転生勇者の修行
第70話 赤龍王と魔女
……竜の国ドライグの古き神殿……
漆黒の闇の中、一つの小さい光が進んでいく。
揺れる小さな炎、それはロウソクの光であった。
小さな光は階段を登り、その先にある通路の突き当りで止まった。
この神殿の中で一番高い場所にある部屋「六竜の心臓」と呼ばれる小さな扉を開けた。
部屋の中には、窓からの微かな月の明かりと、夜の匂いが入ってくる。
探しているものが、窓の近くにいるのを、魔道士は気がついた。
手を伸ばし軽く触れた。
目を開け、身体を起こす赤龍王。
肩に置かれた小さな細い手を握り、魔道士に言った。
「もう、こんな時間か……様子を見に来たのか?アーシラト」
アーシラトと呼ばれた魔道士が頷いた。
「お帰りが遅いので……」
一歩下がり壁の方を向いたアーシラト。
身長は167センチ、ヨーロッパ人としては低いが日本人としては高め。
ローブの下に着ている服はジプシーレッド色のドレス。
アーシラトはロウソクの光を、背伸びをして部屋のランプに移す。
ランプに手を伸ばす小さな魔道士に、窓から外を見ながら赤龍王が語りかける。
「こちらの世界で力を使うと、ダメージが思ったより大きい」
アーシラトは自分が持っているロウソクを消して、赤龍王の側に立った。
「はい。王はまだ、完全な状態ではないので……エナジィを使うと体力も一緒に消耗してしまいます」
「ふむ……原始的で効率が悪いな。人間の身体は」
赤龍王にアーシラトは頷く。
「はい……でも人間は計算上のパワーだけではなく、限界以上のエナジィを発揮する時があります。あり得ない現象です」
今度は赤龍王がアーシラトに頷く。
「危険に遭遇したり愛する者が倒れた場合、限界を越えた力を出す。だから、オレはこの世界に戻ってきた。遥か昔もオレは王だった。そして無敵だと思っていた」
「はい。この世界の数次元上の世界で、神人と戦いました……でも」
瞳を伏せて、そこで言葉を止めたアーシラト。
その後は赤龍王が続けた。
「そうだ……神の身体でオレは負けた。だから今度は勝つこの竜の身体でな」
アーシラトがクロークのフードを脱いだ。
瞳はアンダルシアの色であるモスグリーン、髪は黒色で腰より長いがきっちりと束ねていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます