーリアの戦いの凄さを見せつけるだけだった。


・ 


 エールの封印された神殿は、北東の氷に閉ざされた場所にあった。


 いつもは人などいない場所に、多くのエール王宮騎士団が集まっている。

 その中で、ひときわ大きな身体の男が、抱えるほどの大きなクリスタルを持ちあげると、その青く輝く石を神殿中央の窪みに差し込んだ。


 すると、クリスタルは光り輝き、窪みから引かれている力の循環路を通って、神殿の奥へと魔力を送り始めた。

 クリスタルからさがった男は、二メートル近い堂々とした体格と風格、現在のエール騎士団の団長サージだった。サージはしばらく奥の回路の力の輝きを見つめていた。


 突然、部屋全体に力の循環を表す魔法陣が現れた。直径二十メートルもある巨大な円。部屋は魔法陣の発する光で満たされていく。巨大なエナジィが青白く輝き、部屋の中央に集まった。


 クィィイン。


 中央から音が響き、青い光の輝きが、フッと瞬いたかと思うと一瞬で消えた。サージが膝を折って畏まり、その場に控えた。

「お待ちしておりました。先代騎士団団長……いえ、大陸連合軍司令官アイネ・クラウン」

 部屋の中央に五人の影が現れた。中心に立つ、アイネが答える。


「ご苦労さまです。かわりはないですか?」

 緊急で結成された、大陸最強の軍団スペツナズ、それは大陸の超党派で構成された軍勢であり、陽に与する者で構成される白き軍と呼ばれ、軍勢のトップ、統括者達はスペツナズと呼ばれた。今回のリーダーは、エールのアイネであった。彼女の着る白いローブは赤く縁取られ、胸には五つの角を持つ魔法陣が刺繍されていた。その上からかけられた首飾りの中央には、青き光を湛えたクリスタルが輝いている。


「はい……と言いたいところですが、幾つかご報告する事があります」

 サージの言葉を止めて、アイネが全てを見通しているかのよう答える。

「大筋は分かっています。詳細は歩きながら報告を受けましょう」


 歩きだそうとするアイネにサージが言った。

「はい。しかしその前に……」

 顔を上げてアイネの顔を見たサージ。

「アナトとバアルが深い傷を負っています。アナトは漆黒のエナジィを使用して自分の心を消滅。バアルは赤龍王との戦いで深手を負っています。なにとぞ早めにお会いください」

 サージの言葉にアイネが強い視線を送る。

「非常事態です。ひ弱な人間の勇者など捨てておいてかまいません」

「しかし、お二人ともアイネ様の友……いえ、何でもありません」


 再びサージは畏まり、その場に控えた。巨躯を持ったサージでさえ、子犬のように思えるほど、アイネのエナジィはとても強かった。

 急いで立ちあがると、サージはアイネを先導する。残りの四人のスペツナズも静かに歩き始めた。その四人のエナジィも、ツクヨミに劣らぬ迫力を持っていた。


「アイネ様。魔女アーシラトが本性を見せました。赤龍王と闇の王の残存勢力を集結させ、その数は急速に増えています。大陸の国家間の戦争になるかと」

 サージの報告を聞きながら歩くアイネが指示を出した。


「わかってます、だからこそ緊急で、大陸の連合軍を組織しなければなりません。アーシラトは最初から、狙っていたのです。すぐに出陣する必要があります、準備を整えてください。出発は明朝になります……それと伝えてほしい事があります。私も抵抗はありますが……バアルとアナトの為に呼んでください」


 アイネの願いを聞いたサージは驚く。

「あれを呼び出すのですか? わ、わかりました伝えます」

 伝える者の名を聞き、サージの顔は青ざめていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る