階段から響く足音 遠くからの君の声

恋とは何か

　時はさかのぼって。

　恋とは何か。

　普通はどういうことを言うのだろうか。

　好きになる理由とは。付き合うとは。

　告白しようと考えた僕だが、未だそういうことを悩んでいた。自分が彼女を好きになった理由が正しいのかわからない。

　付き合っている人たちは何を考えて告白したのだろうか。

　まあ、身近にそんな人はいないが。

　自分の中で唯一思い浮かんだ、彼女を好きになった理由が『自分ができないことができる』という『憧れ』と『彼女が美人だった』という『一目惚れ』だった。

　彼女は部活を頑張り、そして今は生徒会副会長をしている。勉強は普通らしい。

　彼女は自分のできることを精一杯やっている。

　それに比べ自分は好きなことにしか真面目にやっていない。部活や得意教科とか。

　生徒会なんてやる気さえ起きない。

　僕は、したいこととしなければいけないことはきちんとするが、しなくても問題ないことには全くと言っていいほどやる気が出ない。宿題や部活は真面目にやるよ。

　けど、彼女はそれに足して、誰かの役に立つと判断したものにもやる気を出す。

　僕は自分のために行動するが、彼女は相手のことを第一に考えて行動する。

　そこが僕と彼女の違いだ。

　だから僕は、自分のできないことができる彼女を憧れる。

　いつも彼女みたいになりたいと思っている。

　最近は僕がしなくても問題ない、学校のトイレのスリッパ並べをするようにしている。

　これが当たり前にできる人から見たら、してないの？　っていうセリフが返っていそうだ。

　だが、それはそんなことさえできない僕の第一歩だった。

　やり続けているとなんか達成感がある。散らかっている弟の部屋を時間を掛けて掃除した後のように。

　時々考えることがある。自分が彼女のように相手を思いやる気持ちを身につけて行動できるようになったら、僕の彼女への気持ちはどうなるのだろうか。

　結局その答えが出せないまま、僕は彼女に告白した。