第11話 解体
拾い上げる先から取りこぼしていく。腕を拾えば手首が落ちる。首を拾おうと髪の毛をひけば抜け落ちる。いつまで経っても嵐はぜんぶ拾いきることが出来なかった。そのうち拾ったと思ったものも腐り落ちて砂になる。取りこぼしていく。どんどん、どんどん。腕の中から全て抜け落ちる前に、嵐は必死に拾い上げる。全て失ったら、ゼロになったら。
ゼロは、死だ。
血といっしょにすべてが流れ出し無力になっていく。
死にかかったうつろな人形のような身体。
小さく小さく硬く閉じこもっていく心。
無になっていく。
何も無く。
ゼロ。
それは、生きていないのよりも悪い状態だと、嵐は思った。
死んだ心と体を引きずってながらえていく日々に嵐は何も見つけられなかった。生を求め、焦り、苦しみの果てに外へすがろうとするたびに、深く傷ついた。希望は外側にはなかった。
嵐を守るものは、嵐でしかなかった。
人が自分ではありえない事を、自分が一つの個体である事を、嵐は痛烈に知った。
バラバラ。
バラバラ。
バラバラ。
みんな、バラバラ。
バラバラの私を繋いでいたものはいったい何だったのだろう。
バラバラの人を繋いでいるものはいったい、何なのだろう。
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