第6話 怪物扱い
ハローワークへ提出する診断書を書いてもらうため、新たに地元の精神科の個人病院に行くことした。
最寄り駅では、なんとなく人目を感じ、隣の駅前のメンタルクリニックに行くことに。
結構混み合っているようでも、皆、5分ほどで診察室から出てくる。薬の処方箋が目的に感じる。
私が通院していた病院の医師は、1時間以上かけて、じっくりと話を聞いてくれていたので、医師によって違うものなのかと考える。
それでも、いままでの症状や病名を書いた問診票を、先ほど待合室で書いていたので、話は早く済みそうだと、勝手に解釈していた。
20分ほどして、名前を呼ばれて診察室に入る。
何故か、医師が遠ざかる気配を感じる。
開口一番、医師は、
「あなたのような人は、こんな町医者にかかってはダメなんですよ!直ぐに、保健所に連絡して、専門の病院を紹介してもらい、入院しなさい!
受診料もいらないから、早く出て行ってください!」
私は、何のことやら、訳がわからず、強張る笑顔で詰め寄る。
「先生?私、もうなんともないんですよ?診断書をお願いしたくて…」
しかし医師からは
「この病気は、再発するんですよ!
保健所に行って!」
と、保健所の電話番号をメモした紙を渡されて、追い立てられるように出されてしまう。
今にも塩を撒かれそうな勢いだった。
私の病気って、何?
初めて、私は大変な病気なのではないかと、渡されたメモと自身の手を見つめて、立ちすくんでしまう。
仕方なく、メモにあった保健所に電話し、成り行きを説明し、ワラをもすがる思いで必死に病院を紹介してもらえた。
それでも結局、紹介された大きな病院にも却下され、途方に暮れてしまう結果に。
いちから病院探し、やっと一軒の病院で診察してもらえた。
数回の受診の後に、独自の診断を下すとのこと。
診断は、形式上?躁鬱病とのこと。
しかし、まったくうつ症状はなく、耳鳴りがする為に寝つきが悪いことから、軽い睡眠導入剤を処方されただけだった。それでも私としては、落ち着く先が見つかり安心したのだった。
3回ほど受診していたものの、この医師は、私の頭の中で暴れ回るどぶねずみたちの騒がしさからの倒れ込みや、記憶が飛び、時間がワープすることに対しては、まるで聞いていないかのように話をスルーする作戦のようだった。
実感として、入院を要するような大病院では、遺伝子レベルの疾患や脳に傷があるような重い精神疾患の患者を受け入れて治療をし、町医者は、心の疲れや、うつ病等の病気を薬の処方で安定させることで治療にあたっているように感じてしまった。
精神科は、未知数の領域なのか?薬で精神をフリーズさせているだけではないのだろうか?不安を感じた。
それでも、私的には、診断書を手に入れることが出来たのと、解離性障害よりは、躁鬱病との診断の方が気分が軽くなり、あとは体調を改善していこうと前向きな思いがあった。
そう!私は、なんともない人。なんともない人。怪物なんかじゃない。
大丈夫。大丈夫。
でも、朝起きると、リビングにお茶っぱが撒き散らかされている。誰の仕業だろう?
ゴミ箱に、干しておいた台ふきんを捨てちゃうのは、誰なんだろう。
本当はまだ、怪物がいるのかな。。
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