第68話 アナトの成長
「どうしてくれる? オジサンだと……? クク、そうだな、嬢ちゃんの身体はバラバラにしてやろう。その綺麗な顔は記念に儂が貰って部屋に飾ってやるよ。その蒼い瞳はさぞかしいい装飾になるだろう。バラバラにした身体は……山分けかな?」
アークデーモンが右手を高く挙げ、それを合図に巨大なオウガ達が集まってきた。
人間を遙かに凌駕する巨体は強靭で、その性格は凶暴で残忍、人の生肉を食べると言われるモンスターであるオウガ。手にした巨大な超重量級のハンマーを振り上げアナトに襲いかかった。
ガチャン。アナトは左手のリングで軽くオウガの攻撃を受け止める。
華奢な細い腕で、自慢のハンマーを簡単に受け止めて見せたアナトに、驚くオウガを見ながら、右手で数を数え出すアナト。
「一、二、三……なんだ、たった十二匹なの?」
二、三回首を振って落胆の色を見せたアナトは、すぅーっと大きく息を吸い込むと、周囲に響く大きな声を出した。
「まとめて相手してあげる。さあ、かかってきな!」
アナトの気合いを合図にその場が動いた。
最初に動いたのはダゴン。一番近くのオウガの足を槍で弾く。ドドンと巨大なオウガが地面に倒れ込む。その胸にグングニルを突きさした。
アナトの方を見ていたオウガ達は、後ろからの先制攻撃に振り返り、ダゴンに向かう。オウガ達は各々が手にした巨大な武器で、ダゴンに集中攻撃をし始める。
ヒュ、ヒュン、ヒュウン。高速で槍が回転する。
ダゴンは嵐のようなオウガ達の殴打を槍の旋風で防ぎ、群れの中を突き進む。
ダゴンへ連続する強烈な攻撃に破壊力のあるオウガのハンマーと斧は、ダゴンの槍の回転力と突進力によって力の方向を曲げられ力を削がれてしまう。
一匹のオウガの斧がダゴンの槍の回転で弾かれ、オウガは態勢を前に崩した。
その瞬間を見逃さず、ダゴンは一気に槍を突く。
胸を貫かれたオウガの緑色の巨体が地面に仰向けに倒れた。
「これで二匹目。あと十匹か、アナト? おや……、ふっ、なるほど勇者様は、少しは真面目にやる気のようだな……八つ当たり気味だけどな、フフ」
ダゴンには、アナトの身体から蒼い光が蒸気のように放ち始めるのが見えた。
初めてゴースに訪れた二年前のアナトと比べて、戦いの意思力である勇者の証の蒼いエナジィは、大きく成長していた。
もはや身に纏うのではなく爆発のように一気に噴出する、戦いへの意思。アナトの蒼いエナジィ。
「あんたちの数えるのが面倒……一気にいくよ!」
アナトの手に、魔方陣が浮き上がり、身体に力の循環が始まる。
手の甲には魔法陣が精密に描かれていき、回転を始めると、勇者のである、蒼いエナジィの力の循環が完了する。
『全ての敵を打ち消せ ラ・シャイン』
光の魔法、シャインが発動した。質量のある光の雨が辺り一帯に降り注ぐ。
「ぐぉおおおおおお……」天から降り注ぐ光の雨が、オウガ達の身体を突き抜けていく。
「おいおい、俺を忘れてる……あぶねーーな!」
一気に放出された勇者のエナジィは、敵味方関係なく降り注ぎ、慌てたダゴンは槍を頭上で回転させ光の雨を弾いた。
「こらーー! ア・ナ・ト! おれにも八つ当たりかよ!」
文句を言うダゴンには目もくれず、アナトが駆けだす。
光の雨に貫かれもがくオウガに近づいたアナトは、背中に背負った大剣を右手で引き抜いた。それは小柄なアナトには不自然な程に大きく、そして無骨な剣だった。
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