第4話  時間が解決してくれる?

2年ぶりの娘との同居生活。


5畳の狭いアパートで、半畳のスペースを確保する。

居候の身、規則正しく早寝早起き、炊事洗濯掃除とテキパキこなす。


お年頃の娘のプライバシーも考慮してあげたいが、少しの間だけ、ご迷惑をお掛けしますと。

長居せずとも、すぐに改善すると呑気に構えていた。


毎日、脳のトレーニングに励む。

脳トレのドリルに挑戦するが、数字の問題にあぶら汗がにじむ。

1から10までを順番に足していくが、3,4くらいで、数が頭から消えてしまう。

これでは、再就職は遠い道のりだと落胆する。

読書に挑戦する。ストーリーを忘れる事もなく、これは結構大丈夫そうだ。


アパートのそばを散歩する。30分が限界みたいだ。

ましてや、電車に乗ることは、何処で倒れるか分からない私には自殺行為に等しい状態だった。

相変わらず、どぶねずみどもは、私の頭の中に居座り続けていた。



そして、何よりも問題は、時間が途切れてしまうことに、不安を感じる。

一日中腕時計をし、10分おきぐらいに時間を確認する。

少しでも油断すると、お昼のはずが夕暮れになっている。時計を見ては、落胆する。

でも、実際のところ、この時間がワープする感覚は、昔からよくあったことにも感じられる。意識はしていなかったものの、とにかく、いつも時間に追いたてられてばかりだった。



2ヶ月の間、娘との久しぶりの楽しい同居生活が終了。

娘からは、私が変になってしまうことはなかったとの結論だった。


内心、自分としての意識がない間に、娘に危害を加えたりしていなかったことに安堵する。


体調も脳トレで、ボケ防止の効果はあったと思う。

しかし、どぶねずみどもが暴れ回ることに変わりはなく、私を自立させては、くれなかった。




少し春めいてきた日、住民票の異動届を持ち、長男との同居生活を開始するため、電車に乗った。


幾度となく、どぶねずみどもは暴れ回る。その度に、電車を途中下車して、ホームのベンチで休む。あぶら汗と動悸。

人知れずに。

他人様には、ご迷惑をおかけしないように。救急車騒ぎを起こさないように。


2時間半の旅は、4時間を上回るが、何とか無事に到着する。


長男の前では、何事もなかったかのように振る舞う。余計な心配は無用だと、親心が勝る。


息子とは、8年ぶりの同居生活になる。


息子からは、私が、再就職して自活出来るようになるまでとの約束。

安月給の若者の家に上がり込む母親なんて、情けない限りである。

もちろん、このまま隠居生活をするわけにもいかない。まだ仕送りをしてあげないとならない子供達のためにも、頑張ろうと思う。


早速、この土地の住民となり、国保の手続きを完了させ、ハローワークへも、手続きに行くことを目下のやるべきリストに書き込む。


病気になんか、負けていられない!

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