答え合わせ。

 アオイ・モロゾフ

 かつてキュレフ・イーロンと共に天才と称された科学魔術の権威であったがお互いに道を逸れ、片方はルールを度外視し科学の道を追放された。もう片方は肩書きを高めると思いきや講師として日夜魔術を教える道へ進む。


「貴方の行動理由は実に単純、復讐ですよね。それも世界への、人やモノを含めた全てを挿げ替え変革させる事で自らの理想郷を作る。素晴らしい」


「..誰しもが思うことだ、己の思い通りになる世界を作る。」


「ええ、ですが正直僕には壮大過ぎる出来事で参ってしまいます。巻き込まれるのも御免ですしね」


「殻に閉じこもると良い事は無いぞ」


理想郷というのは、貴方の殻の中で踊れという事だと思いますが。」


野望とはエゴの設計図だと認識できる形どったものが目に見え、像として写ったときエゴは完成する。


「青年よ、お前は今キュレフに聞いたと言ったが何故わかった?」


「...どういう意味ですか」


「この男は、真相は伝えても私の存在を話すような野暮な真似はしない。どうやって私に辿り着いた?」


「..いや、話してくれましたよ。

教えてくれたんです、研究室の事を」


「あれはキュレフの部屋だろう。

パスワードも最愛の女の数字だった筈だ、違うか?」


「そうでしたよ。ですが、それは貴方にとっての最愛でしたけどね」


「なんだと?」


おかしいと思っていた。研究室にあったのは武器や道具、直接的な製品としての情報のみが保存されていて、分析された明確な情報や経過的なデータは何一つ無かった。アイテムを拾わせるだけのような部屋だったからだ。


「貴方はキュレフさんの恋焦がれていたエクゾ・ミルさんの父ですよね?」


「……。」


「図星ですか?

本名はエクゾ・ミル・モロゾフ、パソコンのパスワードは娘さんの生年月日覚えておきたい数字だったのですよ」


「……憶測だ、馬鹿馬鹿しい。」


「アオイ、お前は止めてほしかったのだ、肥大化する己の理想郷を誰かに縮めて欲しかったのだ。」

歯止めの効かない復讐心が何処に向いて進んでいるかわからず、いつしか静止してくれはしまいかと願うようになっていた。だが止まる事は無い。


「私は、負けたのか?」


「アオイさん、貴方が犯人ですよね」


「そうか..私は負けたのか。」

突きつけられた真実は予測よりも分析よりも重い。データは所詮データだ。


「アオイ、共に帰ろう。

私達は間違えた同士だ、天才では無い敗北を得た非凡な役立たずだ。」


「...青年、私は間違っていたのか?」


「わかりませんが、その手の話は一切興味がありませんので、話であれば署にでも向かい無能な警官にでも垂れ流して下さい。」


「なら、魔法は悪か?」


「それも知りません。..ですが、魔力を持っている方の中で正しい使い方をしていると思われる方は殆ど見られませんでした。強いていうなら、講師の方くらいのものでしょうか。」


「そうか..成る程な。」


壮大な暴動の最後は、古ぼけた建物の廃研究所にて終幕した。キュレフの心当たりだと後をついていくといとも簡単に彼がいたのだ。拍子抜けとはこの事だ。キュレフもまた、こうなる事がわかっていたのかもしれない。


「出来事の根源は退屈なものばかりです。驚く程に簡素で適当、思い付きで感情が付いてきて、然程検討もせずに物事が完了する。


「偶然やなんとなくを、特別な必然にするのはナンセンスです。運命は杞憂なもので幻に近い、殆どは偶然です」


形あれば消えるもの。

初めからいつか消えるとわかっていれば固執せず、悲しむ事も決して無い。

「貴方のせいで謎が多く消えましたよ僕の大好きな、小さくこじんまりとした手頃な沢山の人のエゴが。」


世界の波は暫くの間揺れ続けるだろう

次に事件が起きるのはいつになるやら


「クエストを達成しました。」

長い冒険が、漸く終わる。

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