第44話 上田が来る

おいおい寺田……簡単に殺しすぎだろ……

ってお前も死ぬのかよ……


もともと変わっている部分の多い奴だったけど最後はなんだかかわいそうだと思ってしまった。


多分寺田はすごく不器用で自分の気持ちが素直に相手に伝えられなかったんだ……

寺田はあれで幸せだったのか……?


中村さんは衝撃的な寺田達の最後を見て気分を悪くして座り込んでいる。


最初寺田は中村さんを探してたんだ、何か違えたらあの最後を迎えるのは中村さんだった可能性だってあるのかもしれない……

そう思ったら気分も悪くなるよな……




「これで外に残ってるのは上田さんとマネージャーだけですね」


河合の言葉にハッとなった。


寺田達の自爆でそんなことになってしまったのか……

そんなにチームメイト達が死んでしまったのか……



マネージャーのことを警戒しないといけないのはもちろんだけど上田にも要注意だ。


土壇場で竹内と副島を殺して新たなスキルを手に入れている、そこで強いスキルを手に入れているとしたら俺達はあっと言う間に全滅させられてしまうかもしれない。



マネージャーに接触したことでマネージャー視点の映像も見れるようになった。


ジ・エンドに無理やり引っ張られながら、あちこちを移動してるみたいだ、今のところ上田を狙うような素振りは見せてない。

対照的に上田は若干焦っているように見える、今は狙っていないとしても、外に出てるのは自分ひとりと上田も察しているだろうからいつ標的にされるかわからない、先の見えない恐怖に焦りがあるのだろう。


とりあえず今言えることはもう外に出ることはできないってことだ……

デバッグルーム内に食料はもうない、1日や2日くらい食べなくても大丈夫だろうけど、ずっと続くとなるとキツくなってくるよな、でもそれはマネージャーや上田も同じか。


ただ飲食店の食料は若井が食い尽くしてしまったが、コンビニやスーパーに行けば食べられるものは多少残ってる、そこで食いつないでいけば外の2人はすぐに餓死することはないはずら、そうするとこのまま持続してしまうのはこの中の俺達の方が分が悪い。


どうする……?


俺は死にたくないぞ……



河合がさっきから上田の動きを注意深く眺めている。


「上田さんもしかしてデバッグルームの入口を探しているんじゃ?」


「言われてみれば……」


そういえば今上田がいるのはデバッグルームのすぐ近くだ。

マネージャーに襲われそうになって急いで逃げ込んでからずっと外に出れていないから、それを頼りに探しに来たのか。


上田はゆっくりと周囲を見渡し、違和感のある場所はないか探してる。


デバッグルームの出入口は普段はビー玉くらいのサイズまで収縮している、丹澤が異常なだけで、開い空間のなかにポコッとできた小さい穴なんてそうそう気付けるものじゃないはずだ。



「箕輪さん、外に出ずに上田さんと会話とかできたりしないですか?」


河合は上田と話をする気なのか。

なるほどな、ここで上田に見つかるのを待つくらいなら攻めていく方がいいか。


入口を少し開けば外に声が届くかもしれない。


河合に「うん」とうなづくと、河合の顔が引き締まった。



デバッグルームの入口をテニスボールくらいの大きさまで開いた。


その開いた先に、向け話すように河合に合図を出す。



「上田さん、聞こえますか?」



映像越しにみる上田は声に気づいたようで周りを見渡す。



「誰だ? 箕輪ちゃんの声ではないから……河合くんか?」


「そうです、正面で話すのは怖いんでこんな形ですけど話をしませんか?」


上田は声だけ聞こえる河合のことを探すが、見つからないデバッグルームの存在もバレてないみたいだ。


「怖いことなんてないだろ? 出てきてくれよ」


声だけ聞けばいつも知る上田の少しおどけた声だ。

この声だけ聞いていると金子や竹内、副島を殺してるなんて思えなくなってくる……


「色々なスキルを手に入れてますよね? 何を持っているかわからないですし、上田さんの動きは俺達を探してるように見えます、話をしたいって言っといて申し訳ないんですけど、この形のまま話をさせてください」


「そっか……じゃあいいよ、俺に何の用?」


少しも悩むそぶりも見せず平然と河合の提案を受け入れた。

その余裕さが不気味だ……


「逆です、上田さんはなぜ俺達を探しているんですか?」


「ひとりになったからだよ、みんなマネージャーにやられてしまった……不安だから仲間がほしくてさ」


「その仲間を手にかけた人を信用しろって言うんですか?」


「やっぱりか……今箕輪ちゃんのスキルで作った空間の中にいるんだろ? そこでは外の様子が見えるんだろうね」


見透かされた……丹澤がいる時には映像がみえることは言ってない、今の河合の話と前の丹澤が来たときの話をもとに察したんだ……


「中村さんが急激に強くなったのも箕輪ちゃんのスキルなの?」


なんでそれまで知ってるんだ?


「上田さん耳をずっとすましてましたよね? ずいぶん色々聞こえてるんですね」


耳がいい? 中村さんが強くなったのは聞こえてきた音で判断したのか……

河合もよくそんなところ見てたな。


「河合くんよく見てるな……でも悪いな俺は箕輪ちゃんに質問してるんだ、箕輪ちゃん! これは全部箕輪ちゃんのスキルの力なのかい?」


えっ? 俺??

俺に話を振ってくるのかよ……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る