第57話 転移の魔法陣
巨大な悪魔のような姿のアークデーモンが近づいてきた。
「準備が出来たぞ」
「えーと、ありがとう……おじさん」
あたしの言葉にアークデーモンは、悪魔のような顔を引きつらせた。
「うああ、あたしなんかダメな事言ったかな」
あたしが焦っていると、ナメコがため息をついて教えてくれた。
「あんたが、おじさんとか言ったから喜んでいるのよ。性格は別にして、可愛い勇者に親しげに呼ばれたら悪い気はしないでしょ?」
「そういう事か……てっきり怒っているかと」
あたしも頭を掻きながら、アークデーモンのおじさんに笑いかけた。
「エールに飛ぶのは一人だけにしてもらう。その後この転移の神殿は、エナジィを蓄えるために使用出来なくなる」
「どれくらいの時間使えなくなるの?アークおじさん」
「アークおじさん!?……フフ」
どうしてもあたしには、怒っているようにしか見えない笑い顔。
「そうだな、二年くらいかな」
「二年! 長い!」
「だから後は一人で頑張れよ勇者……そんな感じかな?」
ナメコの言葉にビビるあたし。
「うはあ、とても心配になってきたよ」
ナメコがあたしの肩に手を置いた。
「エールは屈強な騎士団が守る平和な街。だから心配いらない……はず」
「はず……って、また、そんないい加減な……」
「大丈夫だって……あははは……」
ナメコが大笑い。
「笑い事じゃないわよ!」
「じゃあ、すまんがジャンプをお願いする。守り人よ」
ナメコの言葉に頷いたアークおじさん。
側に置いていてあった、抱えるほど大きなクリスタルを持ちあげた。
「これがジャンプに必要なエナジィを蓄えた石だ」
青色に輝くクリスタルを見てあたしは呟いた。
「二年分をあたし一人で使うのか……」
アークおじさんが、輝くクリスタルを神殿中央の窪みに差し込んだ。
その時クリスタルは光り輝く。
壁や床に引かれているラインを通って、神殿の奥にある回路に魔力を送り始めた。
突然、部屋全体に力の循環を表す魔法陣が現れた。
直径二十メートルもある巨大な円。
部屋は魔法陣の発する光で青白く輝いた。
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