第4話 癖がありすぎる姉

 タンタン、タタ、タ、タタン

 ラテンのリズムに合わせて奏でるのは、靴が床を打つ切れのよい音、踊り、歌と会わせた協奏曲。


 身長は167センチ、ヨーロッパ人としては低いが日本人としては高め。

 それもシューズはフラメンコシューズで硬質で高いヒールがついている。

 着ている服はジプシーレッド色のドレス。

 アバニコ(扇子)華麗に身体を走らせド派手な踊りを見せている。

 瞳はアンダルシアの色であるモスグリーン、髪は黒色で腰より長いがきっちりと束ねている。


「オ レ !]

 パン、最後の手を打つ動作でフラメンコダンスを止めた姉は、非常に邪魔な表情で俺を見た。


「ふぅ、何の用なの。ヤバイくらい邪魔なんだけど」

 ジロリ、姉の言葉と姿に悪意と妖気しか感じない俺は黙って、実の癖が強い姉に警戒しながら近づく。

 姉は転生した時は18歳だったが、あえてなのか28~30歳の外見を見せている。


 見かけは非常に妖艶な姉だが普通の人間には気がつかないが、すさまじい妖気を放出している。


 しかも姉はアストラルボディ。

 つまり実体は別の空間にあり、物理攻撃も母である大魔王の攻撃魔力にさえ耐性が馬鹿高い。


「バアル(俺の転生名)それ以上ちかづくな」

 右手をつきだし俺を部屋の入口で留めるアーシラト(姉)

「そうだな……それでいい。大魔王の情報はおまえの小剣をよこせ」


(魔王を倒して俺が名剣を手にれた事は調査済みか。さすが姉)

 姉のアーシラトの趣味は策略。情報戦にも長けている。力で押し切る母ツクヨミとは正反対だ。


「それにしても」この部屋の魔香は頭の芯をしびれさせるような刺激を俺に与えてくる。

「すまん、これはやれないが、教えてくれこの国の騒ぎはなんだ?」


 アーシラトは俺の言葉に「ケチ臭い」と呟きしょうが無い「貸し」と簡単だが十分な説明をする。


「先週の事だ。大魔王が花見中にたまたま通りかかった、ゴース王国の兵士を燃やしたそうだ。その暴挙を止める兵士も二千こんがりとな」


 うちの母親はなんで他国へ行っているのか? しかも因縁じゃなくて燃やしただあ?

「あのやろ~~やっぱろくでもない!」


 姉の部屋から怒り急いで出た俺には、後ろからかけられた事態の本質の言葉には気がつかなかった。


「……表向きはだ。我々の母親のツクヨミの事件は口実さ。ジパングとゴースが事を構え大きく軍勢が動くのには深い策略が存在する……バアル。もう聞こえないか。まあ、その方が進めやすい」


 大妖怪は閉められたドアに向かって凍り付くような笑みを浮かべた。



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