第19話 熱発
熱い。
熱い、熱い、熱い――全身を圧しつつむ焼けるような熱。息を吸うたびに喉がしめつけられて新しい空気はすぐに吐いてしまう、くりかえし。のうちに意識が遠くなる。けれどひとつ退いたそこで保たれつづけて一部始終捉えている、苦しみ。
――がっこうは?
ちくんとうずくものが言った。覚えてない、反射的に答える言葉が嵐の中でまわる。いたい。
痛い? 肩が痛い。
がたがたがたがた震えるのを抱えてうずくまってた部屋の片隅の引きずり出した服の山。おしつけるように隠れてなくなるように小さくかたまってちいさくちいさく。ちいさくなってきえてしまいたいにくいこのからだぜんぶなくなればいい、熱、熱、どこへ行ってしまったろう私を生かしていた明かり心臓の鼓動、あのひとのことばあのひとのこえ私を信じていてくれた信頼、私の。
あぁ、ああ、あー。あえぐように浅い呼吸たちのぼる感情のうねり振り払えもせずに。かたくかたく力を込める肩に抱えた肩に。生きて。生きている。生きていられる。生きていて。
生きていて。
胸のうちをまわる言葉の変化とともに溢れ出した昨日は嵐の内に収束していく。部屋の、スミ。
静けさが聞こえる。嵐は手を中空に伸ばした。手に届く現実の実在の世界。空気を握るように指をまるめる。震える指、痩せた――みじめさ、残る。
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