第10話 黒い蕾
今日から学校、昨日は神様から渡されたリングのせいで女子の体になってしまったり、妹の玩具にされたり散々だった。
でも神様が力を手っ取り早く扱えるようにって渡してきたってだけあって、口では表せないんだけど女子の体の時の方が魔力を感じる事が出来た。
まあ、それでも自分から女子になりたいなんて思う事は早々無いだろう。
「蒼木君、どうしたの考え事なんてらしくもない」
「俺にだって考え事の一つぐらいあるよ」
黒龍の一件で崩壊しそうになった校舎が立て直され、今日は新しい校舎になってからの初めての授業だ。クラスには新しい校舎になってウキウキしている奴もいれば、落ち着かずにソワソワしている奴もいた。俺は教室の場所が移動したぐらいにしか思わなかった。
チャイムが鳴ると同時に先生が入ってきた。
「皆、久しぶりの授業だな。いきなりだが今日は転校生が来ている。」
教室に入ってきたのは黒髪の女の子だった。
「初めまして、柊季美花と言います。」
「席は、そうだな。才菜の隣の席が空いているからそこに座ってくれ、」
「分かりました」
「初めまして、小埜才菜って言いますこれからよろしくね」
「こちらこそ、よろしくね」
見る感じ大人しそうな子だ、俺はオラオラ系女子は苦手なので大人しい子で安心した。
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~柊季美花の視点~
私は昔小さな村に住んでいた。そして仲が良い子が3人いた。
あーちゃん、ちーちゃん、ふーくんの三人。
皆と遊ぶ時間はとても楽しい時間だった、どんなに嫌なことがあっても、どんなに辛い事があっても、その時間が私を癒してくれた。しかし、そんな楽しい時間は永遠には続かなかった。
小学5年生に上がる時、あーちゃんが村から引っ越していった。残された私たちはその子がいつか帰ってきてくれると信じて止まなかった。
今度は中学に上がる時、ちーちゃんがこの村から引っ越した。残された私とふーくんはいつ二人が帰ってきてもいいように、この村を、私達が遊んでいた場所を二人で守ろうと誓った。
でも結局中学を卒業する時にふーくんもどこかへ引っ越していった、私に告げる事無く。村に一人取り残された私はせっかく受かった高校に行かず家に引きこもるようになった、そんな時だった。
自分を悪魔という小さい変な奴が私の前に現れた。
「お前は憎くないのか?」
「他の場所が魅力的だったから、お前の大事だった友達はこの村を離れた。違うか?」
「・・・多分、そうなんだと思う。でもだからって、私一人でこの村に帰ってくる程の魅力を作り出すなんて無理よ!」
「確かにこの村に魅力を作り出すのは無理だろうな、でも他の場所の魅力を潰す事は出来るだろう?」
「魅力を・・・潰す?」
「そうだ、この村以外の場所の魅力を全部潰せばお前の友達は魅力のあるこの村に戻ってきてくれる。潰す力は俺が貸す、俺と契約して友達をこの村に呼び戻そう!」
馬鹿馬鹿しいとは思った、だからといって他にやりたい事は無かったので契約してみる事にした。
「いいわよ、その話乗ってあげる」
「俺はシード、よろしくな」
「私は季美花、頼んだわよシード」
こうして私は小さい変な悪魔「シード」との契約を交わした。
手始めにこの高校を潰すことになったのだけれど。
「こんな感じでいいのかしら?」
「上出来だ、大体この蕾が咲くのは次の授業の終わり辺りだな」
今、私はその高校の女子トイレの個室に魔法陣を書いている。頭がおかしいわけではない、この魔法陣は私がシードと契約して使えるようになった魔法【ナイトメア・フラワー】。
この蕾が開花すると文明が一つ滅びる程の災害が起こるらしい、私もはじめて使うので威力はあまり分からない。
「そろそろ授業が始まる時間ね、速く教室戻らないと」
「さて、どんなことになるのやら」
私達は女子トイレを後にした。
ある日、世界に魔法が生まれました。~俺が描くのは平和な世界~ ゆうやけ @yu-yake44
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