第95話 トライアングル

 アガレスの斬撃をギリギリでかわして、態勢を整える赤龍王の側に姿を現したアスタルト。

「なかなかだろう? おまえは強くなったが、俺たちも遊んでいたわけじゃない」

 アスタルトの言葉に頷く赤龍王。

「ふん、この打ち込みの威力。なるほど少しは期待出来るか……どれ」

 赤龍王の大剣が炎を吹き上げた。

 アガレスはとっさに火力から身を避けたが、そこに大きく円を描き、力まかせに剣を振る赤龍王。

 アガレスを衝撃波で数十メートル弾き出す。


 空中に舞い上がった獣王アスタルトは、炎をかわして、小さく自身を横に回転し赤龍王の側面からこぶしを打ち込む。


「なまいきな!」

 素早く大剣を右になぎ払う赤龍王。

 必殺の剣筋だったが、またも獣王は煙のように消えてしまう。

「こっちだ赤龍王!」

 飛ばされ地面に立ち上がらる、アガレスが背中の大剣ソウルイータ、漆黒の剣は腕の中で叫び声をあげ始める。

 アガレスは左手でソウルイータ持つと、腰に密着させそのままを居合いの構えを取る。


 アガレスは超大型剣のソウルイータを右手で居合い抜く。

 暗黒の闘気を一点に集中し、高速で技を打ち出すアガレスの必殺奥義。

『アルカナ・ソニックウェーブ』 


 強いエナジィを感じて、振り返り迎撃する赤龍王。

 強烈なアガレスの必殺技が届き、二人の剣が打ち合った後、赤龍王の剣に一筋のヒビが入る。

「クッ」赤龍王が呟く。

「ばかな……ブルトガングが砕かれるとは」


 四つの巨大なエナジィがぶつかる。

 アスタルト、アガレス、グレン、は見事なトライアングルを描き赤龍王を追い詰める。

『獣王百烈拳』

 数百のアスタトの拳が、赤龍王の身体を捉えた。

 思わず姿勢を崩した、そこへ、重騎士グレンの最強剣が撃ちこまれる。


『ソウルクラッシュ』

 衝撃波に弾かれる赤龍王に、ぴったりと、ついていくアガレスと獣王。

「この……次から次へと」

 アガレスの暗黒剣を避けながら赤龍王が呟く。


「特にアガレス。こいつのこの攻撃はやっかいだ。エンチャントされているブラックソウルが、物理では防げない」


 ガシン、獣王の力強い蹴りを、赤龍王は避けきれずに腕で止める。

 強靱な腕を覆う赤竜の鎧に、微かだが確かに傷つく。


「まったく……手加減というものを知らん奴らだな」


 赤龍王は気合を入れ、赤いエナジィを発動させ身体の周りを強化し覆った。

 レッドドラゴンのエナジィで強化された鎧と身体、これでいかに強力な攻撃でも、赤龍王を傷さえつける事ができなないはずだった。

 しかし獣王と暗黒騎士そして重騎士の攻撃は、少しずつだがダメージを与えていく。


 三人の強者の一騎当千の力は、赤龍王さえ防ぐ事は出来なかった。


「邪魔だ小僧!」

 グレンは赤龍王が放った右足の蹴りを食らうが、大地に踏ん張り食い下がる。

「こっちだ!」

 逆に斬りかかったグレンが肩で赤龍王を弾き飛ばす。

 数メートル押し下げられ、嬉しそうに笑う赤龍王。

「アスタルト……いい、確かにいい線いってる、おまえらの戦いは良く出来ている」

 獣王が答えた。

「そうだろ? いい線いってるだろ?」


 チラッとグレンを見た赤龍王は、アスタルトに頷く。


「そうだな。ただ……」

 大地を蹴って空中へ飛び上がる赤龍王。

「ちぃ」予感が走ったアスタルトが、赤龍王を止めようと空中へ飛ぶ。

「俺の力はこんなものではない……そして早すぎたな。アガレスの息子グレン……強敵との実戦に慣れていない!」


 空中で全身に竜のエナジィを最大まで込めた赤龍王は、衝撃破で近づいたアスタルトが吹き飛ばす。

 身体から無限の六頭龍のエナジィが吹きだし、徐々にその姿を変える赤龍王。

 鎧のように竜の鱗が身体を覆い始め、背中には真紅の翼が姿を現す。


「第三形態だと!?」

 アガレスが竜の姿に変化した赤龍王の姿に呟く。

 空中で竜人へと変化した赤龍王は視線を獲物に移す。


「まずはお前達の弱点から消そう」

 グレンを目標にした赤龍王の身体が空中で消えた。

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