第99話 異形の者

 完勝してエナジィを使い切った、アイネをアーシラトが出迎えた。

「よくやったわ。アイネ」

 イルがアイネに泣きながら抱きついた。

 イルに抱きつかれ、アーシラトに褒められ、照れているアイネ。


「えっと……がんばりました」

 凄い! 喜ぶ四人その時……「何!?」イルが嫌なエナジィを感じた。


「なんだこのドス黒いエナジィは……」

 ダゴンが呟いた時、さっき消えた筈のアインが立ち上がった。


 それは人間の形はしていたが、異形な者であった。

「ヤット、オレ。私。僕。ワタシ。ワシ。は、自由になった」

 パシュ、パシュ、パシュ、アインの体に黒い風船のような黒い塊が、体中に出てきた。その黒い固まりが、大きくなってはつぶれるを繰り返す。

 黒い塊が破ける度に、体自身が大きくなっていくアイン。


「アイン、オレ、ワタシを縛りやがって」

 呟きながら、五人に徐々に迫ってくるアインだった異形の者。

 忌まわしいものを見て、震えながらイルが言った。

「あれは、アインに取りついていた、ここで死んだ人のエナジィ……何百も見えるわ」


 闇の王ラシャプが少し困ったように答えた。

「思いつきとしては、悪くなかったんだけどね。たくさんの死人のエナジィを集めて体を強化する……でも主人格のアインが消滅すると、他のエナジィが暴走してしまうんだね」


 闇の王は、アインに行った、複数の人間やモンスターのエナジィを集めて、任意の者の力を強大化させる実験を述べた、そして右手を上にあげてから地面に向けた。

 闇の王のジェスチャーで、死闘を行っていた地面に、青く輝く魔法陣が姿を現した。

 平然と実験だと言うラシャプに怒りをぶつけるイル。


「この魔法陣が複数のエナジィを集めるものなの!? そして、あんな忌まわしいものを……なんて事するの!」

 イルの抗議にもラシャプの薄笑いの表情は変わらない。

「いや、僕は手伝いをしただけさ。勝手に殺したり、殺されたりするのは君達人間だろ? そもそもこの魔法陣の実験は依頼されて……おっと、これは秘密だったかな」


 ラシャプの言葉に一瞬、アーシラトの表情が険しくなったが、異形のアインに全員の目がいっており、気が付いた者はいなかった。


 強大な真っ黒な体になったアインがイルへ近づいていく。

「ぶつぶつうるさいな。……おまえらはオレノ、ワタシタチノ一部になるんだよ!」


 たくさんの死人のエナジィ。人の魂に支配された異形の者アイン。

 パシュ、パシュ、パシュ、アインの体に黒い風船のような黒い塊が増え続ける。

 既に五メートルを越える巨大な身体になって、迫ってくる、異形な者アイン。

 その胸のあたりに、黒い穴が大きく開いた。


「!」危険を感じたイルが唱える。

『災いを払え ラ・シールドオール』


 五人の前に、最高レベルの魔法の防御壁が現れた。

 バシュバシュバシュ、アインの胸から黒い弾が打ち出された。

 弾は魔法の防御壁を貫通して、一つはイルの右肩を射抜いた。


「うっ」呻くイルを、アイネとアシラートが守る。

 自ら回復の魔法を唱えるイルが疑問を抱く。

「痛。魔法障壁を破って入ってくる。これは……金属を高速で、打ち出しているの?」

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