第86話 パーティー結成

 ダゴンがアーシラトの勇者論に相槌をうつ。

「そうだな十分だ。アナトの資質は二年間も一緒にいた俺が保証する。それにしても……相変わらずだなアーシラト」


「フフ、あなたもね、ダゴン」

 ダゴンの言葉に微笑みで返すアーシラト。

「なんか、あやしくない? この人たち」

 アナトが首を傾げる「確かに」同意したイルとバアル。


「え、え?。何が怪しいのかしら」

「前に戦った事あるじゃないか、アナト」

 慌てるアーシラトとダゴン。


「もしかしたら……」アナトが人差し指を鼻に充てて目をつぶって考える。

「……このスケベおやじに、やられちゃったとか?」


「きゃあ~!! その話は詳しく聞きたいわ!」

 イルは大いに喜ぶが、対照的に真剣な顔になったアイネ。

「アーシラトあなたは不埒な輩だったのですか。赤龍王が可哀そうだと思いませんか」

「まだ、あたまがガンガンする。なんでだろ?」呟くバアル。


 力への意思。

 世界を託す四人に、顔を見合わせてがっかりするダゴンとアーシラト。


「はぁ~~この世界の未来をこいつらに任せて大丈夫なのだろうか……」

「奇遇ね。私も少し不安になったわ……ふぅう、お互い、これからも苦労しそうね」

 大人二人はため息をついた。


 闇の国レイス 深淵部への道……さて、アナトとダゴンと共に行く事になった総勢六名のパーティ。


 ダゴン(前衛 騎士)バアル(前衛 竜騎士)アナト(前衛 勇者)

 アイネ(中衛 宮廷騎士)

 アーシラト(後衛 魔法使)イル(後衛 巫女)


「いつのまにか集まっている……これはやはりあの方の計画どおり。そしてわたしの計画も……」

 アーシラトが一人呟く。

 六人はレイスの森を抜け、その深淵部を目指している。

 アーシラトが望む赤龍王と戦うにあたって必要なものを得る為に。



 アナトとダゴンが合流してイルも元気になり、さらにダンジョンの奥へと進むパーティー。

「そーいえばさぁ、最近モンスターとか見かけなくなったよね」

 アナトのおかげで元気になったイルが言った。

「もう、深淵に近いんでしょう?」

 横を歩くイルへ視線を移したアナト。

「そうか! じゃあもう少しだよね!」

 元気が出たといえ、逆属性の闇の世界。

 イルの白と迷宮の黒のエナジィは相性が悪い。

 イルは目的が知らされていない、アーシラトが提案した旅は終わらせたかった。


「二週間になるのよねぇ。男どもはいいけど、可憐な女子にはちょっときついよね」

 チラ、とアナトとアーシラトを見たイル。

 まったく弱っていない二人を見てガッカリ感が半端ない。

「はぁーー。可憐なのはわたしだけかぁ」


「イル、それはどういう事?」

 アナトと、アーシラトが歩みを止める。

 イルが言いにくそうに口を開く。

「だってアナトはこんな所で野宿が出来る野生児だし。アーシラトにいたっては酸いも甘いも分かった熟年……」


「なんですって! わたしも最初は普通の女の子だったわよ!」

 アナトとアーシラトが同時にイルに反意を見せる。


 しかしダゴンはアクビをしながら言った。 

「ふぁ~~。確かにこの辺りのモンスターは、野生児が皆殺しにしてるからな。モンスターが怯えてるらしいよ。デーモンより凶暴ってさ」

「え? 皆殺しって……この辺のモンスターって百や二百の数じゃないだろ?」

 ダゴンの言葉に驚くバアル。

「へ? そうですか? あーーお腹が減りますね」

 人の話はまったく聞いてないアイネ。

「あん? なんだって」

 アナトが目標を変え、ツカツカとダゴンへ向う。


「凶暴で恐れられているって、いったい誰の事じゃあ~〜!!」

 アナトが大きな声を出すと、ダゴンが耳を小指で掻きながら呟いた。

「独り言が妙にでかい。悪口だけには耳がいい。この二点はアナトの特技だな」

 ビュン、アナトの大剣がダゴンの頭をかすった。


「おいおいアナト、居合い抜きで両手剣を放つなよ! 簡単にアガレスみたいな事しやがって。威力は段違いだが、速度はなかなかだな」

「何を変な感心してるの? アガレス? 誰?」

 アナトがプンスカ怒りながら、ダゴンに聞くとそっかと言葉を返す黄金の騎士。

「あーそうか、アナトは知らないか。暗黒騎士アガレスは、大魔王、赤龍王、獣王、魔女アーシラトと並ぶくらい有名だぞ」

「ふーん、そうなの? で、結構に有名なナイトのダゴンさん。堅そうだし、無名なあたしは全力であたらなくちゃね!」


 アナトの右手の甲に魔方陣が浮き出し回転を始めた。


「うぁあ、今度は魔法? 第二波が来る?」

 逃げだすダゴンを追いかけるアナト。

「まて! このスケベおやじ!」

「待てるかーー!」

「いっけー!」魔方陣が光り輝きアナトが叫ぶ。


『光の散弾 ラ・フォースビット』

 アナトから光の弾丸が打ち出され、チュドンンン、爆風が周りに広がった。

 危険を察知して距離を取っていた、アーシラトとバアルの前方で爆発が続いて起る。


「ほんとに仲がいいわのねぇ……うらやましいわ」

 微笑むアーシラトに懐疑的なバアル。

「……そいう問題か? この辺一帯が吹っ飛んでいるぞ」

 無数のクレーターが出現した大地を見る。

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