第69話 青い流星

「えっぃぃ!」近づいた敵に、その巨大な刃先を疾走させたアナト。

 ザッシュ、ザッシ、ザッシュ。右に払って一匹、左に払って二匹、正面を縦に一撃。

アナトが放った魔法シャインで傷ついたオウガにトドメを刺していく。


「ウォオオオオ」叫び声をあげて側面から近づいたオウガの横になぎ払った巨大な斧が、前方を見つめるアナトの頭部を襲う。

 スッと身体を沈めると、アナトの数本の銀髪を切り落とした巨大な刃は反れた。

 オウガの腕を左手を掴んで頭から投げ落とすアナト。


 可変式戦闘モード『アドホック』は、アナトが学んだ勇者の戦い方だ。

 利き手である右手には剣を持ち、左手にはあえて盾を装備しない。

 敵の打撃はアクセサリーである指輪と腕輪で受け流す。

 自由になった左手は、必要に応じて、投げ・魔法・打撃など自由に戦いにあわせ変化させる。


 アナトが右手に持つ特別製の大剣の重原子の剣『昴』

 アクチノイド鉱石でつくられた超重量の剣だ。

 アナトは百キロを越える昴を、軽々と右手だけで振り回す。

 その超重量の為に、片手でオウガの両手持ちの重い武器と打ちあっても、まったく力負けしない。


  アナトはエナジィ(闘気)を消費しステータスを大幅に強化していた。

 戦闘中アナトが蒼い光に包まれるのは、力・防御・速度・魔法力にエナジィを代謝して、強化しているからだ。全開でエナジィを放出したアナトは、無敵の勇者の力を得る。


「やはり勇者。大したものだ」

 蒼く輝く流星となり、自由に疾走するアナトの姿にダゴンが呟いた。


 もはや、大地に立っているオウガは一匹もいなかった。


「一分……で全滅だと……」

 一人残ったアークデーモンがあまりの戦果に驚嘆していた。

 そして自分に近づいてくる人間の勇者、アナトに恐怖し後ろに下がり始める。


「その蒼い瞳。エナジィの輝き。光の魔法……おまえは何者なんだ?」

 後ずさるアークデーモンとの間合いを、どんどん詰めていくアナト。

「美少女。女子高生。そして……あんたを殺すもの」

 後ろに退きながら、アークデーモンは急いで魔法を詠唱した。


『大地を焼き敵を燃やし尽くせ ラ・メギド……』


 ブン。アナトが大剣をアークデーモンの頭上で一回転させた。

 ザシュン。アナトはアークデーモンの詠唱が終わる前に、その首を切り落とした。


「あなたの首はわたしの部屋には飾れないな……綺麗じゃないから」

 勇者の大剣の昴を振り、モンスターの血を払ったアナト。

 ダゴンが感想を口にした。


「強大な戦う意思である蒼いエナジィが生み出す流星……美しくで圧倒的な戦闘力。本当に成長した」


 ダゴンの言葉に振り向いたアナトの瞳は、深く蒼く、勇者のエナジィで輝いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る