第9話

目が覚めると自分の部屋に戻ってきていた。

外は暗く、時計の針は夜の2時を指していた。

枕の横には夢でみた変なデザインのリングとその下に1枚の紙が置かれていた。


「チェンジリング 使い方、リングを腕にはめて赤い部分を180度回転させれば転換できる!!」


今回の説明書?大雑把すぎて何がどうチェンジするのか分からない、でも手っ取り早く力を扱えるようになるにはコレに慣れろとか言ってたし、試しに使ってみるか。


俺は腕にリングをはめ、180度回転させてみた。するとリングに付いていた穴から俺を包むように煙が出てきた。

息苦しさは感じないが、何だか・・、眠くなってきた・・・・。


=======


「ふぁーー、」


あー良く寝た、さっきの煙は一体何だったのだろう。

外もすっかり明るくなってる、てか今何時だ?

時間を確認する為スマホをてにとったのだが、いつもよりなんかデカく感じる。


「とりあえず、今何時だろ・・・、」


スマホの画面を目の前に持ってきた時に、俺はやっと今の自分がどうなっているか知る事になった。


「・・・・・ふぇ?」


スマホの画面には眠そうな、幼い女の子が写っていた。


「誰?!・・・・俺?!」


周りを見渡しても誰もいない、かと言って俺のスマホにはそんな女の子が写ってる写真も無ければ顔を編集するようなアプリも入っていない。

つまり今の状況から考えるに、さっき写った女の子は俺ということになる。

それならば、そう思って片手をとある場所に突っ込んであるかないか確認してみると。


「・・・・・ない。」


そこにあるはずの、俺の男の証がきれいさっぱり無くなっていた・・。


「お兄ちゃ・・。・・・・貴方、誰?」


「・・アッ、」


扉を開けて入ってきたのは妹の真純だった。

まずい、どうしよう絶対何か誤解されてる、とりあえずその誤解を解かなければ。


「真純、聞いてくれこんな姿ではあるがお前の兄貴だよ」


「じゃあ、お兄ちゃんしか知らない事言ってみてよ」


「お前が俺のアカウントを勝手に使ってBL同人誌頼んだせいで俺の名前宛にBL同人誌届いた事とか、色々覚えてるけど言う必要ある?」


「・・・・・本当にお兄ちゃんなの?」


「さっきからそう言ってるだろ」


「・・・ふ、ふふww」


「何笑ってんだよ」


「いやだって昔から女の子ぽいところはあったけれど、まさか体まで女の子になっちゃうとはねw」


「うるせえ!」


コイツ、人が困ってるってのに面白がってやがる。


「とりあえず、何か着れる服探してくるからそこで待ってて!」


「俺の服じゃダメなのか?」


「男に戻った時、幼い女の子を襲った屑人間って呼ばれても良いならそのままでいいんじゃない?」


「じゃあ服頼んだぞ、妹よ」


「了解、任せとけ」


そういって、真純は服を取りに行った。まあ最初にバレたのが真純で良かった、母さんか父さんだったら間違いなく警察呼ばれただろうからな。

なんだかんだ言って結構頼れるんだよなアイツ、兄妹にしては仲が良い方だと思う。


「お兄ちゃん、持ってきたよ!」


そう言ったアイツの手に持っていたのはフリフリした可愛らしい服だった。


「もっと普通の服なかったの?」


「女の子の服は可愛い服が普通の服だから」


「お前、昔そんな服着てたか?」


「いいから早くコレに着替えて」


「流石にそんなフリフリした服は着ないぞ」


「それなら・・・無理やり着させるだけだー!」


「ひゃー!」


真純が俺の背中に周り、服を脱がしてきた。その後に俺の抵抗も虚しくフリフリした服を着させてきやがった。


「コレでバッチリだね・・・写真とっとこ」


「ダーメー!」



=======



あの後俺は妹に遊ばれて、心も体もヘトヘトになっていた。

真純はいつの間にか部屋からいなくなっていた。


俺がこんな体になった原因は十中八九このリングが原因だろうな、だったらまたこのリングを180度回転させれば男の体に戻れるのでは?

昨日と同じように回してみた、するとリングから何かアナウンスのようなモノが聞こえた。


『チェンジリングの性転換機能は一日に一回のみとなっております、また一日経ってからご利用ください』


えっ・・、つまり今日のところはこの体のまま過ごせって事?


「そ、そんなーー!」


いや、よく考えろよ俺、俺には不可能を可能にする力あるじゃないか。

ノートを開き、いつものようにキャラを描き始めた。


『キャラ説明【エン・ジーニアス】

機械関係なら発明や改造何でも出来る凄い奴、でもAIだから普段はPCの中で活動している。』


「出てきてくれ、エン・ジーニアス!」


ノートから光のようなモノが出てきて、俺のPCに入って行っていった。

今回のキャラは実体を持たないAIだからすぐ近くにあった俺のPCに入ったのだと思う。

電源を押していないのにPCが勝手に起動し始め、モニターには俺がさっき描いた顔が映し出された。


『何か御用でしょうか?マスター』


「このリングを俺の思うような感じに改造して欲しいんだ」


『それではそのリングを解析する必要がありますので、スキャナーを用意して頂きたいのですが』


スキャナーって言われても一般家庭にそんなのあるわけ・・・、いやチャ・チャットの奴なら


「出てきてくれ!チャ・チャット」


「蒼木様、何かごよ・・・、蒼木様?」


まあ、以前とはまるで別人のレベルで変わってしまってるのだからコレは普通の反応だろう。


「こんな姿になってるけど、お前達を生み出した蒼木奈太郎本人だよ。そんなことよりスキャナーが必要なんだけど、お前の3Dプリンターで作って貰えんか?」


「スキャンぐらい私できますよ」


「それならそこのPCにいるエン・ジーニアスの言うことを聞いてくれ」


「分かりました」


「エン・ジーニアス、早速始めてくれ」


『それではチャ・チャットさん、すこし体を貸させて頂きます』


今度は俺のPCからチャ・チャットに目掛けて光が放たれ、チャ・チャットはその光に当たった後、顔であるモニターの画面が真っ暗になった。

しばらくするとさっき俺のPCに映っていた顔と同じ顔がチャ・チャットのモニターに映し出された。


「それではマスター、そのリングを解析しますので後ろの3Dプリンターにそのリングをセットしてください」


「・・・こんな感じで大丈夫?」


「大丈夫です、スキャンを開始・・・・・・スキャン完了。それではこのリングにどのような変更をしますか?」


「1日1回しか使えない性転換機能を、いつでも使えるようにするのと使用時に着ている服も転換した後の性別に適した服に変える機能を付けて欲しい」


「分かりました、システムアップデート開始・・・・・・・アップデート完了。後ろの3Dプリンターからリングを取り出して下さい。」


チャ・チャットの後ろについている3Dプリンターを開くと、オシャレなデザインになったリングが入っていた。


「か、かっけー!」


「デザインは最近のモノに変えてみました。お気に召しましたか?」


「勿論!」


「それは良かった、じゃあ私はこれで失礼します」


そう言って、チャチャットの体のままノートに戻っていった。

今考えたら神様から渡された物を勝手に改造しちゃったけど、大丈夫だよね?

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