第2話 大魔王とテレビジョン
一階のリビング、まあ十畳くらいの小さなものだが所有権は大魔王にある。
四つ席がある小さな食事用のテーブルには既に魔王宅では常食である”でっかい牛肉”が巨大な鉄の上でジュウジュウ焼かれている。
「今日のは一段とでかいな」
俺のかすかなため息も聞き逃さない母(人間の二兆倍まで聴力を上げられるらしい)振り返ってニコリと笑った。
その姿はレザーのボンテージで二つにセパレートされたブラトップとフレアミニスカート。
色はブラック。細くて雪のように真っ白な腕で一頭分の肉を持ち上げている。
両脚は血管が浮き出るような白く艶やかな素足に厚底のショートのヒールで、意外とムッチリ。
背中には小悪魔のかわいい羽が生えている……真っ黒だが。
「今日はコストコに買い出しにいったから。みんな育ち盛りだから大人買いしたの」
俺は肉の総量を見てどうやって持ってきたのか疑問だった。
「なあ、これって肉2トンはあるんじゃね? 良く運べたよな」
今は前を向いてジュウジュウ肉を恐竜が焼けそうなオーブンレンジで焼いてるサキュバス姿の母が答える。
「ああ、獣王アスタルトが寄ったので買い物頼んだのよ」
納得がいった、獣王と呼ばれる古代の荒ぶる神は、JLTV(最新軍用車)を常用しているからだ。牛十頭とサーモパリック爆薬10トンは常備していると言っていたっけ。
肉については納得がいったが、もう一つ大きな疑問が俺の目の前にあった。
「あのさ、この世界にテレビジョンなんて機械あったっけ?」
まあ、獣王が乗っている車もおかしいし爆薬も現代のもの。それは母親のせいなのだがもしかしてこれもか? 俺の問いに「また」 みたいな感じで振りかえる母。
幼女姿はかなりいけている。日々の行いはとんでもないが。
「不便だから作ってみたの。テレビってあるとうるさいけどないと寂しくない?」
やっぱり、と頭を抱えた。
たしかにながら作業にはテレビはあってもいいが魔力の無駄使いも甚だしい。
これからは注意して母がこの異世界の世界観を破壊するものを作らせないようにしよう。
「なあ、ここ中世ぽい世界観だから、あんまり現代のものを持ち込むのはどうかと……てか、なんでこんなニュースやってるの?」
隣国のゴース・デフェンダーズ王国が俺のアジトのあるジパング・ジャスティスを攻撃していた。
軍の数は五万!?
ジパングの王である徳川光圀は十万の兵の編成にかかっているとニュースで伝えていた。
うーーん。このテレビや放送関係の機材や人や番組も魔力の無駄遣いだろうなあ……と思いながら母に問う。
「世界観か崩れるからさあ。ところでなんで戦争になっているんだ?」
クク、一瞬肩を振るわせて、笑ったように見えた母は今度は振り向かず「さあ?」と短く答えた。
転生してから、くだらないが世界が滅ぶような悪戯を起こしてきた、完全に母はなんかやっているが、これ以上聞こうにも俺の戦闘力では大魔王である母の巨大な魔力には適わない。
おれは食いかけの5キロのステーキを置き、席を立ち二階を目指す。
二階には二つの部屋。
一つは俺そしてもう一つは姉用。
姉はこの世界で大妖怪に転生。
元々の真っ黒な性格が功を奏して、策略、暗殺、諜報など裏の面では知らぬ者がいない第一人者。
二階から感じるただならぬ妖気の元大妖怪アーシラト。
ゴクリ、恐怖が俺をこの場に留めようとするが二階への階段へと歩を進める。
姉にこの騒ぎの理由を聞くためだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます