第3話 爆炎と冷たいドアノブ

 戦争になりそうな今、早く原因(母のせいだと思う)を姉から聞き出そうと、俺が二階への階段を上りかけた時後ろから飛んできたもの。

俺の目の前の柱に柄の部分まで深々と刺さった牛刀。

もちろん母ツクヨミが本気で放った一投で、俺の首に一直線の血の筋がついた。


「てめえこのばばあ! 何しやがる! 転生でうまく幼女になりやがったが、おまえの本当の年は38歳。ア・ラ・フォーなんだよ! うん!?」

 

 部屋に巨大な気球が出現したように強い圧迫と熱を感じた。


「バアル(俺の転生名)私の年に触れるのは厳禁だったはずよね」

 大魔王の人差し指の上で巨大な火の玉が回っていた。

 一瞬で自分の立場を分からせる圧倒的な魔力に俺はめちゃ焦る。

 あんなものここで爆発されたら、今日の俺の寝床が無くなっちまう。

 説得を試みよう。


「まて! おまえ、いきなりメラゾーマとか家の中で使ったら危険すぎるだろう? ちょっと冷静になれ」

 自分の指先の巨大な炎の玉を見ていた大魔王がつぶやく。

「メラゾーマ? これは……」

 火球を俺の方に放った母。

「これは……メラだ」

 俺は反射的にリビングの端に飛び時間を稼ぐために距離をとった。

 まだHPもMPも回復してないがここは賭けるしかない。


 俺は腰にさした小ぶりな剣を抜き放つ。この剣は先日倒した魔王の遺品でかなりの名刀。

 その名はアレクサンドリア。

 自分の竜力を一気に上げて聖剣アレクサンドリアにドラニックオーラを注入する。

 「エンチャント」勇者の俺が持つ動的スキル。武器に特殊な属性を与えることが出来る。

 今回は風をエンチャントし目の前の火の玉……てか、もしFFでVRがあったらボムがでかくなるとは、こんなに怖いことかと連想しちまった。


 ふわふわと距離を詰めてくる火球に俺は斬りかかる、まずは十字にその後はできるだけ細かく、そして最後に火球の中心の信管のような魔力の芯を切り抜いた。


「ふう。なんとか助かったな」

 空中で切れ切れになっていく火球を見ながら安堵する。

「おい。年には触れないから漫画みたいなことはやめろ!」

 「あれ? もう終わり」物足りなさそうな母に忠告して二階に登った。


 姉の部屋の前で立ち止まる。普通のドアだがなにか黒い霧のようなものが隙間から這い出てくる。

 一瞬、恐怖で手が止まったが大魔王のせいでこの国が戦闘状態になっている。

「なんとかしなければ」

 俺は冷たいドアノブを回して姉の部屋に入った。

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