第9話 ロケットはゴースへ
どかーーーん!
大魔王の攻撃は魔法が主だが、実は素手で殴った方が威力がある。
俺がアジト(自宅)で寝ていると、たたき起こす為に扉をグーで破壊する。
その時と同じ衝撃を俺は受けていた。
……強烈な衝撃で意識を失ったようだった。
目覚めた俺は中釣り状態で、だんだん意識がはっきりして今を把握できた。
「あの野郎! ラシャプめマジで突き刺しやがった!」
大魔王と獣王と元大魔王の策略でロケットで、ゴース公国に飛ばされたが、頭からどっかに突き刺さっているみたい。
「もお~~さ~~。一応は俺は勇者なんだからさあ~~。扱いが雑過ぎないかあ~~」
心の声が漏れたので、横にいる獣王に聞かれたと思い「そう思わない?」と相槌を期待してみる。
「うん? あれ? いねーーじゃん! どこ行ったアスタルト!」
ひっくり返ったロケットのパイロット室には、俺だけで獣王の姿は見えなかった。
「獣王はどうしたんだろう? あの衝撃だとさすがに屈強な体でも……うん? なんか書いてある」
アスタルトが座っていたシートの背面を、宙づりのままで見つめると紙が貼ってあった。
”散歩してくるな。アディオス!”
「散歩? どうやって脱出したんだ? さかさまでこの丈夫なシートベルトに絡まれて動けないのに」
獣王の心配をしていて大事なことに気が付いた。
「てか、俺を救出しろよ!」
がっちり食い込むベルトを外そうとするが、身動き一つできん。
「俺は一応主人公ぽいのにずっと寝たきりで動かいないとか。期待して動物園へ行ったらパンダが寝ていてガッカリするぞ」
誰に言っているかわからないが、とりあえずなんとかしよう、そうだダマスカスの小剣アレクサンドリアなら切れる。
だが、宙吊りで体重が、めいいっぱい、かかっているので腰の剣は抜けそうもない。
「困ったぞ。アスタルトはいつ戻ってくる……あいつは俺を忘れている可能性が高い……記憶力がミスターGなみだから」
とにかくもがき、大声で助けを呼ぶが返事などない。
「まあね、そうだろうね。ハイファンタジーの世界観に巨大な赤いロケットがさかさまに刺さっていたら、普通は近づかないだろうなあ。いやいや諦めてどうする!」
視線を動かすとロケットの出入り口は閉じられていた。
「扉も空いてないのかあ。外まで俺の声は届かないだろうし、開け方を知っている人間も……はぁ可能性低すぎ」
宙吊りになりながらでも体に変調をもたらせないのは、さすが勇者の身体でチート済みなのだろう。
妙な感心をしながら助けを求めるが、だんだんあきらめの気持ちが強くなった時に、ふいに声がした。
しかも俺の耳元に直接。
「こんにちは。どうしましたか?」
「うぁビックリした! え、? 誰? 」
何の気配もなくここに入ってきた。声からすると若い女性らしいが頭を向けられない。
「えーーと、どうやってここに入ったの? いや、そんな事より助けてください」
俺の言葉の後少したってから答えが耳元にあった。
「あーーこれってプレイじゃないのですね。マニアックだなと感心していました」
俺は動けない体でもがき全身で否定する。
「ないない! なんとかしてくれ!」
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