5話 娯楽リゾート

 〝マジックアイランド〟そう呼ばれているこの島では、余暇を謳歌する人々がビーチやホテル、デパートなどで極上を満喫している


「うえーい南の島〜!!」


「なんでついて来たんですか貴方は」


「当たり前でしょ?

良かったわぁ〜。学校があんな事になったからさぁ、急遽休みになって」

 一人の余暇を満喫しようとコソコソと押し進めていたバリーだが、まんまの内にバイラルに筒抜けとなっていた。


「あまりはしゃがないで頂けますか?

大きな声には慣れていないもので。」


「普通はしゃぐでしょ!

南の島よ、シャウトの嵐よ!」


「はぁ..。」

誰かと共に訪れたくなかったのは、明らかにリゾート感が異なり隔たりを生む事を知っていたからだ。


「でも確かに!

バリーちゃんがこんなところに来ると何か事件が起きそうね。」


「起きますよ」「え?」


「初めからそれが目的です。

事件が起きそうな匂いのする場所を探り訪れました。人を殺めるような、そのような悲惨な事件でなければいいのですが、難しいところです。」

バリーの趣味は謎解きそのもの、探偵も趣味でやっている事だ。


「何ソレ..ていうか何この門?」


「この島は完全な私有地ですからね、検問を介さないといけません。」

元々は唯の島だったがとある財閥が買い占めた事で開拓され、一つのリゾート地となった。いってみれば金持ちの別荘というわけだ。


「お待たせ致しました。

只今門をお開けいたしますので。」


「金持ちの使い!」「失礼ですよ?」

黒い正装を見に纏った老いた男性が、人が訪れる度に検問を繰り返す。


「探偵のバリー・キャスリンさん

それと...お連れの方は?」


「魔術講師のバイラル・シューです。

変わった方ですが悪人では無いです」


「変わってもいません!」


「そうでしたか、それでは中へ。」


変わってはいない。

ただ身長を超える程の大きな杖を常備し炎や雷を自在に放つ事が出来るだけ、何処にでもいる魔法使いだ。


「何よさっきの人、気難しそうね」


「そうですね。身なりを整えるならまず髭を剃ればいいのに」


「あなたも結構言うわね..。」

彩りを添える前に手を洗え、風呂入る前に服を着ろ。1の前に0がある。しかしまぁそれを教え込まれるのは無駄に苛立つものである。


「今からホテルにチェックインしますが、部屋は同じで良いですね?」


「はっ、え⁉︎

まぁ別にいいけど..うん。」


「何考えてるんですか?」


「別に!

ただ寝るだけ..だもんね。」「はい」

チェックインといってもここは私有地、ロビーの受付に向かう訳では無い。


「ようこそおいで下さいました」


「え、ここ玄関じゃん。」


「そうですよ、ここはホテル兼別荘ですからね。家の屋内に客室を設けているんです、僕も調べただけなので余り詳しくありませんが。」


「最後の付け加える必要ある?」


「後で続けて何かを聞かれても分かりませんからね、言っておきました。」


ロックズー財閥

島を買いリゾート地に作り上げた富豪の一族でありホテルの責任者。事前に建てた別荘の半分を客席に改築し、間に壁を設け二層に分けて家との区分をしている。


「右の扉が別荘、左の扉がホテル。

玄関まで真っ二つとは驚きね」


「間違えてお客様が別荘に入ってくるかも知れませんね。」


「……」「..なんですか?」


「あなたもそういう冗談言うのね」


「....冗談ではありませんよ。」「え?」


「行きましょう」


バリーは時に、凄く寂しそうな顔をする。冷めた性分か捜査の疲労か心を何処かに置いてきたような抜け殻のような状態で肩の力を抜いている。


「..なんですか?」


「いや、なんか気怠そうだなって。」


「そんな事ありませんよ。僕は今快調ですよ。そうですね、貴方の喜ぶ言葉で言えば...

『ガンガン』ですかね。」


「うん、少し違うかな。」

家に帰るまでが遠足などと言うが、向かいのバスに乗っている瞬間が一番楽しかったりするものだ。旅行も同じホテルの部屋に入るまでが大概のピークである。あくまでも楽しみが「旅行」であった場合の話にはなるが。


「やっぱり良いものね、バカンス!」


「まだ部屋の中ですよ。

僕はそれでも構いませんが」


「私は嫌よ!

海にも行きたいし美味しいご飯も食べたい。そもそも相部屋だしここ」


「文句言わないで下さい。勝手についてきたのは貴方なんですから」


「普通ついて行くでしょ、相手はリゾート地よリゾート地!

あなたこそ事件以外に興味ないの?」


「興味ありません。」


「変わってるわね」


「はい、ですから一人で楽しもうと試みていたのですが自らのエゴでついていきたいという方がいまして...」


「あーもうごめんなさい!」


「許しません。そもそも初めから..」


「もういいです!」

価値観に沿って計画をした余暇を邪魔されては沸沸と煮えるものもあるだろう。しかしそれは、急激に好奇心を煽る出来事の前触れとなっていく。


「大変です!」


「ええ知ってます、ですからこうして言葉巧みに彼女を諭して..」


「その話じゃないわよ!」「ほう。」


「御主人が、殺害されました...」

鼻が匂いに行き着いた。

血生臭く腐り果てた嫌な匂いに。


「嬉しそうね」


「冗談を言わないで下さい。

謎は有り難いですが、人の死を待望している訳ではありませんよ。」


「なら知らないフリするの?」


「いえ、案内して下さい。今すぐに」


現場は客室と隔たれた別室の一室。

ロックズー家の主でありリゾート島の

マジックアイランド最大管理者。


「ペイルム・ロックズー..。お金持ちの名前って感じ」


「わかってるんですか?」「全然。」


「昼食の準備をと料理のお好みをお聞きしようとした所扉が開かなくて、中でクラリンスが大きな声で吠えていたので急いで鍵を開けたところ...。」


「クラリンスとは?」


「犬です、御主人の飼われていた。」


「窓も閉め切っている

扉も開かない密室の中で胸を一突き目撃者は飼い犬のみ、ですか。」


「よく血塗れの死体の前で平然と話していられるわね」


「外傷を与えた凶器もありませんね」


「狂気なら目の前にいるけどね。」

証拠の一切無い密室殺人、大きな島で起きたのは極端に簡素な悲劇。謎は形そのままに現れてはくれないようだ。


「現在の時刻は10時25分」


「夕方には、警察の方がいらっしゃいます。遅過ぎるかもしれませんが..」


「確かにその頃には解決してるかもしれませんね、近くに病院はありますか遺体を一旦そこに運びます。」


「直ぐに連絡を入れます」


「それではボチボチ始めますか..バイラルさんは聞き込みを。」


「え、私も手伝うの!?」


「客室に犯人がいた場合、貴方も殺されかねませんよ?」


「サラリとこわい事言わないでよ..」

 犯人がホテル内に点在しているなら逃走を図る可能性がありどういう行動に奔るかわからない。冗談で言っていないところが現実味を帯びている。


「病院と連絡がつきました!」


「そうですか、念の為写真を撮って警官でもわかるように外傷の跡や状態を明確にしておいて下さい。」


「……」「なんですか?」


「あなたって結構警察嫌いなの?」


「舐めてますよ

実際余り役に立ちませんし。」

先に現場に入られては自由に行動は取れないし、多人数で行動する為効率が悪い。

探偵としては、都合の良い情報屋くらいに思っている。


「貴方の方が頼りになりますよ。」


「え..?

ちょっ、それどういう事...。」


「遺体を運びしだいクエストを開始します。聞き込みをしてくれますね?」


「..はい!頼りにしててください!」

リゾート地別荘富豪密室殺人

証拠も凶器も無い部屋で何が見える?

良いアイテムを拾えればいいが。

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